三ツ首コンドル 全3巻 石山諒 2014年
かつて大陸を支配した魔女が残した、様々な力を持つ宝が隠された魔宮。伝説の盗賊団三ツ首コンドル首領にして「常闇の三大盗」マシマロと正義の盗賊を目指す駆け出しのスーは魔女の宝を集める旅に出る。
奇跡を起こす魔女の宝物が眠る魔宮
主人公は三大盗の1人マシマロ
正義の盗賊を目指すスー
初期は魔宮の探索を行い魔女の宝の入手のトレジャーハント、ダンジョン探索物ですが、伝説の三大盗が主人公であるため、ダンジョン探索に対するワクワク感やスリルはありません。また、マシマロ自体が見た目は普通で実は凄いというキャラなのでビジュアル的なインパクトと弱かったです。このあたり、驚き役のスーがいるとはいえ、盛り上がりにかける展開となりました。
中盤から全ての宝を集めたものは大陸を支配できる程の魔力を手に入れることができるという伝承から王族との確執、過去の三ツ首コンドルが王家と対決して敗北したことなどが語られていきます。更にコンドルのボス同士の因縁、魔女の血族など後半に行くにつれて話のテンションがあがり、キャラクターも同格のキャラが登場することによって映えていきます。
魔女の宝
マシマロの目的は王家との戦いで死んだ団員を生き返らせること、三大盗の1人ハヴァの目的は王家を含めた人の上に立つこと。王の目的は王家の力を盤石にするために宝を集めること。と三すくみになるかと思いきや、ハヴァがあっさりキングを殺し、さらに三大盗最後の1人オリーブも殺してしまいます。ちょっと面白くなってきたところで加速する展開。なんとか構想を詰め込みたかったと思うんですが、急ぎすぎた感はありました。しかし、後半の濃密な展開とキャラの立て方は前半より格段に面白くなっており、評価も高いです。
マシマロの目的
ハヴァの目的
王家の目的
本来の構想を実現するまで尺が持たなかったと思われますが、そのまま元三ツ首コンドルのアジトに攻めてきたハヴァと戦いマシマロは命を落とし、魔女の血族に覚醒したスーは宝物の力を完璧に引き出しハヴァと対峙します。
数年後、新たな三ツ首コンドルの首領となったスーは宝物を集め、マシマロを蘇生するのでした。終盤早いながらも綺麗に話をまとめてきちんと完結したところは評価にあたいすると思います。
単行本には初代魔女の生い立ちから伝説となるまでが絵本調で書き下ろされており、物語に深みを加えています。前半のスタートダッシュが遅かったものの、トータルの完成度はなかなか高く、単行本で読むことが推奨ではありますが、打ち切り漫画のなかでは佳作といってもいいと思います。