津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

番外編 瑪羅門の家族

瑪羅門の家族 全4巻 宮下あきら 1992年

f:id:jiholeopardon:20220413003504j:image


とある事情で知っている人も多い宮下先生の打ち切り漫画。

念を打ち込む事で人の行動を操る瑪羅門一族が、悪に仕置きする必殺仕事人物。後半はジャンプらしくバトル漫画に転向して世界を陰から操る魔修羅一族と瑪羅門7人の選ばれし戦士が戦います。

 

根本的には必殺仕事人なんですが、まずジャンプにはブラックエンジェルズという仕事人物の大先輩がおり、次に念で行動を操る能力なんですが、こちらもタイムラグのある死・行動の操作は北斗の拳という前例があります。つまり、なんとなく新鮮味が薄かったんですよね……。

 ブラックエンジェルズほど悪人がド外道ではなく、北斗の拳ほどの拳法のインパクトがない。更に念で操ることで自白などもさせられるので、物語が最も都合よくたたんでしまえるという予定調和感。 

 

f:id:jiholeopardon:20220414085052j:image

念を打ち込むことで相手の行動を操るんですが、

「護衛している大統領を盾にテロリストに命乞いをした上で大統領をテロリストに差し出し、死にたくないから逃げると言わした上でトラックの前に飛び出して轢かれる」ところまでコントロール可能です。ちょっと能力が行き届きすぎだったんだ……

 

 結局仕事人編は弾けずに、バトル編に突入します。悪を裁く瑪羅門に対して、歴史の裏から人々を操ってきた魔修羅一族。ヒトラーも信長も奴等の傀儡だったのだ。

 

 でたー!80年代によく見た歴史上の人物が巨大な組織の操り人形やったやつや!だいたいヒトラーが皆勤で次点でナポレオン、ジャンヌダルクアレキサンダー大王がその後に続くといった感じ。

 

f:id:jiholeopardon:20220414114701j:image

貴重な宮下あきら織田信長カット。

信長名鑑には登場したのだろうか…?

f:id:jiholeopardon:20220414114706j:image

 

 

これに合わせて、瑪羅門の念を打ち込む能力は、7つの能力の一つということに変更、7つの力をもつ7人の戦士を集めて魔修羅と戦う展開になります。

念能力以外は、力持ち、素早いやつ、身の軽いやつ、動物と喋れるやつ、炎を出すやつ、なんでも砕くやつ。

なんかこう、能力といい、設定といい当時でも"懐かしい"感じのテイストでした。

f:id:jiholeopardon:20220414123401j:image

 

当然ブレイクするはずもなく4巻で終わってしまうんですが、民明書房みたいな慣用句(?)からこじつけた能力の紹介は宮下先生らしかったのでもっと見たかったです。

f:id:jiholeopardon:20220414124830j:image

f:id:jiholeopardon:20220414124841j:image

 

さて、 打ち切り漫画大好き津尾さんが、瑪羅門の家族を気に入っているのは懐かしいテイストの設定ということもありますが、真骨頂はその終わり方にあります。7人の戦士を揃えて、魔修羅最強の男と対決をするところで作品は終わりを迎えるのですが、

「ラスボスは先にある宮殿で主人公達を待ち構える」

「ラスボスと戦う資格を示すために3人の敵を倒す必要がある」

「最終回で怒りで新たな能力に目覚めて強敵を倒す」

「3人の敵の最後の1人は、仲間達ではなく謎の人物が倒してくれた」

「謎の人物の正体は『いずれわかる』でごまかす」

「最終ページは『行くぜ‼︎』で終わり」

という原色超人ペイントマン(https://utikirimanga.hatenadiary.com/entry/2021/04/02/121935)並みの打ち切り仕草が炸裂します。

 

f:id:jiholeopardon:20220414130658j:image

新たな能力が突然発動するけど特に説明はないぜ!

f:id:jiholeopardon:20220414130235j:image

最終回なのに「いずれわかる」というあからさまな説明放棄アンド闘う尺がない敵の処分

f:id:jiholeopardon:20220414130239j:image

打ち切り漫画の華、大コマで行くぜ!

 

サスケ忍伝、ペイントマン、ビルドキングに並ぶ打ち切りムーブだと思います。そういうの、好きだぜ。

 

 

 

 

番外編 ゆうれい小僧がやってきた

フォロワーさんから、Twitter版でやってた4巻以上の打ち切り漫画もブログに上げてくださいというリクエストがあったので、ちょっとだけ番外編として追加していきます。

 

ゆうれい小僧がやってきた 全5巻 ゆでたまご

1987年

f:id:jiholeopardon:20220410222102j:image

2身1体の妖怪百太郎、琴太郎は合体して亜鎖亜童子に変身し、火山の噴火により封印から逃げ出した108体の妖怪を退治するという妖怪退治物。前半はクラスメイトの関わる怪異を解決。後半はジャンプらしく西洋妖怪とのバトル物へ。

 

