サクラテツ対話篇 2002年
賛否分かれるフジリュー節全開のドタバタコメディ。駅前の一等地のボロ屋に住む桜テツは多額の税金を払う為に厳しいバイト生活を送っていた。
ある時、テツの家に未来人、宇宙海賊、地底人が現れ侵略を始める。そこから毎日のようにサクラテツの家は侵略者が押し寄せるのだった。
登場キャラのバリエーションからハルヒとの比較がよくされているが、ハルヒより先に掲載されている。
「うる星やつら」や、「天地無用」のような、なんでもありの世界で主人公に押し寄せるトラブルを描いたドタバタコメディの極北。美麗なキャラや、面白設定を全く掘り下げず、ラブコメ展開やシリアスバトルに移行することもなく、「サクラテツへの侵略者」と言う部分だけを抽出した侵略勢力と、同一シチュエーションで繰り返される侵略劇が特徴。
正体すら不明の主人公と、主人公の正体を未知のものとする為に配置された母と見せかけた地縛霊、弟と見せかけた座敷童子など、ストーリーよりも、繰り返しをみせる舞台装置を重視した様な設定。
テツ家に攻めてくる多彩な勢力。
未来の地球女王
宇宙海賊ファイアアーベント
地底世界の皇帝ジークムント
魔界王子ニーチェ
尻の穴の神ショーベンハウワー
日本国大統領デューイ
漫画の妖精に呼ばれし召喚者・読者
この他にもニーチェのペット魔界ラッコのゾロアスターや鏡の国の住人や夢の創造者など、毎週何かしらの侵略者がやってくる。
さらに、大富豪の娘であり、テツのストーカー富良兎、その兄で「全てに愛される男」紀世能も話を混乱させる。
主人公サクラテツとヒロイン富良兎は流石に内面描写がありますが、それ以外のキャラはほぼ内面の掘り下げがなく、この手の「突然やってきた未知の⚪︎⚪︎人」というシチュエーションに対して、出来るだけ多くのバリエーションを提示するというチャレンジをやっている様な形態で、この手の展開をやる後続作品に新規性を与えないくらい思いつく限りのキャラを出しています。得意のメタ展開も使用して、漫画の神や読者が敵という賛否を呼んだ後半の展開が記憶に残っている方も多いかもしれません。
いずれにせよ実験的すぎて長く続くとは本人も思ってなかったでしょうし、読者の多くがそう受け止めていた作品でした。
作者自身もコミックでジャンプ向けでなかったことは明言しています。
ジャンプの連載枠を1つ捨てて、よくやったなあと思いますし、その分インパクトはあった様で、言の葉に登る打ち切り作品でもあります。