津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

クーロンズ・ボール・パレード  2021年

クーロンズ・ボール・パレード 全3巻 原作 鎌田幹康 作画 福井あしび 2021年

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フィジカルは弱いが分析力にたける捕手・小豆田玉緒は名門白鳳学園のセレクションをうけ、急増バッテリーながら配球センスと頭脳で相手チームを押さえ込む。しかし、セレクションに通ったのはフィジカルの強い捕手だった。

 

2年間このために備えた。結果は出した。

しかし、夢はかなわなかった。

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気落ちする小豆田だったが、バッテリーを組んだ龍堂太央に一緒に野球をしようと誘われ、そこに居合わせたスカウトの黒滝かりんにより、かつての名門黒龍山高校復活のメンバーとしてスカウトされる。訳ありの逸材選手を集めて甲子園を目指そうとする小豆田たち。名門黒龍山は復活するのか?

 

龍堂は白鳳を蹴って小豆田と同じチームを目指そうとする。

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龍堂の勧誘を断る小豆田。ここで即答せずにワンクッション置くことで、小豆田の性格を掘り下げる。好感のもてるバッテリー。

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スポーツ漫画がことごとく失敗する近年のジャンプにおいて、正統派野球漫画が成功するのか?スポーツ漫画ファンからは期待半分諦め半分で様子を窺われていた野球漫画。1話のセレクション失格後にメンバー集めに言及したことから、「オイオイオイ、死んだわあいつ」と思われましたが、2話で元名門校の理事長の孫娘によるスカウト話が出たため、3話でメンバー集結、紹介しながら練習試合という早いペースのチーム構築、試合という展開に期待がもたれました。

 

雑誌で読んでた当時

「オイオイオイ、死んだわあいつ」とおもわれたシーン

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ここから、かりんちゃんスカウトで、死亡フラグを回避したかにみえたのですが…。

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しかし、スカウトメンバーは0ということで、結局メンバー集めをすることになり、実家のおもちゃ屋が人手不足で野球ができない強打者・剣、性格に難ありだが実力は確かなショート・椿、地味ながら選球眼とキャプテンシーに優れるファースト・木戸をスカウトして、志願入部のレフト強打者・寅本、守備と走塁にすぐれるセカンド洞口が揃ったところで終盤に入ってしまいました。

 

何故メンバー集めをしてしまったのか…

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流石に全員集める時間はないと判断したのか、残り2人は追加入部してきたモブで補われ夏の大会が始まります。番狂わせを起こし中堅強豪校に勝利。続く2回戦でも苦戦しつつネームドのライバルを倒して、待ってろよ白鳳学園で俺たちの戦いはからこれからだエンド。

 

まあ誰もが思ったのが、1話で出たメンバー集めという死亡フラグに何故突っ込んだのか?です。前述したように、メンバーが集められており3話でナインが揃えば、即メンバーのキャラを立てながら試合ができ、スカウトによりある程度実力がある、だがしかし超一流ではないので成長の余地があり、小豆田の分析力を生かせる、ややクセのあるメンバーが揃えられたんですよね。一巻半まるまる費やしたメンバー集めをやる必要がなかったように思います。

 

そもそも、スポーツ漫画におけるメンバー集めは80ー90年代であれば、

①部活ができるかどうかのピンチの演出

(大概廃部寸前だったりする)

②メンバーの紹介

③0から作り上げていくワクワク感

④他分野の達人や名選手をコンバートすることよる面白み

あたりが目的なのですが、現在のスポーツ漫画で0から全国大会レベルに叩き上げるのは無理がありすぎますし、なんなら素人がスタメンに1人でもいる時点でかなり苦しいです。他分野の名選手のコンバートや0から作り上げるワクワク感ももう新鮮味がないですし、部活ができないと話にならないので①のピンチの演出の意味も薄いです。結局②メンバー紹介が目的になるのですが、1人づつメンバー紹介をしていくのは恐ろしくテンポが悪くなります。

 

H2くらいじっくり腰を据えて描けるならアリなのですが、ジャンプの高速環境でこの手段を取るのは半ば自殺に等しいです。メンバー集め自体が物語として超面白く描けるなら話は別ですが、大体メンバー集めもテンプレがあります。

 

メンバー集めのテンプレ

①両親が怪我・病気で働かなくてはいかず、部活をやる暇や金がない。類似で人手不足で家業の手伝いが必要など、経済的な問題のパターン。もろ剣のケース。

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②両親や家族がスポーツを嫌い、トラウマで部活をやらせてくれない。勉強重視のため部活ができない。家庭の方針の場合。

