津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

ステルス交境曲 2014年

ステルス交境曲 全3巻 作画 天野洋一 原作 成田良悟 2014年 

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英雄「マイムロンド」がドラゴンを月に追い払ってから100年。様々な種族が暮らすようになった街にあるV&V綜合警備保障、そこには特殊能力を持つ社員が務めていた。透明人間藪雨トロマは夢も目標もなく、自分の中身を探す為依頼を受ける。デュラララ‼︎の成田良悟原作のファンタジー

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ジャンプではかなり珍しい作りの作品で、小説1冊分をコミック全3巻で漫画化したような形態。
原作がキャラと状況が複雑に絡み合うような内容の為、1・2話の導入回以外は途切れずに話が進んでいく事から、一気に読まないと話が分かりにくい、途中から入りにくいという難点がありました。

 

入り乱れるキャラクターや、二つ名持ちの特殊能力者、丁寧語で目的のない最強種主人公など、ジャンプというよりはラノベ傾向が強かったです。話自体は面白いんで、月刊でじっくりやれればという印象。週間でアンケは厳しかったのではないでしょうか。

 

複数の勢力が入り乱れ、二つ名持ちの特殊能力者が戦うというラノベ展開は小説なら良かったんですが、週間のボリュームだといささかわかりにくかったと思います。

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初回から警備会社のランカー勢揃い。次々と登場する暗殺ギルドやサイボーグの集う機兵学舎、オーパーツ・竜の遺産、最強の竜・黒竜、魔術師の呪いと息を吐かせぬ展開で進行し、無駄な回がないところは流石の成田先生。天野先生のややクセのあった絵柄も、かなり洗練されています。

 

しかし、世界とキャラクターの紹介的な1話から全てつながっており、主要人物が立場を変えて戦ったり、主人公格の少年の過去が捏造されていたり、第3、第4勢力が出てきたりと週間で把握するのはちょっと大変だったのではないかと思います。単行本1話となる序幕の開催がジャンプVS掲載、2話が本誌掲載という形態も把握しづらさに拍車をかけます。そもそも、序幕の主人公と、2話からの視点となるキャラが違うんですよね。群像劇なんでありといえばありなんですが、まあわかりにくくなったのは否めない…。

 

序幕。掲載はジャンプVS。

主人公藪雨トロマの登場。視点人物は依頼人であり、後に同僚となる女の子。

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女の子視点で、世界観、トロマのキャラクター紹介、どんでん返し、ラノベっぽい言葉遊び、ランカー勢揃いと進む完成度の高い1話。

ただこれ、ジャンプに掲載されてないんでトロマとヒロインの立ち位置が連載版だとわからないんですよね…。

 

トロマの立ち位置

透明で見た目が見えないからこそ中身を大事にするマニュアル人間。この辺り主人公ぽくない造形です。

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ラノベ的掛け合いとトロマの正体
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メンバー勢揃い

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話自体はまとまっています。トロマのキャラが少し弱いですが、連載版で掘り下げるなら許容範囲。特性としては最強種である透明な竜で自分を探す(現在)はマニュアル人間と、最強主人公バトル以外での弱点ありというバランサのキャラになっています。

 

しかし、連載版からはジグくんという呪いをときに街にやってきた新たな視点キャラを中心に話が進行します。これがかなり痛かった感があります。自分の呪いを解きにきたジグは、V&V警備に相談して、トロマたちのサポートもあり呪いではなく「竜の遺産」という奇跡を起こすアイテムによるものという事、優しくしてくれた院長が金儲けのために自分を利用していたことを知ります。真実を知ったジグ遺産を取り外す事を目的に働くことにします。

 

仕事を探すジグは機兵学舎というサイボーグたちの学舎で仕事を見つけるが、敵対するのは自分を助けてくれたトロマ達V&V警備の面々だった。

 

目隠れサイボーグ巨乳猫耳ヒロイン・ライカ

ダークエルフのボンデージメガネ女署長ヴェロニアと並んで業を感じるキャラクターデザインです。

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竜巻の巨人

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レーザーを曲げる忍者

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設定上強さを競うような話にはしないということで、めいいっぱいインフレしたバトル

 

己の立ち位置を確立していくジグ

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名前だけならセーフなのか!?土下座衞門

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前回から敵味方が逆転という構図。ジグくんは無力ながらもヒロインや周りの理解を得て成長していくかという趣なのですが、更にどんでん返しが待っています。

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呪いではなく竜の遺産、ですらなく、ジグの翼は竜の卵。ジグ自身が竜だった。

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100年前に月に追い払われた竜達の長、黒龍のバックアップ

 

竜達は異世界からの来訪者であり、魔術が衰退した本来の故郷地球へ帰還しようとしている。そのために必要なのが黒龍の遺産である箱舟。

箱舟が起動すれば街が吹き飛ぶ。怒涛の設定開示。

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立場が入れ替わり、設定が秘匿されたこの物語のもう一つのネックが主人公。時々語られていた、情を交えず依頼を守るというルールを遵守する姿が、人間を見ていないということが言及されます。これ、主人公に感情移入できないんですよね。

 

一応この事件を契機に変わっていくという予定だったのらしいですが、スタートエピソードに3巻は長すぎました。

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黒龍とジグの件にケリを竜が帰還してくるところで話は終了します。

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結末はなかなか衝撃的ながらも、きちんと話の区切りはついており。わかりにくかった諸々の設定も開示されていきますが、やっぱり続けて読まないとかなり厳しいと思います。作中の謎の秘匿と開示の様式がミステリに近いせいで、単回で評価しにくいんですよね。

 

アリスやライカやヴェロニアのヒロインズは可愛かったので、トロマが感情移入できるカッコいい主人公なら押し切れたかもしれないのですが、トロマが心がないに近い主人公、視点キャラのジグが心を失っていく主人公なので、読者視点で読む上で、読みにくくなってしまいました。

 

美麗なそれぞれの立ち位置のキャラクターや、暗めの設定の多層構造なお話が好きならアリだったのでしょうが、万遍なく受けるにはちとハードルが高すぎたと思います。