津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

邪馬台幻想記  1999年

邪馬台幻想記 全2巻 矢吹健太郎 1999年 

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矢吹先生のデビュー作、戦乱の続く倭の国を統一し平和な世を作るために壱与は高天の都を目指す。全ての国を滅すことを目論む陰陽連は壱与を暗殺しようとするが、陰陽連の暗殺者紫苑は壱与の理想に心をうたれ、力を貸すことになる。

 

心の武器・心具。方術。5つの鍵である刻印の心具、神威力(かむいのちから)、高天の都(たかまのみやこ)。中2ワード満載でその世代の心に響いたのか今でも人気のある打ち切り漫画。キレイな矢吹先生。

18歳で初連載という内容的にも初々しい作品。

 

設定を頑張って考えて、物語独自のワードを創作し、大目標を立てた上で、クエストをこなしていくと言う形態で、物語を作り始めたばかりと言う若々しさを感じさせます。おしむらくは、設定を面白く見せるためのストーリーの練り込みとキャラの掘り下げが足りなかったかなと言うところで、どこかで見たことのある設定、素直すぎてフックの少ない主人公・ヒロイン、国の興亡に関わる割に朴訥としすぎている兵隊たちが淡白な印象を与えました。キレるライバルキャラや師匠にしてボスのキャラもテンプレ的で、武器が同じ形態になるほどの因縁や、愛憎二分するようなキャラの掘り下げが欲しかったです。ある意味教科書的な作品で、外連味は少ないですが少年漫画の王道と言った作りになっています。

 

久保帯人先生ならキャラクターの外見と外連味、岸本斉史先生なら殺陣の面白さ、澤井啓夫先生ならギャグと勢い、稲垣理一郎先生なら理詰めの展開の面白さで作品の魅力をプラスするところですが、この頃の矢吹先生はサムシングエルスを付加できるほど練れていなかったため、2巻打ち切りで終了。

 

大目標 平和な世界

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中目標として高天の都を目指す→鍵となる5つの刻印の心具が必要

小目標 陰陽連によって消されていく高天の都の情報を集める→邪魔をする陰陽連とのバトル

という感じ。目標はあるので話はスムーズに動きます。キャラの魅力が欲しいところ。

 

作品独自ワード&中二設定

方術

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心の武器 心具
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心武衆

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5つの刻印の心具、高天の都、神威の力
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最終回で、覚醒して髪が解け、心具が真の力を取り戻して一つ目の刻印の心具が現れます。この辺りの展開まで含めて、ややテンプレくささが抜けきれませんでした。

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次作のブラックキャットでは特殊な武器を使う元暗殺者の主人公という似た設定でありながら、過去をサヤ(ヒロイン)とクリード(ラスボス)という重要キャラで掘り下げてキャラを確立させ、同時にラスボスが固執する存在ということでキャラの格も上げています。更に、バトルも「時の番人」と「星の使徒」と主人公の三つ巴バトルにすることで、バトルが似たような展開になることを防ぎ、単キャラの掛け合いや、組織の立ち位置の違いをみせることでエンターテイメント性を向上させています。主人公バトルは勝つことが決まっていることが多いので、バトル自体の見せ方が上手いか、お約束で楽しめるシチュエーションじゃない限り多用は禁物。第三勢力による、誰が勝つかわからないバトルを組み込むことは、話を盛り上げる上で重要です。時の番人の武器が各人異なる事で、どんな武器が出るかという期待感や、イロモノ武器によるバトルの面白さも出すことができました。それに加えて、ヒロインキャラとして「イヴ」という強力なフックのあるキャラを想像して、話を引っ張るという大幅な作劇の向上を見せました。

 前回の課題を全てクリアして初めて「改良」という!いや、このフィードバックすごいと思います。

 

揶揄されることも多い矢吹先生ですが、ブラックキャット、TOLOVEるとジャンプで二作ヒットを飛ばした天才であり、あやかしトライアングルの成功によっては夢の3ヒットを狙える稀有な漫画家です。

 

余談ですが、あやとらの巫女は壱与のリメイクキャラのようですがムチムチ感が全然違います。あやとらは全体的にふとましいよね?

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