③名選手だったが怪我で復帰できない。

④誰かに怪我をさせたトラウマや贖罪で競技に復帰できない。

⑤才能はあるがやる気がない。色々な競技の万能選手だったり、成績は良かったが燃えないとかで主人公がライバルとなり競技の面白さを伝えるパターン。

⑥過去の暴力事件等でやる気をなくし腐っているケース。主人公の純真さに触れて、競技を好きだった頃を思い出すパターン多し。

⑦競技は好きだが才能がなくて諦めていたパターン。数集め的になることが多い。

 

大体この辺りが、集められるメンバーの特徴です。このテンプレ以外のメンバーを集めつつ面白く描ければメンバー集めもありですが、そこで苦労するくらいならメンバー揃えて試合しながら同時進行で紹介して行った方がいいと思います。どうしてもメンバー集めだと1人にスポットがあたるので、冗長になること、試合が出来上ないことあたりが辛いです。スポーツ漫画だからスポーツしてるところ見たいですよね。

 

ジャンプ歴代スポーツ漫画でも、overtime、フィールドの狼FW陣、大好王、コスモスストライカー、キララなどメンバー集め漫画はありますが、一気に勢揃いするコスモスストライカーや大好王形式くらいが限界で、最初からでているモブスタメンが話の進行とともに次第にネームドに昇格していくライトウイングや、試合をしつつモブスタメンがネームドと交代していく埼玉レグルス、FW陣方式の方がが圧倒的に読みやすいです。

 

というわけでメンバー集めを選んだ時点で詰みだった感じはしますが、椿のキャラ立てや剣との掛け合いの面白さ、ぽんこつかりんちゃんの可愛さなどから一定のファンは獲得しました。

 

ダブル主人公かと思えたピッチャー龍堂のキャラが少し弱かったですが、バッテリー、主に投手主軸になりがちな野球漫画を、強豪を倒すための小豆田の分析力と内野手コンビの絡みで見せたのは面白かったと思います。ドカベンばりのインフィールドフライを宣言されなかった内野フライの処理に関するプレイで守備力、判断力に、説得力を持たせたり、高い自尊心の裏返しとしての心理描写を入れたりと、椿と剣に関してはかなり完成度が高く、掘り下げ方もうまかったです。求道の強打者として類型的な剣と比べて椿は特に、あまり見ないタイプの選手で、ウザくなりそうなラインギリギリを攻めつつ、絶妙に好感の持てるタイプに仕立て上げています。白鳳のエースと剣との対決で、皆が実力差を思い知らされているシーンで、1人いつも怒られている剣を信じるコメントを出したり、その後部員が意気消沈する中全員を鼓舞しようとしたり、要所要所で好感度を上げてくれます。

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単行本書き下ろしでは、本誌で実現しなかった白鳳との対決が描かれており、短めながら抑えるところは抑えた決着を見せてくれます。

小豆田の分析力、龍堂の素質と1話からつながる夢と覚悟、寅本、洞口、木戸の見せ場、椿のお調子者っぷりと高い身体能力、プライド、剣の雪辱を綺麗にまとめています。

 

正直近年のスポーツ物らしく今風の、キャラの見せ方にマイナスがなく好感が持てる書き方をされており、細かなキャラクターを掘り下げるシチュエーションや会話をはさみ、野球物としても興趣は得られる作品だったので非常に惜しかったと思います。突き抜けた外連味やキャラで見せるタイプではなかったですが、もう少しじっくり書かせてくれれば、及第点は取れたのではないでしょうか。

 

次回作に期待です。

 

番外編 ACE-001 1984年

ACE-001 全1巻 大西志信 1984

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今回は番外編。何件か問い合わせいただいたので、ミスターライオンの大西志信先生がフレッシュジャンプに掲載したSFアクション漫画について。

 

軍事企業で生物兵器開発に携わっていた世界的生物学者の母親が作った、人間に変わって最前線で戦う強靭な力と再生能力、変態能力、闘争心と破壊欲をもつ人造生物ACE001。母は完成したACE001を連れて企業を脱走し、娘に託して姿を消した。

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託された佐久間ヒフミは、ACE001を弟として育てる。姉を思い優しく育った英一=ACE001だが、軍事企業の追手が迫り、姉と自分を守る為、戦いに身を投じることになる。

 

親族に生物兵器を預けるなよとか、後ろ盾もない24歳の中学校の教師の娘に預けても軍事企業が速攻で奪い返しにくるだろとか細かい点は気になりますが、根本的には破壊と殺戮の本能を持つ生物兵器ACE001が優しい人間に育てられることで本能をおさえられるのか、殺戮兵器に成長してしまうのかという部分が話のキモ。

