原色超人ペイントマン 1993年
原色超人PAINTMAN 全2巻 おおた文彦 1993年
打ち切り漫画によくある展開の見本市!
ちょっと凄いんで詳しく取り上げますが、概要は、6人の侵略者に滅ぼされた国の王子が対抗する唯一の武器である超人原色を託す相手を探して地球に。選ばれたのは気弱い教師一色だった。というお話。
まず、導入。勘違いから明らかに戦闘向きでない一色に力がたくされます。この、「適性がない主人公に何かをやらせる」のはそれだけで尺を取る割に、話として盛り上がらないリスクが高いです。背後霊物のオーバータイムやキックスメガミックス、先日紹介のブライなんかもそうですが説得パートとモチベーションパートが必要になるため本題までが長くなり、ジャンプの初動としては致命的になる事が多い。
やる気はあるが適性がないキャラに適性を渡すヒロアカとかウイングマン、死の淵で強制的に後戻りできないシチュエーションに落とし込まれる幽遊白書、武装錬金などの方が導入はスムーズで、キャラクターが自発的に動いてくれるようになります。向いてない故の葛藤でドラマ性を出す良作もありますが、ジャンプでドラマ性発揮するの待つと死ぬんですよね。
小学校にきたせいで大人が石化したと勘違いしたクィンにより、数少ない大人である一色が原色超人ペイントマンに選ばれてしまう。
主役が気弱なおっさんという点もジャンプでは厳しく、こち亀とルーキーズという特殊な例外を除けば、おっさん主人公はコブラや冴羽獠、たーちゃんの様なちょっと三枚目のタフガイ以外ほぼ絶望的。「最近コブラみたいな主役がいないっていうけどあの時代だってコブラだけだった」という名言があるくらい、レアです。
案の定、子供を守るというモチベーションで闘う事になるのですが、その為子供パートに尺を取り最初のバトルまでが遅くなります。基本能力や色を混ぜる事で発揮されるパワーアップという構想も構想だけで終わってしまいました…。肉ばりに怪人募集をしたのに1人も出せなかったお詫びが超切ないです。
色を混ぜて使う事で混色の能力を使う事も可能!ビルキンのビガーが、浮かぶわよね…。
怪人募集したけど出す前に終わってしまったというお詫び。こんな悲しいことある?
そして、バトル。6人の侵略者の1人との戦いを次の日に控え能力の把握すらしていない一色。今風なら最低限使える能力の検証をして罠をはる所ですが、この期に及んで闘うのを嫌がる一色の尻を王子が叩きます。「お前が戦わなければ子供達が死ぬ」と言われた一色のとった行動は、
腕立て伏せだーっ!
なんでだよ!即効性のない努力を前日にするな!もっと王子と話し合って能力をひきだしてくれ!
結局子供達を守る為に真の力を発揮した一色と王子で侵略者を倒すのですが、残りの侵略者は登場せずにおわります。四天王の初めの1人だけ倒して終わるパターン!
走馬灯様に1人しか出てこなかった敵幹部の漫画が頭をよぎります。逆パターンだとダイ大とかハーメルンみたいに幹部が足りなくなって、側近とか封印されたボスキャラとか欠番とか出てくるんですけど、存在をほのめかされただけで出てこない幹部達は打ち切り漫画の華の一つです。
魔神竜バリオン
五大元素と言いつつ風のゼピュロスだけ登場
デモンズプラン
悪魔の能力を持つ者の頂点に立つ十愚魔
主人公の親友にしてライバルカルロスが十愚魔になった事が最終回でつげられる。一応もう1人登場、もう1人最終回で正体が明かされます
11人のルーシーゼズゥ
1人しか登場せず、なんの謎も目的も解明されないまま最終回
ペイントマンでは勝利を納めた後もきっちり
「戦いはこれからやぞ!」
でしめてくれます。
完璧な打ち切り漫画ムーブ!
単行本には、全ての謎が明かされる書き下ろしが追加されています。2年後、全ての侵略者を撃退した一色。最終決戦との舞台は月!そこが奴らの基地。侵略者は洗脳されており、黒幕は超人原色を作った悪魔の科学者。超人原色は混色で更なる能力を発揮。全ては超人原色のテストの為の実験だった。
隠された設定山盛りぃ!
ハラァ…いっぱいだ。
ここまで盛り込んでくれたら満足です。