ふたりの太星 全3巻 福田健太郎 2019年
昼と夜で人格が変わる二重人格の太と星。将棋が好きな2人は棋士をめざし、昼の人格太は棋士になるが、夜の人格星は時間の都合上棋士を諦めるしかなかった。しかし、太が事故に遭ったことから2人の昼夜が逆転する。
二重人格の太と星
将棋以外にのめり込むものが見つからない星は色々な物に手を出すが、見つからない。そんな時太が事故にあい代わりに将棋を打つことになる星。
昼夜逆転した事でプロをかけた奨励会3段リーグを太の代わりに戦うことになる星。はじめは太の為に打つ星だが、次第に将棋が好きだった事を思い出す。
この将棋に向き合うまでの展開が長かったのが痛かったですが、この後は天童世代と呼ばれるライバル達が登場して、対戦も盛り上がっていきます。
将棋内容は一切わかりませんが、各人の個性を出しながら対戦をうまく描いてました。結局盤上遊戯漫画はイメージをどう上手く投射するかと、キャラの内面をどれくらい反映させるかで勝負が決まりますので、この辺りをうまく処理できたのは評価に値すると思います。
演算
タイマン
運命
キャラの濃さに助けられた面はありますし、ハガデスあたりはかなりぶっ飛んだ設定にしてありますが、この辺はっちゃけた2巻中盤からの方が面白くなっていると思います。まあ、バイトリーダー和泉といいこのあたりのコミカル要素が人を選んだかもしれません。
作中最もインパクトがあり、最も物議を醸したキャラ・ハガ
共感覚を武器にしてデートの邪魔者を排除するバイトリーダー和泉
ハガに関しては、己への戒めとして自分の体の拘束。己のないコピー戦法。追い続けた天才に名前すら覚えられていない悲劇。着ぐるみ。最終的に名前をよばれるカタルシス。コピーを極めるという決意。看守。と、もう1人の主人公と呼んでもいい描き方をされています。インパクト凄い。
西の天才と呼ばれていたが太に惨敗。
さらに名前さえ知られていなかった悲劇。
天才を追いかける凡人 こういうの大好物
逆にこのリアルとファンタジーの境界キャラが面白さの源でありながら、読み手の新規参入へのハードルになってしまったかもしれません。最後の対戦の中継とかメタってて面白いんですけどね。
ニコ動らしき中継画面
デビリーマンから大幅にあがった画力といい、2作続けての話の畳み方のうまさといい、今後も期待したい作家です。
正直後半、天童世代が出てからはかなり安定して面白かったので、序盤が上手く纏まっていればと思わずにはいられません。打ち切り漫画の中には好きだけど、まあ仕方ないという作品も多いですが、ふたりの太星に関しては続いていればそこそこ面白くできたんではないかと思っています。
コミカルな描写も面白い
単行本では、4話で謎のヒキを見せたキャラの補足がつきます。
太の師匠で名人の予定だったらしいですが、名人がジジイに変更され、そのまま行き場を失ったようです。
ちなみに続いていれば良作だったと思っている打ち切り漫画は
①ダブルアーツ
②ゾンビパウダー
③神緒ゆいは髪を結い
④ふたりの太星
⑤P2
⑥メタルK
⑦フルドライブ
⑧アリスと太陽
⑨アイアンナイト
⑩歪のアマルガム
です