鬼太郎やどろろなどの名作妖怪退治物に憧れていたというゆでたまご先生による現代風妖怪退治物。妖怪退治物としては比較的ベーシックな作りで、正義の妖怪亜鎖亜童子がクラスメイトの周辺で起こる怪異や呪いと闘います。鬼太郎とかぬーべーとかに近いフォーマット。

 

人間の欲望が妖怪を引き寄せたり、過去の伝承を忘れた人間が安らかに眠る妖怪の目を覚ましたり、妖怪の生きにくい世界になったので妖怪が人間を利用したり、単に悪い妖怪が人間を苦しめたり、この辺りは妖怪物の定番と言ってもいいんですが、妖怪が流行りのパズルを使って2人の合体を阻止しようとするあたりがゆで先生です。

f:id:jiholeopardon:20220410224837j:image

迷宮を破るときに亜鎖亜童子に組み変わりますが敵にダメージもないしこれを使って戦うわけでもないし特に意味はありません。ゲエエーじゃないんだよ。

f:id:jiholeopardon:20220410225005j:image

 

特徴はニ身一体妖怪なんで、2人が離されたり、絆にヒビが入ると変身できなくなるという点。まあバロム1にウルトラエース、超機動員ヴァンダーなんかの形式で、主人公は強くしたいけど強いとあっという間に敵を倒してしまうので、合体前という段階を作り、同時に2人の関係性で物語を膨らませる手法です。

f:id:jiholeopardon:20220410223838j:image

 

ただ、この作りのせいで、日本屈指の正義妖怪亜鎖亜童子をなかなかだせないため、実質的に百太郎ベースで話が進みます。主人公があんまり出ないというデメリットとストレスはあったかもしれません。子供心に焦ったいと思っていました。

 

前半路線のクラスメイトと妖怪退治路線も悪くなかったと思うんですけど、爆発的に跳ねるというほどではなく、2巻からは西洋妖怪との対決というバトル路線に進んでいきます。まあ、妖怪物の定番の一つではあるんですが、そこはゆで先生、一味違います。

f:id:jiholeopardon:20220410224108j:image

ゲェーッ!妖怪物なのにリング⁉︎

 

妖怪がリングでプロレスというヤクをキメたかのような発想でバトル編に突入します。流石ゆで先生!こんなこと考えるの先生だけだぜ!そこに痺れる憧れるぅ!

 

と思ったら妖怪にプロレスをやらせる企画が現実にもありました。

f:id:jiholeopardon:20220410224226j:image

どいつもこいつも何考えてやがんだーッ!!

 

 

白眉は、悪の西洋妖怪が攻めてきて、日本妖怪のアジトを聞くシーン。基地の場所を聞いておいて即虐殺を行い「これで、奴らの味とがわからなくなってしまった…」シリアスな笑いか?超シュール。

f:id:jiholeopardon:20220410225425j:image

 

バトル編となればゆで先生の独壇場。もはや妖怪ってなんやろと考えさせられますが、超人オリンピックみたいな予選を経て7人の正義妖怪が選出されます。勿論このメンバーは妖怪募集で読者から募集した妖怪が何割かを占めています。

f:id:jiholeopardon:20220410231017j:image

この辺りで読者も、ちょっとこれキン肉マンに寄せすぎじゃないかしらという疑問が頭をよぎりますがゆで先生は止まりません。

ビリヤードリングや竜巻リング、スケボーリング、コールタールリングと妖怪?こまけえことはいいんだよと言わんばかりのリングで西洋妖怪とのプロレスが繰り広げられます。

f:id:jiholeopardon:20220410232235j:image

f:id:jiholeopardon:20220410232238j:image

これが、妖怪の闘い?

 

流石に前作に寄せすぎたのか会えなく打ち切りを喰らうんですが、単行本版書き下ろしで一応ケリをつけるところまではやってくれています。

f:id:jiholeopardon:20220410231859j:image

本誌のラスト。この後書き下ろし12ページで決着がつきます。

 

四次元エレメント交差の原形もかいまみえますし、なんだかんだでゆで先生好きなんでオススメはしておきますが、サイレントナイト翔、サイバーブルーなどと同様前作の大ヒットを引きずり過ぎた失敗の一つというのは否定できないと思います。

f:id:jiholeopardon:20220410232802j:image

 

一応アニメ化のオファーが来てたらしいので、紙一重くらいだったのかもしれないですけど…。

前半路線で行って欲しかった作品です。

 

ところで、「妖怪物の漫画を描くと怪現象に出会う」という妖怪・怪奇物でよく言われる現象ですが、この妖怪プロレス漫画ですら作者は原因不明の体調不良に襲われたらしいので妖怪たちのカウントはだいぶシビアと思われます。オンドボハンランジキソワカ…。

 

 

レッドフード  2021年

レッドフード  川口勇貴 全3巻 2021年

 

f:id:jiholeopardon:20220320225756j:image

 

食人衝動に目覚め人肉を食らう怪物となった元人間・人狼が現れた村で、小さな狩人ベローは、伝説の狩人が設立した怪物退治専門の組織「狩人組合」からきた凄腕狩人グリムと出会う。

f:id:jiholeopardon:20220322011418j:image

高田ちゃん、スターアンドストライプ、一心、ヤマトとでかい女が流行りのジャンプに、デカイ女とショタの活劇が始まりました。

 