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普段は優しい英一だが、戦うことが引き金で、凶暴性や破壊本能が目覚めてしまうという永井豪先生が描きそうな設定。永井作品だと確実に殺戮兵器に目覚める展開ですが、こちらは愛と優しさで抑え込みます。

 

1話で闘争本能に目覚めた姿をさらし人間の姿に戻るも今後の不安を漂わせ、

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2話では英一にできたガールフレンドがサラ金のヤクザにレイプされ、復讐のために生物兵器に体を渡し化け物になるという重い展開。体を得た寄生生物ガルダをたおすため、自分ごと殺すよう英一に願うガールフレンド。

割と衝撃的な展開なんですけど、レイプされたヒロインが結構理性的かつ、主人公はヒロインがレイプされたことを知らないまま話が進むので衝撃度が薄いです。

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ガールフレンドごとガルダを殺す部分も、ガールフレンドの願いにまったく逡巡せずに一コマで殺します。そりゃないよ。ためらいなさすぎでしょ。

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題材は良かったんですが、作者の適性が衝撃的な作風にあってなかったかな…。あまり陰惨な話にしたくなかったんでしょうが、設定の割にほのぼの展開がはいり話が甘く、殺人に対する忌避や、兵器であって人間でない自分に対する掘り下げがほとんど描かれないです。

3話では軍事企業の社長の息子にして母の助手であった男が現れ、ヒフミに突然キスをして、求婚します。それをみて、対抗心を燃やす英一、ボディガードに立候補するヒフミを好きな学生たち。このあたり、学園ラブコメの展開なんですよね…。どうにもシリアスに振り切れない。

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続く話でも、天才犬を助けるために軍事企業の工場に乗り込み、生物兵器を10体殺戮して工場をつぶしますが、企業に忠誠心を誓い敵に回ったとはいえお仲間を殺すのに葛藤とかないんか…。

 

最終的には、捕まった軍事企業の社長の息子の解放と引き換えにACE001のデータを消してもらえることとなり中米の独裁国家にのりこみ兵士たちと戦い、戦いの悲哀を感じて戦争に加味しないことを誓い、日常に戻って終わります。

 

同時期に連載していた、同じ生物兵器物であるバオー来訪者と比べても、初期の設定の割に日常色が強くなり、「自制できない破壊薬、殺戮本能」という部分がクローズアップされずに流されてしまったのが残念でした。

 

 

アイテルシー 2021年

アイテルシー 全3巻 稲岡和佐 2021年

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犯罪者を愛してしまう相生りさは、犯人を特定するためなら様々な犯罪行為をも厭わないストーカー刑事。犯人に付き纏うことで結果的に自首させることから、警察内でも特別扱いされている。

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刑事物はあらゆる刑事がやり尽くされているというジャンルで、女子高生の刑事なら「スケバン刑事」が、相撲取りの刑事なら「大相撲刑事」、武士の刑事なら「サムライ刑事」、医者刑事なら「Mr.ホワイティ」、ストーカー刑事なら「ストーカー刑事アベル」という前例がいますが、毎回違う相手をストーカーする爽やかな女刑事という設定は新しかったと思います。

 

とっかかりのアイデアは魅力的なストーカー刑事ですが、設定をうまく転がせなかった印象です。さまざまなスキルを使う才能は設定されているので、ストーカーらしく奇矯な行動や、異常な発言で、りさを魅力的でエキセントリックなキャラに仕立て上げられたら良かったんですが、思ったよりもマイルドなキャラになってしまいました。みんながみたかったのはサイコヒロインの奇行だったと思うんですよね。終盤のマー編のような頭の切れる犯罪者の裏をかいて翻弄するようなポジションを序盤から見せられればまた違ったと思うんですけど…。

 

1話のストーカーぶりは期待を持てたのでこの方向でどんどん狂気を高めてほしかったです。

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実際は変態ストーカーレベルは1話が最高潮で、後はどんどんマイルドに。変態ストーカーというよりは不思議ちゃんよりになってしまいました。

連載開始時には期待値も高かったのですが、狂気が足りない以上に、路線として変態犯罪者と変態対決するのか、相生の狂人ムーブをクローズアップするのか、バディ物にして相生に振り回される常識人にするのかで、どれかと言うと3番目という一番無難な路線に落ち着いてしまいました。

 

りさの紹介の3話までが終わって、りさがおかしくなった元凶であるおそらくラスボスが登場するんですが、シ、シミュレーテッド・リアリティ!

