津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

打ち切り漫画あるあるの話 前半 構成編

今回は趣向を変えて打ち切り漫画で良くある展開について。

 

このブログを書く上で頻出する展開にどんなものがあるかについてふれていこうとおもいます。

やったらダメということはなくデメリットを上回る魅力的な描写ができれば許容されるのですが、ほとんどの場合それができないのでデメリットだけを与えてしまう。そんな展開。

 

 

① 主人公、ヒロインがヘイトを受ける言動をする

 

キャラクターを魅力的に描くという前提があれば、まず通らないはずのルートですが、落として上げる手法のために主人公が見栄をはって嘘をついたり、出来もしないのにビッグマウスを叩いたり、小悪党だったけど改心したというたぐいの展開。アンチヒーローやダークヒーローだとこの限りではないですが、序盤のスタートが重要で、リカバリーまでの時間にリミットがあるジャンプでは、下がった好感度を戻すまでに連載が終わってしまうというリスクがあります。

 単に悪行というよりは、人間的に嫌なやつの方が嫌われる率があがるため、犯罪はオッケーだけど、軽口はダメだったりと線引きは難しいところではあります。

 

大きな失敗例としては、「タイムパラドックスゴーストライター」の盗作や「ゴーレムハーツ」の人に迷惑をかけてる主人公のゴーレム対してきた苦情に対して、作成者が謝りもせずに愛情を込めてつくったゴーレムに酷いことを言うなと言い返すシーン、「闇神コウ」のヒロインのフォローのない守銭奴っぷりや「サラブレッドと呼ばないで」の何の実績もなく練習もしてない主人公のビッグマウス、エロくて単細胞の不良にしか見えない「風天組」などがあります。

 

微妙なラインなのが、半分ギャグだけど全裸で試合するかっこ悪さを見せた「大好王」、大口は叩くがカッコ悪さとリカバリー自体を主題にしてる「チェンジUP」あたりやビッグマウスの割りに苦戦する「スモーキーB.B.」。「純情パイン」や「少年エスパーねじめ」の下ネタなんかも。

 

嘘というか勘違いであれば「ホイッスル」何かの成功例もありますので匙加減は難しいところですが、時代が新しくなるにつれて線引きが厳しくなっている感はあります。ヤンキーに対する憧れや格好良さを感じることが少なくなって、ヤンキー物自体が少なくなってるのなんかが顕著ですね。

 

松井優征先生いうところの防御力を上げるために不快な言動は避けましょうというところです。

 

成功するキャラ作りとしては魅力的なキャラを作るに尽きるんですけど、こちらはセンスに大きく左右されるため言語化が難しいです。よく言われるのは、何に対して最大の怒りを表すのかとか、どんなシチュエーションでどういう反応をするのかを統一するとか、後は第三者に見てもらうことでしょうか。快不快って個人だと己の基準があるので、万人に擦り合わされてるのかわかりにくいんですよね。この辺は編集の仕事でもあると思います。

まあ、こんなん明確に言語化できたら、僕がジャンプで連載してるわーい。

 

 

② 2-3話から長いエピソードの展開に入る

 

だいたい1話に関しては、世界観の説明、主人公のキャラクター、能力の開示、主人公の目的の提示、可能ならばヒロインの紹介あたりが行われます。2話以降は、まだ、キャラの固まっていない主人公の掘り下げや能力の幅の提示、弱点の開示をしながら脇キャラを増やしていくのが王道ですが、ここで長いエピソード、ライバルが登場して、そいつに事情があって、一時対決するかが共闘して仲間になって、そいつの事情を解決してなどとやっているとそれだけで7-8話かかります。よほど魅力的なキャラでない限り、序盤でこれをやるのはギャンブルです。

エピソードのメインとなるキャラが不人気だと、不人気展開を延々とやるハメになってしまうので、序盤は細かいエピソードを重ねながらキャラを掘り下げ、話の幅を広げる脇キャラを増やして、方向性を模索いくのが肝要かと思います。

 

このパターンで失敗したのが、「サンタ」「サソリ」、逆に細かなエピソードを積み重ねたのが「チェーンソーマン」「ヒロアカ」などです。

 

チェーンソーマンなんかは王道に外れているように見えて、1話でデンジとポチタ登場、2話でデンジを掘り下げつつマキマの紹介、3話アキが登場、4話でパワー登場、5話から7話でコンビを組んで悪魔退治と、堅実な展開を行っています。

 

 

③本題に入るのが遅い

 

②に近いんですが、本題そのもののエピソードが長い②に対して、大目的まで辿り着かない展開の漫画。まあ、メンバー集めをする部活ものとスポーツをやり出すまでに時間がかかる背後霊物が代表格で、「オーバータイム」、「キックスメガミックス」、「スモーキーB.B.」、「メタルフィニッシュ」、試合がラスト2話という「バディストライク」「ハンズ」「メリーウインド」あたりが該当します。若者の懊悩を描こうとして、主人公がウダウダ悩んでいる回が延々と続くという意味では、「チェンジUP」や「アイアムアフェイカー」、「ダイヤモンド」あたりも。

 

展開が早いことがいいとは限りませんが、スポーツ物でスポーツしないのはやっぱり魅力が半減という点はあると思います。あと、スポーツをするかしないかレベルの悩みを長々みせられたくないというのも。

反対の成功例としては超速展開の「アンデッドアンラック」、いきなりクライマックスに近い「デスノート」などが挙げられます。冒頭からテンションマックスは、やっぱり面白い。