人狼に襲われる小さな村、村に受けた恩を返すために人狼を倒したいベローは凄腕狩人グリムとの出会い、素質を認められ戦いに臨む。

f:id:jiholeopardon:20220323012409j:image

 

 村の危機に才能ある少年が、師匠となる対魔物戦闘のプロと出会って弟子入りし、才能を見出されて戦いながら成長していくという筋立ては比較的わかりやすい王道少年漫画です。

 

3話までで人狼という人類の敵があり、それに対する狩人組合という組織がある事、人狼の強さ、銃はあるが近代兵器はないという世界観の説明とベローのキャラと立ち位置の説明と地味めながらスムースに話が展開します。幼女→巨女に変身するグリムのフックもあって悪くない立ち上がり。

 

5話までで最初の戦いを終え、挫折を覚えて狩人組合の試験をうけるパートに移るのですが、赤ずきん(レッドフード)に対して意味ありげな灰の魔女(シンデレラ)の登場、なぜ人狼が生まれるのか?小さな村が焼かれたのは何故か?血の目録とは?直参とは?グリムにかかった魔法とは?人狼を滅ぼす計画とは?と、怒涛の謎が振りまかれて1章が終わります。

王道どころか90年代末のエヴァンゲリオンの後追い作品みたいな読み口になってるけど大丈夫かコレ!?

f:id:jiholeopardon:20220331011919j:image

 

6話からは人狼を倒すために狩人組合に入るための試験編。外の世界や試験官、仲間になるキャラ描きつつ、試験が始まるまでに3話。オイオイ、死んだわアイツ。

 

正直序盤の展開が遅いのは死亡フラグなので、謎の回収もせずに主人公の成長するでもない幕間回を3話続けただけで死んだと思いましたが、なんとこの3話の間に起こった出来事は、いかにも仲間になるチルチルミチルモチーフのチルチ、ミルチ兄妹が凄腕だけど前回の試験に落ちたほど試験が難しいことが判明。タッパとケツのでかい女試験官デネボア登場。試験仲間ボンカース登場。同じく童話モチーフの爺さんブレーメンが意味ありげに登場して5ページで退場します。このくだり必要だったかしら……。

 

 

f:id:jiholeopardon:20220401232524j:image

名入りで登場して

f:id:jiholeopardon:20220401232527j:image

5ページで退場……

 

9話からは試験が手錠ケイドロということがわかり、ルールの説明とこの3話で登場したキャラと力を合わせて試験をクリアするんですが、前振りが長かった割に試験自体が盛り上がりません。

6話かけてそんなにキャラが立ってない仲間たちと死ぬわけでもないぬるめな試験を見せられてもなあ……。正直なところここで打ち切りは決まってしまったと思います。

 

15話からは3章に突入。 

この世界は、上位存在に与えられた「真実の本に書かれた物語」が現実になったものであり、組合は本にシナリオを書き込み世界を動かしていたこと、つまり、この世界の悲劇は全て組合の演出した自作自演だったこと、村長はそれに反乱してシナリオを無効化する魔術生命体・ベローを作ったこと、上位存在はシナリオが面白くなければ世界を終わらせることが怒濤の設定開示で明かされます。

f:id:jiholeopardon:20220401232615j:image

唯一シナリオの影響を受けないベローの選んだ選択肢は……?というところで18話完結。

 

f:id:jiholeopardon:20220401231037j:image

 

久しぶりに打ち切りらしい打ち切りというか、未消化の謎、怒濤の設定開示、たくさん出た割に掘り下げられてないキャラクター、俺たちの戦いはこれからだ。となかなかやってくれた作品でした。読切版は見た目通りの王道少年漫画だったので、本誌連載に際して「世界は上位存在を満足させるために、描かれたシナリオ通りに動かされている」という厨二臭い設定を追加したということなんですけど。どこか手垢のついた設定をねじ込んでわかりにくくするんだったらその分をキャラの掘り下げやバトルに使った方がよかったわよね……。シンデレラやポルッツェンは可愛くて動きも良く、ボンカースやメリオピリスも味のあるキャラだったので、グリムも含めて活かしようはあったと思うのですが、どうにもバトルも試験も展開も突き抜けきらない中途半端な出来になってしまった印象でした。

 

ちょっと仕方なかった感のある打ち切りでした。

 

NERU ー武芸道行ー 2021年

NERU  ー武芸道行ー  比良賀みん也 全3巻 2021年

 

f:id:jiholeopardon:20220212001203j:image

 

祖父に憧れ、なにもない村で幼い頃から武芸の鍛錬を続けてきたネルは、一目見たものを己の体で再現する才能を持つ武芸家。祖父と縁のある武芸家の女子高生•拝庭朱琵と出会ったことから現代に生きる武芸家が通う高校、天門武芸十八般高校へと進学する。

 

