鴉マン 全2巻 かずはじめ 2001年
スラムの強盗団リーダージュウトは、政府直属の極秘機関シュレックに捕まり、常人離れした身体能力を見込まれ、命と引きかえに執行官フェンサーとして働く事を命じられる。はじめは嫌々働くジュウトだが、犯罪組織黒焔竜団が自分の家族の仇とわかり次第に本気になっていく。
才能を認められて、フェンサーの命と引き換えに命を助けられ、後事をたくされるジュウト。
重めのスタートの割に、ヤンチャな主人公を描きたいという方針のためか、フェンサーの生死自体が明かされず、開幕のいいシーンの意味が薄くなってしまいます。
ストレートな直情系主人公のヒーロー物。同じく黒焔竜に利用されるヒロイン、同じ体質を持つ様調整されて生まれた「変種」の相棒とライバルとアウトラインは少年漫画してるんですけど、ちょっとストレートすぎたかしらね。
ワガママ主人公少年。
同じ匂いを感じる。黒焔竜に利用されるために育てられたヒロイン・リリ
道具として育てられた、ジュウトと同じアークウイルス変種・刃
かず先生どうも、わがままで強くて喧嘩っ早くてバカだけど真のところでは正義感がある男キャラが好きなんですけど明稜帝の成功体験からなのか、女子ってこういうキャラ好きだよねからなのか…。マインドアサシンも評判は悪くなかったのでその路線でも良かった気はします。実際ラックスティーラーはそこそこな成功を納めます。
今作では、性格そのままに少年主人公にして、その特性をいかそうとしたため、冒頭の悲劇が軽くなり、フェンサーとして本気を出すまでも時間がかかります。本気を出してからも、明稜帝で見せた様な、馬鹿の様に見えて思慮深いところがあるとか、妙なカリスマ性はないため、前作主人公の劣化版のようなキャラ造形になってしまいました。流石に厳しい。
ストーリー展開も、騙されているヒロインのために本気で怒り黒焔竜をやっつける。
騙されているライバルのために本気で怒り、黒焔竜をやっつける。
と、同一の展開が続き、人を人と思わない組織相手だからこその苦味や悲しみが強調されるわけでなし、単純形主人公だからこその、難しいことはわかんねえけどこいつらにゃ腹が立つぜ!というスカッと展開もありません。
結局のところ変身ヒーローなのですが、どこかでみた展開を覆しきれなかったのは残念でした。かず先生の繊細な感性を生かした話には向かなかった様に思います。