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一部のジャンプ読者には安心院さんでお馴染みですが、これ、強大な能力とか天才性の為に物事がうまくいきすぎるとか見えすぎるとか、他人とあまりにちがうとか、感情がないから現実感を感じないとかその辺りの異常性の発露として語られる事が多いポジションなんですけど、ラスボスの異常性の根本が語られないので、うっすい厨二病みたいでボス感がないんですよね…。しかも、この男このエピソードで消息不明となりその後出てこないまま終わります。

なんだったんだよこの序章!?

 

事件自体も、警察三人で、武器を持った犯人を無力化してるのに捕縛しないで逃げるのを優先するわ、脈がないと判断した犯人が助けに来てくれるわで、ツッコミどころ満載。

 

武器をとばし、倒したのに刑事三人が逃亡優先。なぜ確保しないのか…。

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その後うたれて死亡確認も、直後に蘇ってりさたちを助けてくれる犯人。

ずさんすぎる刑事の生存確認。

ちょっと刑事物でこのガバガバ加減はどうかな…。

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この事件で、りさの相棒役の双子の刑事・左近右近のうち、頭脳派の右近が死亡し、物語としてもターニングポイントに入ります。警察官の死亡、過去の事件の犯人の殺害を許し、犯人の逃亡という特大不祥事。これを受けて、警察内に表向き存在しないi課設立がなされ、りさも犯人逮捕に協力することになります。

 

数字を漢字に置き換えたサブタイトルだったのも序章が終わりという事で、次回からあいうえお50音に変わります。このサブタイ遊びもなんだったんでしょうね…。作者の自己満足だけで終わりました。

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更に新章からも、基本骨子であるストーカーで犯人逮捕は変わらず、りさが逮捕をするようになった以外、長い序章10話と左近の死を経て何が変わったかというと物語上の変化はほとんどありません。これ、最初からi課のメンバーで仕事する話で良かったんでは…。あえて、i課設立をエピソードにする必然性を感じません。

 

新たな章は、怪盗マー編。美しさにこだわる美術品怪盗マーを追う話です。やっと出てきたネームド犯罪者であり、読者の望んでいた変態犯罪者対ストーカー刑事の対決回。

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なんですが、りさのストーカームーブはさておきマーの変態ムーブが薄いです。構成上、常人には計り知れない動機、行動、犯罪をおかす犯罪者とさらにそれの上をいく、りさという形にしなければカタルシスが得られないんですが、逸脱の度合いが低い。これ、ラスボスと思われる鏡野日もそうだったので、作者の能力を上回る変態は創作できないという創作上の宿痾が出てしまったのかも知れません。多分目指したのはネウロだったと思うのですが、明らかに犯人のインパクトに劣ります。

 

りさのストーカームーブは、こういうの期待してたんだよ感なんですけど…。

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結局マー編の後は、当たり障りのない締めエピソード2話で終わり、鏡野日についてや、相生りさが犯罪者を愛するようになったエピソード、鏡野に操られ、りさの愛した誰かの話は語られないまま終わります。中途半端な設定開示は打ち切り漫画の華とはいえ、におわせた核心部分に一切触れないのはモヤモヤします。

 

作者自身が公言しているネウロファンなのですが、やりたい事に作風と適性があってなかったのかと思われます。りさ、犯罪者、左近の三者ともに逸脱の度合いが低く、どこか常識的で優しいキャラになってしまいました。特に左近がモブと変わらないので犯罪者を憎むとか、りさを操ろうとするとか、本気で愛してるとかなんらかのフックは必要だったかと。

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「キミを侵略せよ」から大幅に画力が上がり、導入で期待もされただけに残念な作品でした。

やりたい事がわかるだけに、ちょっと惜しかったと思う作品です。

 

ところでタイトルは、アイシテルのアナグラムでアイテルシーと、英語タイトルi tell cで、i課が犯罪者(criminal)に告げると、私が犯罪者に語るというトリプルミーニングかと思われます。連載が続けばCに意味が付与されていったのかも知れません。

 

 

 

ショーアップ・ハイスクール  1980年

ショーアップ・ハイスクール 全1巻 原作 篝一人 作画 谷村ひとし 1980年

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いきなり時代が戻りますが、これだけ1980年から現在までの3巻以内完結ジャンプ打ち切り漫画の中で長らく入手できなかった為記事が書けなかった作品です。

 

パチンコ漫画の、「お、オスイチだぁ〜」で有名な谷村先生ですが、なんとジャンプ漫画家だったんですね。

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内容は、型破りな高校生たちが、高校生活を楽しくすごす為にショーアップするという、タイトル通り「ショーアップ・ハイスクール」。ただし、80年掲載のため、倫理観がだいぶ違います。

