津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

AON 2002年

A・O・N 全2巻 道元宗紀 2002年

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打ち切り漫画家四天王の1人、道元先生の最終作。怪我をしたマスクマンアオンの身代わりになったギュンは、会社の思惑を振り切って、世の中を面白くするためにプロレス対決企画を行なっていく。

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いきなりヘイトを煽る主人公

プロレス漫画の主人公がこれは…

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人気レスラーアオンを罠にはめて成り代わり、日本中のレスラーと対決して打倒することをテレビで誓うギュン。キックスタイルのジュニアヘビー級チャンピオン、ビルの屋上に渡したリングで対戦を申し込んでくるインディーズレスラー。ギュンはまっすぐにうけて立ち、最強を証明していく。

というストーリーなんですが、どう見てもバトルの駆け引きや面白さよりも、チャンピオンになって落ち着いてしまったレスラーの心に火をつけたり、インディーズで燻ってるレスラーに本当にやりたいことは何かと問いかけたりと、どう生きるべきかという作者の主張の披露がメインになっています。

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とにかく、最後の連載チャンスなので自分の好きに描いて、言いたい事を言ってしまおうという作者の思いが溢れすぎて、本来のストーリーを阻害している感すらある青年の主張漫画。

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道元先生の立場を考えると胸に迫るものがあるセリフが並びますが、主人公のバックグラウンドが示されず、どんなキャラなのか、何故強いのか、なんのためにこれを行なっているのかが描かれないまま主張だけが叫ばれるため、率直に言ってエンタメに消化しきれていない作者の言葉がダイレクトに並ぶ痛々しい作品になっています。

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実写版キャシャーンを見たときのような気分…。(実写版キャシャーンは原作キャシャーンのストーリーほぼ無視で進行して、後半30分くらいずっと「なぜ人は争うんだ」「なぜ戦いは無くならないんだ」という監督の懊悩を見せつけられる映画です。多少偏見あり)

 

当然のように10週打ち切りと、当時としてもかなり早い打ち切りをくらって最後のチャンスは終わります。2008年より和月先生のアシスタントに加入して、漫画家としては引退したとのこと。

 

アオンのコメントをみると、工事現場とアシスタントの二重生活で、ギリギリの極貧生活を送り、ふりかけをかけたパスタで食い繋いでやっと掴んだ連載が9週打ち切りをくらい(奴の名はMaria)、借金だけが残ったという報告をしており、漫画家の厳しさを伝えてくれます。

9週でもアシを雇って仕上げていくと、300-350万は経費がかかるということで、大好王、AONと打ち切りをくらった道元先生が大丈夫かが心配になります。

 

それでも胸の中の情熱に動かされて、描いていたんでしょうね…。

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