身海魚 全1巻 田中加奈子 1999年
体に入ったウイルスを倒す身海魚によって人類を滅亡させる未知のウイルスと戦う漫画。おしぃー!冒頭からどうしても「働く細胞」が浮かんでしまいますが、病気の妹を助けるために、ウイルスを倒す身海魚を使う医師・ローハンの元に来た諏訪大吉が、強盗に襲われ瀕死の状態から生き延びるために、身海魚・K-1号と合体します。
冒頭インフルエンザウイルスを倒す身海魚
改めてみると凄いニアピンなんですよね。
一つの体に二つの心。全良で妹思いの大吉と、自分勝手で傲慢なK-1号。肉体の主導権を握るK-1号だが、妹の寿を愛する心は残っていた。
悪魔の力を身につけたわけではない
妹の命を助けるために、心臓に巣食う未知のウイルス、ヘドロウイルスの万枯を倒そうとするK-1だが、万枯は想像を絶する力をもっていた。
ラスボスなんですけど、対決まで辿り着かない万枯
ラスボスの存在が明かされた後、学園編に突入。
ヘドロウイルスにのっとられ、異能を得た人間と戦います。ちょっと、こう来たかという展開で、ウイルスとの闘いというこの作品の特徴が、単なる変身人間との戦いになってしまったのは残念でした。
妹をゴールドスリープにかけ、万枯の目覚めを遅らせ、俺たちの戦いはこれからだエンド。
田中加奈子先生は皮肉さと絵の癖がウリだと思うんですけど、少年漫画に寄せようとして中途半端にマイルドな作劇になってしまったのかなという印象。三獣士もそうなんですけど、青年誌の方が合ってた気がします。
この辺りの皮肉や、気持ち悪いと受け止められそうな絵面を全面に押し出せる媒体の方が良かったのでは…。
田中加奈子先生は数少ない手塚賞の入選者なんですけど、手塚賞の入選をとっている漫画家が、「妖怪ハンター」諸星大二郎、「ヤマタイカ」星野之宣、「恐竜大紀行」岸大武郎、「スラムダンク」井上雄彦、「ワイルドハーフ」浅見裕子などとんがった面子が多く、ジャンプ向けじゃないが漫画力が高い作家という面が強いため、田中加奈子先生も持ち味を生かす方向に進んでいれば…と、考えてしまいます。
逆に準入選は、「ヒロアカ」堀越耕平、「タカマガハラ」川井十三、「ブラクロ」田畠裕基、「燃えるお兄さん」佐藤正、「コブラ」寺沢武一など、少年誌向けの作風の作家が多いです。まあ、母数が多くなるんで成功者の数は準入選経由の方が多くなるんですけど、明らかに入選者の方が尖ってますよね?