ちょっと不思議な雰囲気の古流武芸漫画。通常この手の漫画は最強を目指すか、父や復讐相手を倒すことを目的にするんですけど、主人公のモチベーション的にも話の色合い的にも少年漫画らしい最強論よりは、どう生きたいかという生き方の選択をメインに描いています。飄々としているところは陸奥九十九や早坂暁などこの手の漫画には珍しくはないんですけど、最強を証明するとか誰かを倒したいとかではなくて、己が何者なのか知りたいという、修道的なキャラクター造形。

 

1話でネルの生い立ちと才能を掲示して、拝庭朱琵との運命の出会い。芽生える目標。2、3話で高校の紹介とライバル登場。4話から試験編。ネルの性格、才能、規格外な部分などは描けてるんですけど1巻7話かけて入学までの部分で、核となるキャラクターが配置されません。拝庭姉弟は魅力的なんですけど、お互いの関係性が強すぎて、物語の中心には入ってこない。というわけで、飄々とした主人公だけが配置され、話が膨らましにくいまま進行するため求心力に欠ける出来になっています。

アメノフルもそうだったんですが、ここ最近の打ち切り作品て丁寧に作ってあって及第点なんですけど70点をとる秀才っ感じの仕上がりでちょっと熱量に欠けるお行儀のいい序盤が多いです。大体一巻を超えるあたりから本領を発揮して作者の業が見えてくると面白くなってくるんですけど、そこまでついてきてる読者が少なくなってしまっているという…。

その点タイパラ、血盟は良い意味でも悪い意味でも異色作でした。

 

殺陣は結構かっこいい

f:id:jiholeopardon:20220212140037j:image

 

仮面のミニスカ女子高生剣術使いお姉さん拝庭姉は魅力的だったんですけど、1話の密着からラブい展開に移行しなかったのはお姉さん好きの津尾さんとしては残念でした。憧れの女師匠ポジションの方が話は転がりやすかったと思いますが、姉弟で立ち位置が固まってたんでそうもいかず、連載用に三強に据えた丈九郎が電子短期連載版より強い位置にいる分すぐ話に絡めにくいという、連載用に話を再構築した歪みが出てしまいました。

f:id:jiholeopardon:20220214093046j:image

 

 

7話から登場のヒロイン・要と絡み出してからは結構楽しめましたが、1巻かけて主人公以外のレギュラーが定着してないのはちょっときつかったです。朱琵は遠い目標、丈九郎はその手前の目標なので、手近な目標となるライバルがおらず、一緒に話を進めてくれるのがキャラが立っていないクラスメイトの脇キャラな2人しかいないんですよね。

この辺りは電子短期連載版の方がスッキリバトルして、丈九郎が当座の届かなくもないが少し格上のライバルポジションにいるので収まりが良かったです。

 

要ちゃんはツンデレ可愛い

f:id:jiholeopardon:20220212142629j:image

f:id:jiholeopardon:20220212142634j:image

 

入学試験に合格後、入寮試験で要と仲良くなり合格。授業が始まってからは、同室の先輩と組んで一年主席とナイフナメナーメパイセンとタッグマッチとサクサク進行するんですが、敵がポッと出で感情移入しにくいです。「戦いたいです」で戦う為、悲壮感や危機感に欠ける。そこまで悪いやつでもないのでモチベーションも低い。と、盛り上がりに欠ける展開になってしまいました。試験編で主席と因縁を作っておくとか、類型位的にはなりますが要ちゃんがらみでナイフナメナーメパイセンに絡まれるとか、試合編を盛り上がるブックがほしかったです。月間の少女漫画誌で、色々なキャラを出して複数掘り下げていくのを待てるなら情緒的でいい面が活かせた気もしますが、週間の速度でこれはきつかったです。とはいえ、後書きによるとかなり序盤で打ち切りが決まったため、モチベーション保つのが難しかったとのことで、タッグマッチ編は話を作り込む状態ではなかったようです。

 

最近あんまり見ないナイフナメナーメパイセン

f:id:jiholeopardon:20220212153510j:image

 

結局チーム戦後、まとめのお話と5年後にみんなの将来を描いて2話で終了。全18話なので実質2巻分くらい。後書きによると、3〜5話くらい前に告げられると思っていた打ち切りがかなり序盤で決定したということ、18話で5話前なら13話よりかなり前となると、おそらく入寮試験編で打ち切りが決まったということだと思います。

 序盤、7話までがやはりきつかったか…。電子版の方は4話でバトルまでこなして丈九郎がライバルポジションを張ってくれているので、正直こちらの方がジャンプ向きではあったとおもいます。

 

単行本は2巻に4コマ、3巻に電子版4話収録、書き下ろし拝庭姉弟の短編が収録されており、カバー下にボツネームも配置されています。この辺りは作者の愛とサービス精神を感じます。

f:id:jiholeopardon:20220214093057j:image

興味がある方は是非購入してみてください。

 

 

 

アメノフル  2021年

アメノフル 全3巻 原作 たけぐし一本 作画 みたらし三大 2021年

 

f:id:jiholeopardon:20220209135457j:image

 

水瀬ツムギはペロペロキャンディのお菓子使い。東京を滅ぼしたペロペロキャンディのお菓子使いと間違われないように正体を隠して暮らしていた。しかし、暴走したお菓子使いを止めるためにお菓子警察〈ルセット〉のメンバー三鳥ミサキの前で能力を使ってしまう。ツムギは冤罪をはらし、真犯人のペロペロキャンディ使いを捕まえる事ができるのか?