 

1話からヴィトンのバッグを買うためにサラ金から借金して自殺未遂を起こしたクラスメイトの返済のために、無許可で文化祭で有料のプロレス興行をうち、集まったお金を寄付するという名目で借金返済に捻出します。ええええ。

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2話はだいぶマイルドかつ、賢い話で、女子校の女の子と主人公たちの高校でカップルを作るべく、女の子リストを作り販売、意中の子にお付き合いの打診をする仕組みを作るというお話。男との出会いを求めていた女子が次第に偏差値や身長などのスペックにこだわるようになり、選ぶ側になると傲慢になっていくあたりはリアリティがあります。

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3話はビアホールに行く生徒を締め付ける学校に対して、学校自体を疑似ラスベガスにして対抗するお話。タバコといい酒といい80年頃がいかにおおらかだったかがわかります。

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後半は、教育委員会から送り込まれた学校改善請負組織、教委会エンジェル(80年っぽい!)の規律とスパルタによる罠を見破り、学校を救う話や、バンドマンに襲われそうになるクラスメイトを助ける話など、比較的定番な話で尻すぼみに終わってしまいます。

 

漫画よりもテレビドラマ向けのお話で、リッキー台風やDr.スランプ、激!極虎一家が連載された年度でこれは厳しかったかなあという印象。80年初頭はジャンプでも割とドラマっぽい題材が多かったんですよね。

未婚の母と一人息子の家庭を描いたJUNとか、好きなクラスメイトの女の子が父親が売春してることを知って自殺未遂するあした天兵とか、記憶喪失の天才ボクサーとヤクザの娘とその恋人のチンピラの三角関係を描いたKIDとか。

 

流通量が少ないので目にすることはほとんどないだろうという幻の漫画です。

 

 

 

 

 

BUILD KING 2020年

BUILD KING  全3巻 島袋光年 2020年

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ゆらぎ、約ネバ、鬼滅がおわり、ぼく勉、チェーンソーが終盤、次期看板候補だったアクタージュが予想外の連載中止。久保帯人先生はBTW不定期連載。鳴り物入りの岸影渾身の次回作サム8は大こけ。薄くなった紙面を救うべく、連続二発ヒットを出した大物・島袋先生が帰ってきた!こんどのテーマは「住」!

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 かつて犯罪逮捕でジャンプに迷惑をかけたしまぶーが、犯罪逮捕でアクタージュが消えた誌面を救いにもどってくるという漫画家漫画なら大ヒット間違いなしのシチュエーション。ヒット作を出した連載作家も松井優征古味直志麻生周一藤巻忠俊、川田、空知英秋らがまだ残っているとはいえ、最も欲しいのは王道少年漫画らしい作品、それに相応しい大駒をきってきた感はありました。

 

ハンマー島に住むとんかちとレンガの義兄弟は、最もビルドマスターに近いと言われた伝説の棟梁シャベルに助けられて弟子入りをする。

 シャベルに鍛えられたとんかちとレンガは、太古から生物が絶滅する程の天変地異を耐え抜き、多くの生物を救ってきた奇跡の建造物・ビルドキングを目指して旅立つ。

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最大の問題は、「食」は美味そう!これ食いたい!になるんですけど、「住」は、ここ住みたい!にならないんですよね。得られる快楽が違う。まあ、だから、危険な世界の中で唯一の安心して住める場所という捉え方なんですけどそうすると今度はほとんど日本人には訴求しないということになってしまいます。読者の共感が得られにくい。

 

島で実力を伸ばしたとんかちとレンガが旅に出るところから物語は始まります。

順調に建築の才能を伸ばしたレンガに対し、戦闘力を高めたとんかちは平和を築くことが目的。

もうすでに開幕から建…築…?となりますが、バトルは必須なので目を瞑りましょう。

 

ただ、せっかくの決め台詞なんですけど、台詞回しが「お前に勝てる」なんですよね。

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島から飛び出したとんかちとレンガは、屋獣に懐かれたり、屋賊と戦ったり、活気ある大工の世界を目撃します。

 

ここちょっとワクワク感

この辺りの表現は上手いんですけど、バトルメインになりすぎて、活かせてないんですよね。

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外の世界で実力を発揮するとんかちとレンガ。

逆さ城のリフォーム。

島で実力を蓄えてきた2人の最初の見せ場なんですが、発注主であるコルクの思い入れや、コモーリ王の掘り下げが少なく、どうにも小さな事件となってしまっています。5話から8話までかけた序盤の見せ場のはずが、為さねばならない理由がなく、命懸けというわけでも、負けられないライバルがいるわけでも、これに成功しないとビルダーになれないわけでもなく、外の世界でみせるとんかちとレンガの圧倒的な実力という回でも、実力が足りずに唇を噛む成長回というわけでままなく、長さのわりにカタルシスに乏しいです。ここの盛り上がりのちいささが、運命を決定づけてしまいました。

