地元に悪名を響かせるヤクザの跡取りにして日本有数の財閥の隠し子軍平は、日本の中枢たる密教の寺、天下の深奥・霊平寺での荒行を終え、何を起こすのか?
本宮先生のよくやる、勢いですげえ男の生き様描くぜ!から失速したパターン。風呂敷を広げすぎたというか、軍平の人間的魅力が描ききられる前に終了。
男一匹ガキ大将で、番長から日本のトップに上り詰めていく少年の成長を描いた本宮ひろ志が、もっとスケールを大きく、無茶苦茶だが器がでかい漢を描こうとするのは、後々の作品でもよく見られますが、今作はその極北。
まず、出生からヤクザと財閥、表のトップと、歴史あるヤクザの愛娘の隠し子。枠に収まらない無茶苦茶ぶりをひたすらアピールした後、日本有数の密教の寺のトップに死に様を見せられる業を行い、とんでもなくスケールが大きい男が誕生したという進行。
1巻は無茶苦茶ぶりが描かれますが、無茶苦茶すぎて、感情移入できないです。
日本有数の財閥のただ1人の直系後継
古い時代から続くヤクザの後継でもあり
本人のあだ名はばくだん
崖から飛び降り
子供のような寝顔をみせる
政治家の娘だろうがやらせろと誘い
追い出されればガソリンと松明を抱えて殴り込む
スパルタ教育で矯正されようとすれば、
殴り倒して学校を燃やして、そこで大便をひりだす
とりあえず一巻通して無茶苦茶な事は伝わるんですけど人間的魅力には繋がらないので、なんだこの主人公という気分になります。
攫われてきた寺で、高僧の死んで自然に帰るのを見つめる1000日行。
2巻でこの修行が終わるところまで。修行により、訳がわからねえけど器だけがでかい男が人間的に魅力を兼ね備えるかと思いきや、そうでもない。
娑婆に戻ったら、対立ヤクザの葬式に機関銃を持って殴り込み。銃で打たれてもものともせず、放火。
日銀に銀行強盗に入り、金をばら撒きながら逃走。
これ、寺に行く前と変わってなくない?
日本を血で満たして、安穏としてる馬鹿どもの目を覚ましてやりたいという巨大な悪。ライバル江島。
本部にカチコミをかけて、最後はタイマン。
逮捕されるが網走刑務所を脱走して囚人全員で船を奪い、海外に逃走する。
でかい男をかこうと構想して、究極のシチュエーションを設定してみたものの、究極にでかい男っをどう描けば説得力があるか筆力が追いつかなかったというか、作者の想像力が追いつかなかった感があります。
頭の切れるキャラを描こうとしても、作者より頭のいいキャラクターを描く事はできないという話に近いと思います。
その為、終始無茶苦茶した主人公が、何をしたかったのか、どういう人物なのか非常にわかりにくく、感情移入もしづらくなっています。
単純に失敗なんですけど、まあこれも本宮節