 

評価に悩む打ち切り漫画、正直、魅力的なキャラ、速い展開、画力の最低ラインは満たした上でうまく噛み合わなかったような作品です。

 

「お菓子使い」という見た目と語感のインパクトを武器にはじまったの能力バトル。ただ、学園で能力物で反政府組織と、公的組織が能力で戦うのはヒロアカなんですよね…。主人公がヒロイン、内容がコメディ、能力がお菓子由来というところで差別化を図ろうとしているのはわかるんですけど、「お菓子使い」という概念が、「スタンド」や「個性」「念能力」と比べると能力の幅や凄さがストレートに伝わりにくすぎました。

 直接キャラクターの内面と結びつける事ができる「スタンド」「個性」「念能力」と違い、「お菓子使い」の場合は、どのお菓子が選択されているかというのがキャラクターの内面と結びつきにくく、尚且つお菓子自体が幅広いニュアンスを含んでしまうため、このお菓子使いだからこういうキャラというイメージがない上に、このお菓子ならこういう能力というのも伝わりにくかったです。ガムとグミはまあわかりますけど、ポップコーンでギリギリ、ペロキャン、マカロン、ドーナツあたりはかなり苦しい。また、「スタンド」「アルター」ならビジュアルでイメージを見せることもできますがお菓子使いは既存のお菓子のビジュアルから外れる事ができないため、かなり扱いにくい設定となってしまいました。

 

アバウトな能力の定義が最後の逆転の肝になる構図なんですけど、定義ができていないので、各キャラの能力の幅がわからない。そのため能力バトルの中核となる、「出力差でなく能力の相性や使い方で勝つ」という部分の面白みが薄いです。そもそもなぜ、お菓子が出てくるのか、召喚なのか、なんらかの物質から具現化しているのか、精神エネルギー的な物なのか、体から精製されているのか、それがお菓子なのは何故か、何故特殊効果が付与されているのかなどの説明が何もないため話に入り込みにくかったです。

 

ツムギのペロペロキャンディでさえ、サイズ自由で具現化可能、硬度の調整が可能、柄の部分は伸縮自在の直接打撃武器だが小さいサイズを飛ばす事で飛び道具としての使用も可能という自由度が高すぎる仕様。近中遠距離までカバーする物理攻撃のお菓子。解釈の幅が広いのはいいんですけど、能力に対するなんらかの納得感が欲しかったかなあ。それこそ、内面の発露たる「念能力」や「スタンド」なら能力の本質は己の心、認識次第で能力の幅は広がるとかでもよかったと思うんですけど、その辺りの掘り下げもないんですよね。

 

 メインキャラの1人入江先輩はバニラアイスクリームのお菓子使いで、物理攻撃以外に凍結能力をもつのですが、チョコアイスや、ミントアイスなど他のアイスや、シャーベット、かき氷など氷菓子系の能力は入江先輩以外いないのか?いるなら同じ能力なのか、ミントアイスとバニラアイスの能力差は?など瞬時に疑問が浮かんできます。

作中では、ペロペロキャンディ、ドーナツ、マカロン、バニラアイス、ポップコーン、グミ、ガムのお菓子使いまでで結局被りはしなかったのですが、おかしに紐づけてる能力なのにお菓子から能力が想像しにくいのはマイナスだったかなと。

 

結局、これだと普通の能力にした方が飲み込みやすく、あえて「お菓子使い」にしたことによる作品上のメリットが感じにくかったです。

 

立ち絵はかっこよかったですが
f:id:jiholeopardon:20220210140405j:image

 

能力バトルなのに上記の理由から駆け引きがほぼないバトルなのが残念でしたが、反面掛け合いは面白く、途中から吹っ切れたようにキャラが魅力的になりました。

 

味方の逃すために攻撃を受けてやられた隊員をダセーと馬鹿にする敵お菓子使いの、

「ダセいっていうのはそいつみたいなやつのことだろ?」「それと比べて、俺のどこがダサいって?」

を受けて

f:id:jiholeopardon:20220209135704j:image

 

ペロペロキャンディ使いというのを秘密にして友達を守る為に戦っていると勘違いした敵の

「心あたりがあるだろ?こいつらに言えない後ろめたい事が…」

を受けて

f:id:jiholeopardon:20220209135724j:image

この辺りのノリは好きだったので、最序盤からコメディ全振りにするか、開幕からお菓子使いとのバトルは突入すればテンポ良く進行したと思うんですけど。

 

 

 話自体はスムーズに進行しており、1話→世界と主人公と相棒の紹介、3話→頼れる味方入江先輩登場、6話→ルセット(お菓子使い組織)への入隊試験、8話→悪のお菓子使いの侵攻とサクサク進みます。よく言われる展開が遅いわけではないんですが、ペロペロキャンディ使いとバレると終われるので正体を隠さないといけない設定が足を引っ張り能力が開示しにくい、身代わり兼協力者が必要、その身代わり隊員ミサキが個性が薄い事が序盤の印象を悪くしました。

更に、試験編で新キャラ•マモルと手を組まされるんですが、ミサキのキャラも曖昧なのにもう次の相棒出すの?しかも2人ともお菓子使いではないのでバトル的には戦力外で、結局戦うのはツムギなんですよね。なんでこの2人分けたんでしょう…?