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そのまま、ビルドユニオンに所属するための試験に突入します。一時期猛威を振るった試験展開きちゃったか…。

島袋先生も試験をずっとやるつもりはなく、乱入展開になるんですが、本当に試験してるだけでキャラの掘り下げとか、新キャラがでたワクワク感とかがなく、乱入での中断を含めてどこかで見た展開になっています。

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試験に乱入する「全てを力で支配する世界を建築する組織、サタンヒルズ」

建…築…?

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急に終盤になって、ハンタの念能力みたいなのが出てきますが、これは打ち切り漫画名物消化しきれなかった設定の開示!?ちょっと今回は、試験といい属性といい、ハンタ臭がきついんですよね。

 

いいビルダーは家に好かれちまうんだ

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ビガーの属性、反対色で相殺

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絶対これ、特別枠の金色とかあるだろと思ったら、即作中で例外の色が登場します。

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オリジナリティを出すんであれば、ロボバトルに振った方が目新しさはあったと思います。ロボはロボで鬼門の分野ではありますが。

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結局本誌連載で尺が足りずに全くケリを付けずに終了。そのあとジャンプラに書き下ろし130ページ越えで完結編を掲載しますが、これすら、設定・隠された因子の開示、仲間たちの集結、未来の強豪のチラ見せ、よーし行くぞ!、10年後という由緒正しい打ち切り漫画のフルコースで終わりました。実質2回打ち切りをくらったようなもんだよ。俺たちは何を見せられてるんだ!

ジャンプ掲載時の最終回

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書き下ろしの終わり エンドレス打ち切りムーブ

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3巻の作者コメントでは、夢オチにしようかと思ったことや、家(ロボ)メインで進めると主人公が埋もれてしまうので序盤は家キャラを封印したこと、スランプで何が面白いかわからなくなり作者的にも納得いってなかった連載ネームを意見を聞くために連載会議に出したところ通ってしまったことが語られています。球不足の余波を被ってしまったということで、ちょっとかわいそうですが、全体的に練り込み不足だったようです。

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さて、次回作は「衣」やるんですかねえ…。

 

 

 

 

 

 

 

ぼくらの血盟  2020年

ぼくらの血盟 全2巻 かかずかず 2020年

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吸血鬼の暮らす世界。孤児だったシンは吸血鬼に育てられ、その育ての親を吸血鬼に殺された。

愛してくれた両親の代わりにコウを守るため、弟コウと吸血鬼の世界に伝わる無明の血盟を結んだシンは人間と吸血鬼の共存を目指して吸血獣を退治して回る。

 

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衝撃の2話、吸血鬼のパーセンテージ、倫理観が物議を醸した作者のデビュー作。

 

まず、世界と主役の説明を担う1話で、吸血鬼のいる世界である事、主人公は吸血鬼と人間の共存を目指す兄弟である事、兄は人間、弟は吸血鬼の王族、弟は兄の血しか吸えない契約を交わしている事、吸血鬼は人間を餌くらいにしか思っていない事、昔、人間と吸血鬼が共存していた時代があったこと、兄弟が吸血鬼退治をしている事、兄弟の両親を殺したボス的存在がいる事などが説明されます。

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つづく2話は定石では、ライバルかヒロインの登場、1話を踏襲しつつ、1話より強い敵を相手にバトルのバリエーション、必殺技の種類や条件の説明、中ボスや事件を出して世界の設定の補強や大目的の提示とそれに至る小目的の解決を示すあたりをやるのですが、血盟の二話はその誰も選択しませんでした。

普通の人間なら勝負の2話は大事に扱う、設定の開示やボス、中ボスを出そうとばかり考える。だが、かかず先生は違った!逆に!

何も登場しない設定の開示もない箸休め回!