 

キャラクターに関しても同様で、雑にエピソードを構成していると、何もしていないヒロインや、かっこいいのに最終話で出てくるラスボスや四天王が頻出してきます。外連味のあるキャラはファンがつく可能性も高いので、序盤で顔見せだけでもしておいたり、能力の片鱗を見せておくと、目標も分かりやすくなりますし、どいつをクローズアップするかも作劇しやすくなるかと思われます。

 

 

④流石に誌面と内容が合っていない

 

ジャンプ向きかどうかというのはかなり大きなポイントで、どこかで言及しましたが、「よふかしのうた」や「だがしかし」は面白いですがジャンプで成功したかと言われると難しいと思います。名作なんですけど「H2」とか「パトレイバー」なんかもそうですね。

 

アンケート至上主義である程度軌道にのる4-5巻前に打ち切られてしまうことが多いジャンプでは、はなからメインターゲットが読まない話は失敗が多いです。編集もそれを見越しつつ、誌面に合わないが載せたいもの、載せるべきものを企画物として出していると思います。

この分野は企画物かわかりにくいのですが、確実に短期集中連載などの企画ものなのが「元気やでっ」、「セコンド」、「Fの閃光」、「GP BOY」、「コスモスエンド」、企画ものでないかと思われるのが「東京犯罪物語」、「破砕帯をぬけ」、「不可思議堂奇譚」、「なすび先生」、「力人伝説」、企画物ではないが明らかにジャンプ向けでないのが「恐竜大紀行」、「てんぎゃん」、「海人ゴンズイ」、「やぶれかぶれ」「ミスターライオン」「JUN」あたりです。まあ、何が当たるかはわからないんですけど、トレンディドラマ系は受けませんでしたね。

 

⑤セルフコピー

 

主に大御所御用達になりますが、ヒット作の次作で、概要の極めて近い物語を紡ぐ形式のやつ。まあ一度見た物語なんでよほど趣向を凝らさないと飽きますよね…。

 

代表は何といっても「聖闘士星矢」の後に鎧物を続けた「サイレントナイト翔」で、聖衣→シェルター、小宇宙→フィール、星座→ルーツとほぼ置き換えが可能でしたが、超人プロレスの後に妖怪にプロレスをやらせた「幽霊小僧がやってきた」や、ウイングマンの後に特撮変身ヒーロー&お色気路線を続けた「超機動員ヴァンダー」、「メカドック」の後にバイク車物を続けた「スーパーパトロール」「ロードランナー」、「BOY」の後の「LIVE」など結構多いです。判断がやや難しいのが高橋よしひろ先生で、「銀牙」の後に犬バトル物の「甲冑の戦士雅武」なのですが、そもそも「白い戦士ヤマト」「ウィード」「白蓮のファング」「少年と犬」など、犬漫画の巨匠なので、同じジャンルと言えるのかどうか…。現代で漢たちを集めて熊を倒す銀牙と、歴史物で信長とか秀吉とか出てきて忍犬が超能力使って戦う雅武となると、ウルトラレッドとソワカくらいジャンルが違う気もします。

 

ここで割と困るのがギャグ漫画家で、「奇面組」からの「したたかくん」、「燃えるお兄さん」からの「タータベア」、「ボーボボ」からの「チャゲチャ」、「マサルさん」からの「ジャガー」、「いぬまるだし」からの「リコピン」などギャグ漫画は作風を変えるのが困難です。「磯兵衛」から「高校生家族」や「柿之介」から「ボンボン坂」など大幅な路線変更に成功した作家も稀にいますが、ギャグ漫画家の長期生存が難しい理由がよくわかります。

 

⑥作者の情感が伝えきれてない

 

これだいぶ感覚的な話なんですけど、「夢」の話みたいな物で、夢を見てる人は臨場感を得て五感で夢を体感してるのでメチャクチャ面白いんですけど、言語化すると臨場感が伝わらないので他人の夢の話を聞いても全然面白くない。というのに近いと思います。

 

読んでるだけではわからないのですが、どうも作者が超面白え!って描いているシチュエーションが受け手にとってはそうでもないというすれ違いが出ている作品がちょこちょこあります。もちろんnot for meというだけかもしれないのですが…。作者だけが没入している世界に読者が入り込めてないというか。

 

キユ先生の「ロケットで突き抜けろ」、道元むねのり先生の「AON」、柳川ヨシヒロ先生の「VICE」、木村勇治先生の「U19」あたりの作者の主張の強い作品はそれを感じます。山根和俊先生の「ジャスティス」、加持君也先生の「闇神コウ」なんかも自分の美意識で突っ走った感が強いです。最近だと「僕らの血盟」なんかもそうかな。

 

読者が読み取れるラインまで丁寧な描写を心がけろというのは一つの解答なんですが、究極のところ作者が一番面白いと思うことが万人受けするのかみたいな話になってくるので難しいところです。「自分が面白いと思わなくて漫画が描けるかよ!」は当然あると思うし、「受けるために趣味的な描写は控えて今のニーズとか隙間を狙う」もあると思います。

バクマンでいうと考察タイプのサイシューコンビは乗り越えられる壁だけど、ひらめきタイプは引っかかる感じです。天才でない新妻エイジ。そして世界に天才はそんなに溢れていない。

 

 

ということで前半はここでおしまい、主に②、③がメインですが上記で打ち切り漫画の6割くらいは理由が説明できると思います。

後半は残り4割のの打ち切られ方について。

そのうち書きます。