 

中盤で展開したような、正体を隠して戦うツムギと、その手柄を請け負うためどんどん勘違いされて階級が上がっていくミサキをやりたかったのか、番外編で描いたようなマモルの恋の迷走を描きたかったのか、どうにもストーリーの進行を支える脇キャラが、キャラが立たないまま話に放り込まれていくので、こんなのも描きたいという作者の嗜好が先走った、とっ散らかった印象を受けました。 

 

 愚直な味方のやられるところを見せて、敵を撃つ展開や、敵の嫌なところを見せて、溜めてでかい一撃を食らわせることで爽快感を出す作劇はうまかったので、ミサキやマモルと1話からルセット入隊仲間にして、手柄あげながら3人組でのしあがっていくか、ペロキャン被りの設定をやめて、ルセット育成枠の機体のお菓子使いとして登場させ、五菓子(ステラアントルメ)と絡めたバトルメインにすれば、早めに強キャラを出すことができて、バトルの幅も広がり話もスッキリした気はします。

 

ルセット五菓子の1人入江先輩は、とぼけたキャラクターと強キャラ感、なんだかんだでいい人というキャラ造形でファンも多かったので、同じくらい強力なキャラを序盤に敵味方に配置できれば化けたと思うんですけど、ちょっと敵に魅力が薄かったです。まあ、これは尺を使えなかったというのもあるとは思うんですけど。単行本収録の特別番外編では本編でのフォロワーが少なかったマモルと敵のお菓子使いにスポットが当てられています。

 

ボケキャラから入って

f:id:jiholeopardon:20220210201614j:image

強キャラ感

f:id:jiholeopardon:20220210201618j:image

で、基本的にはいい人という美味しいキャラ造形

f:id:jiholeopardon:20220210201633j:image

 

なんか文句ばっかり書いてしまった気もしますが、悪くはない出来だったと思います。ちょっと煮詰めきれてなかったかなと。次回作に期待です。

 

 

 

 

 

 

クーロンズ・ボール・パレード  2021年

クーロンズ・ボール・パレード 全3巻 原作 鎌田幹康 作画 福井あしび 2021年

f:id:jiholeopardon:20211010005432j:image

 

フィジカルは弱いが分析力にたける捕手・小豆田玉緒は名門白鳳学園のセレクションをうけ、急増バッテリーながら配球センスと頭脳で相手チームを押さえ込む。しかし、セレクションに通ったのはフィジカルの強い捕手だった。

 

2年間このために備えた。結果は出した。

しかし、夢はかなわなかった。

f:id:jiholeopardon:20210922141218j:image

f:id:jiholeopardon:20210922141222j:image

気落ちする小豆田だったが、バッテリーを組んだ龍堂太央に一緒に野球をしようと誘われ、そこに居合わせたスカウトの黒滝かりんにより、かつての名門黒龍山高校復活のメンバーとしてスカウトされる。訳ありの逸材選手を集めて甲子園を目指そうとする小豆田たち。名門黒龍山は復活するのか?

 

龍堂は白鳳を蹴って小豆田と同じチームを目指そうとする。

f:id:jiholeopardon:20210922141304j:image

龍堂の勧誘を断る小豆田。ここで即答せずにワンクッション置くことで、小豆田の性格を掘り下げる。好感のもてるバッテリー。

f:id:jiholeopardon:20210922141419j:image

 

スポーツ漫画がことごとく失敗する近年のジャンプにおいて、正統派野球漫画が成功するのか?スポーツ漫画ファンからは期待半分諦め半分で様子を窺われていた野球漫画。1話のセレクション失格後にメンバー集めに言及したことから、「オイオイオイ、死んだわあいつ」と思われましたが、2話で元名門校の理事長の孫娘によるスカウト話が出たため、3話でメンバー集結、紹介しながら練習試合という早いペースのチーム構築、試合という展開に期待がもたれました。

 

雑誌で読んでた当時

「オイオイオイ、死んだわあいつ」とおもわれたシーン

f:id:jiholeopardon:20210922141613j:image

ここから、かりんちゃんスカウトで、死亡フラグを回避したかにみえたのですが…。

f:id:jiholeopardon:20210922141924j:image

 

しかし、スカウトメンバーは0ということで、結局メンバー集めをすることになり、実家のおもちゃ屋が人手不足で野球ができない強打者・剣、性格に難ありだが実力は確かなショート・椿、地味ながら選球眼とキャプテンシーに優れるファースト・木戸をスカウトして、志願入部のレフト強打者・寅本、守備と走塁にすぐれるセカンド洞口が揃ったところで終盤に入ってしまいました。