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シンがいないお家で留守番をするコウのところへ迷い込んできた子供の子守りをする箸休め回! 確かに、シンがご飯やおやつを準備しているお母さん役で、吸血鬼と人間といえど愛が溢れる暮らしをしている事、コウが兄が大好きな事、シンがいないとコウは力がうまく操れない事あたりの設定は開示されるのですが、大目的に至る活動や、謎の敵、仲間については全く言及されない「なくても支障のない回」を持ってきました。

この回が余りにも、「好きなキャラクターの日常回を描いた同人誌」っぽかったため、「pixivにあげられている本編が見たい」というコメントが出たほど。

 

ちなみにジャンプ打ち切り漫画紹介40年の歴史の中でギャグ漫画以外で2回目に本編と関係ない箸休め回を持ってきたのはぼくの記憶の限り「SANTA」だけです。この作品は完璧に近いバトルファンジーの導入1話の後に、人間に害をなす化け物が蔓延する世界で、とある村で人間を守る心優しい化け物と出会ったという箸休め回を載せたました。

 

3話以降は通常の話が進行するんですけど、編集はこの2話を止めなかったんですかね‥。

 

3話以降は人間を支配下におきたい吸血鬼が緋月兄弟を狙い襲ってきます。クラスメイトの西山、街の吸血鬼の子供・キリちゃんとその友達の人間の子供・アキちゃんなど身近な人達を利用して2人を傷つけ、利用しようとします。

 

このあたりの描写があまりにも吸血鬼視点で描かれているため、倫理観がおかしいと炎上。

 

まず、人間と吸血鬼で友達になっているあきちゃんとキリちゃんが登場。攫われた上、飢餓状態で2人きりで放置されます。

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吸血鬼は飢餓状態が続くと、正気が保てなくなり、姿形が変わる獣化をおこし、完全に獣化すると理性も感情も失い、二度と元に戻れない血を求めて彷徨う亡霊となる。そうなると、もう殺すしかない。

飢餓状態の、キリちゃんは我をなくし、あきちゃんを襲ってしまいます。キリちゃんは半獣化、あきちゃんは失血で死亡。

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人間を憎み、ゴミのように思っている吸血鬼・廻峯は嫌がらせでこれを行います。紆余曲折があってバトルで廻峯を倒すコウとシンですが、親人間派だった親を人間に殺されて人間を憎む廻峯を殺さずに、わかりあう道を選びます。

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え、死んだアキちゃんの立場は?

 

自分がやったように飢餓状態にされて獣化寸前の廻峯。許すか許さないかを問われたコウは、他に謝らないといけない相手がいると語ります。

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キリちゃん!

え、死んだアキちゃんのことは?

 

そして、優しいキリちゃんは、廻峯が苦しんでるのを見て許すのでした。

おい!なんかいい話にしてるけど、なんの罪もない人間の女の子を殺したことが、報復の連鎖はやめようって言う一言でほぼ無かったことになってるからな!徹頭徹尾吸血鬼の加害者と被害者の話しかしてねえ!

 

というわけで、タイパラ、サム8に並ぶいかれた倫理観で炎上。

 

自分で攻撃した従者が、敵にやられたことに慄く廻峯くんや、

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お前さっき刺してたじゃん

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最終話4話前に登場して、こいつらが出てきたならまだ終わらないだろうと思われたら特に活躍も解説もないままフェードアウトした抑止力・政府公認秘密機関「光狼」、

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人を引いておいて悪態をつく、こちらも倫理観ゼロのトラックドライバーと、一撃でトラックを粉砕した結果異様にシュールな絵面を形成した灰賀、

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最後まで登場せず回想シーンのみで顔をだす、おそらくラスボスのコウとシンの両親の仇・「あのお方」など

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ツッコミどころが多すぎた内容と、いかれた倫理観で打ち切り漫画界隈が騒然としました。

 

人間と吸血鬼の共存という大目的は良かったのですが、いかんせん活動としては草の根的な吸血獣狩りで目的達成までのルートが明示されなかったのが痛いです。(吸血鬼の王になれば、穏健派でまとめられるとか)

また、人間と吸血鬼は共存できるかという問いに、子供らしく単純な、邪気のない答えを出すのですが、小学生の考えた実現不可能な絵空事が提示されたままで終わってしまい、現実的な対応や方針に至らなかったのが作品を通してモヤモヤするところです。なんというか、兄弟の中の優しい世界で完結してしまって、無垢な主人公の苦悩や成長に至らなかったのが片手落ちに思えました。

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後もう一つ物議を醸したのが吸血鬼の数。

人口の0.2%に相当。

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日本全国で24万人。大体中学校の先生の数に相当します。吸血鬼多いな!

世界でいうと約1500万人。軽く、吸血鬼国家を作れそうな人数がいることになります。この世界大丈夫なの?

ちなみに0.2%は女性のバストHカップ以上の人の割合に相当するそうです。吸血鬼少ねえな!

