津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

ダブルアーツ  2008年

ダブルアーツ 全3巻 古味直志 2008年 

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体が消える奇病トロイが蔓延する世界。トロイの毒素を吸い己の中に蓄積する事で治療するシスターエルーは、触れる事でトロイの進行を止められる少年キリに出会う。許容量を超えてトロイを発病したエルーを助け、世界を救う為、2人はずっと手繋いだ状態で旅をすることになる。

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その日、少年は少女と出会った。からはじまって、トロイで命の危機に会いながらキリと手を繋げば生きていけることがわかり、それどころか、その力を解明できれば世界が救えるかもしれないということで、教会本部まで24時間手を繋いだままで旅をすることになります。主人公2人の性格もよく、思いやりの心や責任感も、こまかいエピソードで描写されます。新人にしては恐ろしいほどキャラの掘り下げが上手いんですよね。もちろんのトイレやお風呂や寝室の問題でドキドキしたりもあります。これも初々しくてニヤニヤしちゃうんですよ!悪役以外は主人公周りに性格のいい人しかいない、たがら読み口も気持ちいい、でも各自事情があったり、トロイを治すシスターをやる上で思うことがあったりで画一的にならないキャラクターが脇を固めて物語が作られています。防御力激高いです。

 

1話から情報量が多く、世界に蔓延するトロイによって大量の死者が出ておりシスターにしか治療ができないこと。シスターは毒素を吸収するとこで治療をするためリミットを超える発病して死亡すること。それでも人々を助けるためにヒロイン・エルーはシスターをやっていること。リミットを超えてエルーが発病したところにキリと出会い、トロイを発病しない人間を発見したことで、トロイの対策が見つかるかもしれないこと。シスターを狩る暗殺者集団がいること。トロイ対策のために教会本部に暗殺者と戦うことも想定しつつ旅をしなければならないこと。その間手を繋ぎっぱなしでないとエルーが死んでしまうため、24時間手を繋いだ状態で旅をすること。エルーがせっかく助かった命を囮としてうしなっても仕方ないくらいにトロイのない世界を作りたいこと。キリが泣いてる女の子を見捨てられない正義感の強い少年であること。2人ともが体術もある程度こなすことが、1話に詰め込まれています。でも全然文字情報メインじゃない!読みやすい!凄い完成度高い1話!

 

シスターの説明から

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ヒロインが短命である事の告白

(でも治療をやめはしないという意思の現れでもあるわけです)
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発病するエルー

覚悟はしてたけど、やりたい事もやらなきゃいけないこともあったと、一度死の直前に置かれた事で死にたくないという本音が垣間見えます。ここで鐘が鳴る場面を合わせる事で、命のリミットを感じさせる演出。上手いです。
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少年は少女と出会った。たまらないシーン。
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シスターを狙う暗殺者ガゼルから逃げる2人、シリアスなシーンでもちょこちょこ雰囲気を崩さない程度のコメディパートがあります。

手を繋いで生活の部分にラブコメ要素が確実に入ってくるので、シリアスオンリーにはしない匙加減。
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一度死に直面して、死にたくないと思い知ったエルーがそれでも囮としてキリを助けようとするシーン。キリの存在の重要性が際立ちます。
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エルーを助けるキリからの申し出。

これぞ少年漫画主人公!
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勝負の2話は、ラブコメパートをやりつつヒロインの内面掘り下げ。1話で健気で真面目でひたむきな頑張り屋さんという描写をされているのに更にここで掘り下げます。

 

寝る時もお風呂もトイレも一緒!

この話のキモですね。

落ち込んだ後のエルーの「キリさんにこの状況の女の子の気持ちはわかりませんよ」が可愛い

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キリの自宅で歓迎されてとりあえず関門の一つお風呂。ちょっとラブコメ臭を出しつつ、エルーの過去と、わずかな、でも確実にあるトラウマが顔を出します。

そんな目に合いながらシスターやってたの?

考えればありそうなシチュエーションなんですけど、ここでこの描写をぶちこんでくるかぁということで、ますますけなげなエルーがたまらなくヒロイン。

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歓迎会の前に、自分から長居しない事とその理由を告げるエルー。

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それに対するキリの言葉がもう毎度王道少年漫画なんですよね。

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これでヒロインのこと嫌いになるやつおらんやろ!ということですニセコイの人気投票で、登場してないにも関わらず10位にランクインします。みんなダブルアーツ大好きよね。

 

3話から5話にかけては、新たな暗殺者が登場してバトルパート。旅の仲間にして2人目のヒロインの登場、キリの力の説明が行われます。

戦闘狂のヒロイン・スイ

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治癒能力と力を倍加する能力フレア

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暗殺者を数人撃退したところで、敵の幹部登場。気持ちだけではどうにもできない現実をキリに付きつけます。