 

何故メンバー集めをしてしまったのか…

f:id:jiholeopardon:20210922141916j:image

流石に全員集める時間はないと判断したのか、残り2人は追加入部してきたモブで補われ夏の大会が始まります。番狂わせを起こし中堅強豪校に勝利。続く2回戦でも苦戦しつつネームドのライバルを倒して、待ってろよ白鳳学園で俺たちの戦いはからこれからだエンド。

 

まあ誰もが思ったのが、1話で出たメンバー集めという死亡フラグに何故突っ込んだのか?です。前述したように、メンバーが集められており3話でナインが揃えば、即メンバーのキャラを立てながら試合ができ、スカウトによりある程度実力がある、だがしかし超一流ではないので成長の余地があり、小豆田の分析力を生かせる、ややクセのあるメンバーが揃えられたんですよね。一巻半まるまる費やしたメンバー集めをやる必要がなかったように思います。

 

そもそも、スポーツ漫画におけるメンバー集めは80ー90年代であれば、

①部活ができるかどうかのピンチの演出

(大概廃部寸前だったりする)

②メンバーの紹介

③0から作り上げていくワクワク感

④他分野の達人や名選手をコンバートすることよる面白み

あたりが目的なのですが、現在のスポーツ漫画で0から全国大会レベルに叩き上げるのは無理がありすぎますし、なんなら素人がスタメンに1人でもいる時点でかなり苦しいです。他分野の名選手のコンバートや0から作り上げるワクワク感ももう新鮮味がないですし、部活ができないと話にならないので①のピンチの演出の意味も薄いです。結局②メンバー紹介が目的になるのですが、1人づつメンバー紹介をしていくのは恐ろしくテンポが悪くなります。

 

H2くらいじっくり腰を据えて描けるならアリなのですが、ジャンプの高速環境でこの手段を取るのは半ば自殺に等しいです。メンバー集め自体が物語として超面白く描けるなら話は別ですが、大体メンバー集めもテンプレがあります。

 

メンバー集めのテンプレ

①両親が怪我・病気で働かなくてはいかず、部活をやる暇や金がない。類似で人手不足で家業の手伝いが必要など、経済的な問題のパターン。もろ剣のケース。

f:id:jiholeopardon:20210922142402j:image

②両親や家族がスポーツを嫌い、トラウマで部活をやらせてくれない。勉強重視のため部活ができない。家庭の方針の場合。

③名選手だったが怪我で復帰できない。

④誰かに怪我をさせたトラウマや贖罪で競技に復帰できない。

⑤才能はあるがやる気がない。色々な競技の万能選手だったり、成績は良かったが燃えないとかで主人公がライバルとなり競技の面白さを伝えるパターン。

⑥過去の暴力事件等でやる気をなくし腐っているケース。主人公の純真さに触れて、競技を好きだった頃を思い出すパターン多し。

⑦競技は好きだが才能がなくて諦めていたパターン。数集め的になることが多い。

 

大体この辺りが、集められるメンバーの特徴です。このテンプレ以外のメンバーを集めつつ面白く描ければメンバー集めもありですが、そこで苦労するくらいならメンバー揃えて試合しながら同時進行で紹介して行った方がいいと思います。どうしてもメンバー集めだと1人にスポットがあたるので、冗長になること、試合が出来上ないことあたりが辛いです。スポーツ漫画だからスポーツしてるところ見たいですよね。

 

ジャンプ歴代スポーツ漫画でも、overtime、フィールドの狼FW陣、大好王、コスモスストライカー、キララなどメンバー集め漫画はありますが、一気に勢揃いするコスモスストライカーや大好王形式くらいが限界で、最初からでているモブスタメンが話の進行とともに次第にネームドに昇格していくライトウイングや、試合をしつつモブスタメンがネームドと交代していく埼玉レグルス、FW陣方式の方がが圧倒的に読みやすいです。

 

というわけでメンバー集めを選んだ時点で詰みだった感じはしますが、椿のキャラ立てや剣との掛け合いの面白さ、ぽんこつかりんちゃんの可愛さなどから一定のファンは獲得しました。

 

ダブル主人公かと思えたピッチャー龍堂のキャラが少し弱かったですが、バッテリー、主に投手主軸になりがちな野球漫画を、強豪を倒すための小豆田の分析力と内野手コンビの絡みで見せたのは面白かったと思います。ドカベンばりのインフィールドフライを宣言されなかった内野フライの処理に関するプレイで守備力、判断力に、説得力を持たせたり、高い自尊心の裏返しとしての心理描写を入れたりと、椿と剣に関してはかなり完成度が高く、掘り下げ方もうまかったです。求道の強打者として類型的な剣と比べて椿は特に、あまり見ないタイプの選手で、ウザくなりそうなラインギリギリを攻めつつ、絶妙に好感の持てるタイプに仕立て上げています。白鳳のエースと剣との対決で、皆が実力差を思い知らされているシーンで、1人いつも怒られている剣を信じるコメントを出したり、その後部員が意気消沈する中全員を鼓舞しようとしたり、要所要所で好感度を上げてくれます。

f:id:jiholeopardon:20210922142547j:image

 