 

 

 

 

ボーンコレクション  2020年

ボーンコレクション 全2巻 雲母坂 盾 2020年

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由緒正しい陰陽師の家系に生まれた迅内カザミは、陰陽術の才能が皆無だったが、代わりに妖怪の力を使う禁術「妖怪術」の才能に長けていた。しかし、妖怪術は使えば死刑という禁断の術だった。

ひょんなことから、人間になりたいガシャドクロの白羅さんと出会ったカザミは、1日デートをすることで気に入られ、白羅さんが人間になるまでコンビを組むことになる。妖怪コメディゆるバトル漫画。

 

全体的にバトルもゆる〜いコメディ色の漂う妖怪漫画。方針が決まるまで話をどう転がそうか悩んだということで、導入は素晴らしく少年漫画しているのですが、展開はコメディ調が多く、シリアスなのかバトルなのか、リボーンみたいな日常ギャグとシリアスバトルを切り替えるのか、ハーメルンのバイオリン弾きザ・モモタロウみたいにバトル自体をコメディ調でやるのか、作品自体をどの方向に持っていくかが決まるまでどっちつかずになってしまったのが惜しいです。作者自身、「白羅さんのキャラは登場からぶれずに定っていたが、カザミのキャラが決まったのは8話くらい」とコメントしています。

振り切れてからの終盤の突き抜け方はすばらしく、心に残る打ち切り漫画となりました。賛否はあれど本領を発揮してファンがついたことは確かなので次回は初手からの全開投球に期待したいところです。

 

導入はメチャクチャ少年漫画、空から降ってくる女の子、人間になりたい可愛い大妖怪、血筋はいいが落ちこぼれ陰陽師のカザミくんはバレると死刑になる禁術の使い手、始末するべき妖怪に惚れられるカザミくん、妖怪を退治することで人間に近づく大妖怪、妖怪を退治する事で人間性を失って妖怪に乗っ取られる主人公。

 

少年漫画のお手本みたいな出会い

ボーイミーツガール

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1日デートで白羅さんに気に入られるカザミ

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人間になりたい妖怪

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使えば最終的に妖怪に乗っ取られる禁術・妖怪術

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でも、基本的に善性の人なので誰かを守る為に術を使ってしまうカザミ

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設定自体はうまくできており、ラブコメにもシリアスにも転がせる上、白羅さんの正体を秘匿して妖怪退治にも、白羅さんの正体がバレて追われる身にも転がせる上、話が進めば人間化が進んで弱体化する相棒、人間性を喪失していく主人公などもりあげる要素にも事欠きません。王道にして融通効きやすい設定。

 

カザミくんの、女の子にモテたい、妖怪と人間の関係をよくしたい、誰かを守りたい、あたりのキャラの主軸が決まるまでと、バトルとコメディの味付けの方向性が決まるまでが少し長かったです。

 

敵妖怪が段々と怖い存在から、大妖怪でもへっぽこな味付けになってくる酒呑童子

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締めもドッジボールという緩さ

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全体の方向性がきまったミルクボーイと妖怪牛小屋潰し回 10話

牛乳を作る妖怪というゆるさと謎のミルクボーイ連呼。妖怪と人間の架け橋になりたいというカザミの目標を具体的に実践して夢が定まるというゆるく見えて作品の趣旨を綺麗になぞった回。

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しかし、そこから最終エピソード。

大妖怪の脱獄、陰陽師の四天王の二人目、妖怪術の師匠の登場。と、一転バトル寄りのシリアス導入。

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人死にも出るんですが、バトル自体はゆるいノリのまま。

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そのまま結婚式に突入して、ラスボスを倒して終わります。今までも骨の武器は刀だったら槍だったり、掃除機だったり多種多様で付加能力もついていましたが、結婚式が出てくるとは‥。一応、恐怖という概念を礎にする妖怪を陽の究極の祝祭である結婚式により封じ込めるという理屈らしきものが微かに提示されますが、今までそんな概念なかったよね?ミルクボーイとか出てたし完全に別世界から来た生き物扱いだったよね?

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オチ自体は綺麗に決まっておしまい。

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何故か単行本に収録されていない読切では、タイトル通り骨を集めるのが目的で、お色気白羅さんとコンビのバトルがメインになっています。こっちの方が少年受けしそうでしたがなんで路線変更しちゃったんでしょうかね。2話の表紙におっぱい強調白羅さんかいたら、女子受けしないからダメが出たと書かれていましたので、担当編集の意向があったのかしら?読切と全く同じ路線のあやトラがその後連載で始まったので、いい判断だったのかどうかは微妙なところだと思います。とりあえず単行本に収録してくれえ。

 

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