セコンド 全1巻 井上泰樹 1988年
単行本デザインも写真に1コマ絵という異色デザイン
ジャンプ史上最も地味な漫画と名高い。ボクシングのトレーナー推定50後半のおっさんが主人公の超リアル路線ボクシング漫画。どれくらいリアルかというと初回が減量に失敗して負ける教え子の話。「11月の夜風は冷たい」こんな1話ある?
ジャストACEで、「俺の格闘技テニスを教えてやる!」とかやってた井上先生どうしちゃったんでしょう。リアル志向にしてもちょっと渋すぎると思います。
流石にこれがうけると編集が思ったとは思えないので、ボクシングがらみの企画ものの可能性が高いと思います。
と思ったらフォロワーさんから情報いただきまして、1988年はハワイ出身の名トレーナーエディ・タウンゼントが亡くなった年。井岡弘樹の世界タイトル戦に病院を抜け出してセコンドにつきその試合直後に 息を引き取るという劇的な出来事があって、その衝撃が呼んだ企画ではないでしょうかということでした。
2話以降も
真面目だけが取り柄の教え子がデビュー戦で熱くなりすぎて敗北する話
タイトル戦の話が来たと思ったらかませ犬として選ばれていた話
トーナメントで同門対決となり、弱い方を棄権にしたが、このチャンスにかけていた教え子がやる気を無くしてジムに来なくなる話
など、大松トレーナーの表情の変化が物語る、リアルすぎる大人の事情が読者をなんとも言えない気分にさせます。
流石に全話ではなく、共に世界の壁に阻まれ一度は挫折したボクサーが、再び世界に挑戦するために勝負する話など前向きな話もありはするんですが、少年にはちょっとにがすぎる物語だったと思います。
最後は明白楽エディタウンゼントのボクサーに対する愛を感じるエピソード。実名がまずいのか、エディさんも井岡も名前は出ませんが、上記の通り、追悼漫画として企画された物だと思います。