単行本書き下ろしでは、本誌で実現しなかった白鳳との対決が描かれており、短めながら抑えるところは抑えた決着を見せてくれます。

小豆田の分析力、龍堂の素質と1話からつながる夢と覚悟、寅本、洞口、木戸の見せ場、椿のお調子者っぷりと高い身体能力、プライド、剣の雪辱を綺麗にまとめています。

 

正直近年のスポーツ物らしく今風の、キャラの見せ方にマイナスがなく好感が持てる書き方をされており、細かなキャラクターを掘り下げるシチュエーションや会話をはさみ、野球物としても興趣は得られる作品だったので非常に惜しかったと思います。突き抜けた外連味やキャラで見せるタイプではなかったですが、もう少しじっくり書かせてくれれば、及第点は取れたのではないでしょうか。

 

次回作に期待です。

 

番外編 ACE-001 1984年

ACE-001 全1巻 大西志信 1984

f:id:jiholeopardon:20210926225619j:image

 

今回は番外編。何件か問い合わせいただいたので、ミスターライオンの大西志信先生がフレッシュジャンプに掲載したSFアクション漫画について。

 

軍事企業で生物兵器開発に携わっていた世界的生物学者の母親が作った、人間に変わって最前線で戦う強靭な力と再生能力、変態能力、闘争心と破壊欲をもつ人造生物ACE001。母は完成したACE001を連れて企業を脱走し、娘に託して姿を消した。

f:id:jiholeopardon:20210926231142j:image

託された佐久間ヒフミは、ACE001を弟として育てる。姉を思い優しく育った英一=ACE001だが、軍事企業の追手が迫り、姉と自分を守る為、戦いに身を投じることになる。

 

親族に生物兵器を預けるなよとか、後ろ盾もない24歳の中学校の教師の娘に預けても軍事企業が速攻で奪い返しにくるだろとか細かい点は気になりますが、根本的には破壊と殺戮の本能を持つ生物兵器ACE001が優しい人間に育てられることで本能をおさえられるのか、殺戮兵器に成長してしまうのかという部分が話のキモ。

f:id:jiholeopardon:20210926234945j:image

普段は優しい英一だが、戦うことが引き金で、凶暴性や破壊本能が目覚めてしまうという永井豪先生が描きそうな設定。永井作品だと確実に殺戮兵器に目覚める展開ですが、こちらは愛と優しさで抑え込みます。

 

1話で闘争本能に目覚めた姿をさらし人間の姿に戻るも今後の不安を漂わせ、

f:id:jiholeopardon:20210926235035j:image

2話では英一にできたガールフレンドがサラ金のヤクザにレイプされ、復讐のために生物兵器に体を渡し化け物になるという重い展開。体を得た寄生生物ガルダをたおすため、自分ごと殺すよう英一に願うガールフレンド。

割と衝撃的な展開なんですけど、レイプされたヒロインが結構理性的かつ、主人公はヒロインがレイプされたことを知らないまま話が進むので衝撃度が薄いです。

f:id:jiholeopardon:20210927003123j:image

ガールフレンドごとガルダを殺す部分も、ガールフレンドの願いにまったく逡巡せずに一コマで殺します。そりゃないよ。ためらいなさすぎでしょ。

f:id:jiholeopardon:20210927003327j:image

 

題材は良かったんですが、作者の適性が衝撃的な作風にあってなかったかな…。あまり陰惨な話にしたくなかったんでしょうが、設定の割にほのぼの展開がはいり話が甘く、殺人に対する忌避や、兵器であって人間でない自分に対する掘り下げがほとんど描かれないです。

3話では軍事企業の社長の息子にして母の助手であった男が現れ、ヒフミに突然キスをして、求婚します。それをみて、対抗心を燃やす英一、ボディガードに立候補するヒフミを好きな学生たち。このあたり、学園ラブコメの展開なんですよね…。どうにもシリアスに振り切れない。

f:id:jiholeopardon:20210927005522j:image

f:id:jiholeopardon:20210927005524j:image

 

続く話でも、天才犬を助けるために軍事企業の工場に乗り込み、生物兵器を10体殺戮して工場をつぶしますが、企業に忠誠心を誓い敵に回ったとはいえお仲間を殺すのに葛藤とかないんか…。

 

最終的には、捕まった軍事企業の社長の息子の解放と引き換えにACE001のデータを消してもらえることとなり中米の独裁国家にのりこみ兵士たちと戦い、戦いの悲哀を感じて戦争に加味しないことを誓い、日常に戻って終わります。

 

同時期に連載していた、同じ生物兵器物であるバオー来訪者と比べても、初期の設定の割に日常色が強くなり、「自制できない破壊薬、殺戮本能」という部分がクローズアップされずに流されてしまったのが残念でした。