RASH!! 全2巻 北条司 1994年
事あるごとに問題をおおきくするトラブルメーカーの勇希は、拳法の達人にして腕のいい医者。面倒に巻き込まれながらも患者の治療を優先して行う。地元に帰って刑務医として役立とうとする勇希だったが、師である想い人でもある新田はヤクの売人を殺すなど、治療のためなら殺人も行う男だった。囚人となりながらも外界の事件を把握し、新たな「処置」を行おうとする新田を止めるため、勇希は自分なりの答えを示そうとする。
相変わらず美麗なキャラ絵は流石
破天荒女医という設定も悪くなかったと思います。本格医療物の方に進めばシティーハンター、キャッツアイとも違うジャンルで花開いた可能性はあったのですが…。
ハンニバルもどきのボス、師である新田をとめるサスペンスに発展して行きます。
社会の悪にどう対処するかに話は変わって行きます。一介の医者の仕事ではない。話が壮大すぎる、医療物で無くなったなど、話のブレと感情移入のしにくさが敗因だったと思います。
今でこそ医療漫画は隆盛を迎え、医療漫画50選なんてものがあるくらいですが、この頃はスーパードクターKくらい。ブラックジャックという金字塔があるにしろ、掘り起こされてない医療漫画分野という着眼点は良く、地味になりがちな医療ドラマを美人刑務医、トラブルメーカーの要素で少年誌向けに仕立てる努力は見て取れます。しかし、途中からハンニバルがモデルであろう、囚人であり師であり、恋慕の情を抱く殺人鬼を止めるサスペンスに路線変更してしまったのは失敗だったと言っていいでしょう。
前作で、自分のイメージが固定されることを嫌った北条先生は「美女とアクション」を封印して「こもれ陽の下で…」に挑み、今作で「美女と医療」に進むはずが、結局「美女とアクション」に戻ってしまいました。純粋に医療漫画に専念したところも見たいところでした。
作者自身が前作で好きにやらしてもらったので編集の意向に沿うようにしたのがブレた原因だったとコメントしていますが、医療ドラマと言いにくい作品になってしまいました。この後2000年に入ると、ゴッドハンド輝、ブラックジャックによろしく、医龍、Dr. 汞など医療漫画が大量に出現し、一ジャンルを形成していきます。
なんだか惜しかった感はありますが、打ち切り漫画らしい迷走とも言える作品です。