津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

獄丁ヒグマ  2019年

獄丁ヒグマ 全3巻 帆上夏希 2019年 

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地獄から逃げ出した亡者は、人間の体を乗っ取り悪行を行っていた。亡者を捕まえて地獄に送り返す家系の篝手ヒグマは、生者でありながら、ザイジュと呼ばれる亡者の手を使い、脱走者を狩る獄卒人だった。

 

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11対のザイジュは、それぞれの亡者の異能を受け継いでおり、解放により捕縛の縄や大鉈に変化する。ヒグマは閻魔大王の部下として、サポート役の分霊者と協力して亡者を倒していく。しかし、ヒグマはこの仕事が好きでなかった。正確には悪を断罪する資格が自分にあると思えなかった。f:id:jiholeopardon:20210829153506j:image

 

戦い慣れた主人公にある程度育成された異能、亡者による陰謀と話は作りやすかった様に思うのですが、生来子供を愛せない母の亡者や、罪を犯した亡者とはいえ断罪することを躊躇するヒグマ、先祖の罪を贖わねば地獄行きのため戦わざるを得ない篝手一族など重いテーマが多く、主人公が向いていない役どころを務めているのも合わせて人気は取りにくかったと思います。

 

子供を愛せない亡者

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獄丁をやらなければならない家系

好きでやっているわけではない
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陰謀をめぐらす在獄時間の長い大物亡者達が出始め、篝手一族と因縁のある赤銅も登場してかつて叔母が閻魔を裏切り、父とともに赤銅に殺されたという過去も明かされます。重い。
敵はともかく味方側の戦力が増えず、白い獄卒が登場したところで終わってしまいました。

 

悪を許さない熱い男キャラで通した方がウケは良かった気もしますが、こういう主人公を描きたかったのでしょう。この辺は描きたいものと雑誌が噛み合わなかった向きがあります。どうしても、派手なバトルではなく、心の葛藤を描きたいという作品なので、バトル向きな設定の割に展開が心情重視になった感は否めませんでした。ボーズビーツといい、ノアズノーツといい、作者はドラマが描きたいのにジャンプだから無理にバトルしてる感じなんですよね。

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通常適性のない仕事をしてる主人公は、コンバートされる事で芽を出すか、自分が見失ってた仕事の意義を再発見する事でやりがいを取り戻すので、適性がなく、止めることもできず、仕事の意義は分かっているけどそれが重く、やり続けなければならないというのは青年漫画の文法で、少年漫画としては難しかったと思います。

 


打ち切り漫画は1割情熱が先走りすぎて構成・描写が追いついていない、2割設定が少年誌向けじゃない、3割話の展開が遅すぎる(主人公の活躍や、仲間の登場よりも、世界の説明や設定のための進行を行ってスタートで掴むべき読者を取り逃がす)、のこり4割は可もなく不可もなく消去法で打ち切りというイメージなのですが、アウトラインはともかく主人公の境遇は少年誌向けでなかったとおもいます。

 

近い存在が、悟飯、HACHI、ペイントマンあたりかしら。やりたくない事をやらされてるって時点で珍しい主人公になりますからね…。