このパートだけでも、敵の幹部の強さ、シスター達の生き方の悲しさ、キリの重要性(主人公のオンリーワン性)、強くなるモチベーション、キリの能力の謎と複数の意味が込められたパートです。1話といいなんつーか、情報量が多いのに読み手側にそれを感じさせない上手さがあるんですよね。

 

温かい手にふれるだけの事が、どれほど大きいことか。キリが責任を感じていくシーン。

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11人のガゼル、幹部登場

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圧倒的な強さを見せつけて、謎の目的を示唆します
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自分達を犠牲に逃げろという1話を彷彿させるシーン
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ただし今回は自分達の力ではどうにもならない

無力感に打ちのめされるキリ
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ここから強くなるために手を繋いだまま戦う方法を模索します。

 

バトル物としても、素の能力で敵を倒す→幹部クラスに全く歯が立たない→特訓→専用の武芸の習得と堅実に強くなるところを描いています。この世でお前たちしか使えない武術"ダブルアーツ"って設定も燃えますね!

 

武芸の達人だが事情があって人のためには戦えないファラン・デンゼルと出会い、戦い方を教えてもらうよう頼みます。

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オリジナル武術ダブルアーツを作り上げる。

タイトル回収!
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細かいのは手を繋ぐというか、体に触りながら戦うことになるために露出を考えた服を作る回まであるんですね。

ダブルアーツの正装をしたエルー。
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更にシスター掘り下げ回では、シスターの仕事に集中するために好きな絵を描くことを辞めたハイネが発病して、エルーに治してもらい、新たに絵を描くモチーフを決めるんですけどこれがタイトルロゴ。

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これが一巻からのタイトルロゴ

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古味先生ほんと思い入れて、準備してたんだというのが伝わってきます。

 

2人で戦うダブルアーツが一応の形をなし、旅を続けるところで話は終わってしまいますが、最終話は2人の思いを示して終わります。ニヨニヨするぞー。

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単行本には全てが終わった後と思われるオマケがついており、これがまたエモいです。

今までとは違う意味をのせた、その光景。

 

ジャンプには少ない王道ボーイミーツガールにして惜しまれる名作。津尾さんも打ち切り漫画で1.2を争うほど好きなので、今回はテンション高めでお送りしています!気持ちいいキャラ、にやけるシチュ、ワクワク感満載でとてもおすすめ。

 

作者自身も小学校の頃から連載用に構想を練っており、単行本売上も上々、打ち切り漫画では唯一かもしれない連載開始以外で表紙も飾り、期待されていたと思うんでなんで打ち切られたのかさっぱりわからないんですよね。また、次週から始まったのが「チャゲチャ」で、8週で終わりましたから、ますますなんで終わらせたんだよと思ってしまいます。続いて欲しかったジャンプ打ち切り漫画の常連であり、ゾンビパウダー、みえるひとあたりと並んで今でも人気のある打ち切り漫画です。

一応アンケートがいまいち振るわなかった可能性はあります。そのあたりはここで触れています。

 

ジャンプ打ち切り漫画あるあるの話 大人の事情編https://utikirimanga.hatenadiary.com/entry/2021/06/17/114813

 

打ち切り漫画で表紙を飾るのは超珍しいので期待されてたと思うんですよね…。

連載開始の表紙

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13話2巻半ばで表紙。

ここから3巻で終わるとか思う?

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構想を練っており、評判も良かったせいか、広げた風呂敷が畳めなくなってしまい数々の謎が残されています。4つの種族ナギンとベイガー以外に何がいるのか、フレアとはなんなのか、キリはなぜそんな能力を持っているのか、11人のガゼル、ガゼルの目的、11人が集まった墓はなんなのか、トロイとはなんなのか、見ただけどトロイとわかる能力、人に力を貸すことができないファランの呪いのような物。

 

この辺り全部謎のまま…

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謎の解明より2人の心情を中心に話をまとめたため、謎は残りましたが、話としては綺麗にまとまっているのも名作と呼ばれる由縁です。

とりあえず一回読んで欲しい。

 

ジャンプではボーイミーツガールが受けにくいと言われており、思いつくところで、ウイングマン武装錬金、M0あたり、ダイはガールが主軸じゃないですし、アンデラはボーイというかガイなので除外。
ボーイミーツガール好きには寂しいところにドストライクだったんですけどねえ。

 

この後ニセコイでブレイクした古味先生はニセコイ終了後は沈黙しています。どっかで続き書いて欲しいなあ。