津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

ビーストチルドレン  2019年

ビーストチルドレン 全3巻 寺坂研人 2019年 

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子供の頃心に焼きついたラグビーの試合。獅子ヶ谷桜はMr.ビーストと呼ばれた名選手一樹雄虎に憧れてラグビーを志す。彼の教え子のいる高校に入学し、獣の子供達に指導をうけ、桜の才能が花開いていく。青春ラグビー漫画。

 

子供の頃の出会いがラグビーを胸に焼きつけた

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憧れの人の教え子たちのいる高校へ行きラグビーを始める。

 

主人公桜はチビながらも日本代表の基礎練を毎日こなしてたという、競技知識はないが基礎は十分できている幕の内一歩タイプ。5m走がプロでもエースクラスというスピードを武器に高校ラグビー界の雄、龍操学園のライバルにして憧れの雄虎の息子ユキトに挑む。

 

中学にラグビー部がないから、ラグビー日本代表の合宿の記事の基礎練ばかりやっていた結果エースクラスのスピードを身につけていた桜。

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このたった一つの武器を手に戦う。

 

先輩と桜、マネジと桜の友人を解して丁寧にえ説明がなされるのですが、じっくり描くのに尺を食うので展開がどうしても遅くなります。序盤から競技愛とモチベーションを重ねて描写し、ライバルも出してから対決、進学、入部。初試合が6話は辛かったです。

 

ラグビーの特徴、格闘技と見紛うかの肉体的な接触についても、興味と憧れ、他者からの視点、実際のテクニックという流れで丁寧に説明します。

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象徴的なのは終わり方で、2年後地区予選決勝でライバルと試合開始や、日本代表で世界と試合といった。本来ストーリーが進めば描くはずだった情景ではなく、ラグビーを描く上で外せないポイントであるスクラムを丁寧に描いて終わります。ぱっと見、え、これが最終回?となる終わり方。

 

ラスト3話を使ってスクラムの組み方の話をやります。単行本おまけページもそうなんですけど、作者のラグビー愛がすごい!

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ラグビーについて伝えたいこと。選手達の思い、努力、プレイの爽快感、辛いけど楽しい事、チームメイトとの連携、一体感を描くことを優先したばかりに、描き方がドキュメンタリーに近く、漫画らしい派手なハッタリや、戯画化された試合の面白さがセーブされエンタメに消化しきれなかった感がありました。

 

競技を覚えていく楽しさ、熱さ、悔しさを丁寧に描きました

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描きたい内容をじっくり描いたら、進行が遅くなってしまったという新連載あるあるではありますが、最近のジャンプで進行が遅いのは致命的だだったのと、現実路線だったため、ライバルが同世代トップクラスの割に飛び抜けた感がなく、素人主人公と地味に競り合ってしまってます。

外連味が薄く地に足がつきすぎていたか‥‥

 

同じリアルスポーツ路線のハイキューでさえ、変人速攻やキャラをたてた研磨、及川、牛若などのライバルと部内ライバルとも言える影山など外連味は出していましたので、あまりにも素朴すぎた感がありました。プレイボールとかに近い味付け。近い系統のスポーツであるアイシールド21と同じく、「短距離のスピードが最速クラス」という売りを持つ桜なのですが、これが大幅にピックアップされず、あくまでも素人の桜の中で使える武器という枠内の描写。人間の限界とか神速のインパルスみたいな分かりやすい飛び抜けた武器としての描写をしない。

とにかく作者のラグビー愛は凄いんですけど、それが、非現実的な描写を避けること、リアルなラグビーを伝えたい・好きになって欲しいという現実路線、言い方は悪いですが地味な描写になってしまったのかなと。

 

人数の多いラグビーのチームキャラを立てるために、最初はキャプテンによる個別指導、7人制ラグビーのメンバー集めでプロップやスクラムハーフの顔見せ、スタンドオフを怪我で温存してキッカーのピックアップをするなど、考えて進行をしてるのは伝わるんですよね。スポーツ好きな人には良作。残念だけど、スポーツ好きでない人を取り込むまでのパワーはなかったかな。

 

この辺の進行を考えるとアイシールドは化け物だった事がよくわかります。キャラの出し方、立て方が異様にうまい。鼻につくくらいの個性でわかりやすさを優先してます。

 

作者ラグビー愛がすごい

売れた売れない、続いた続かない、打ち切り悔しいももちろんあるんでしょうが、ラグビーをかけたこと、ルール説明を出来たことを喜んでいます。ラグビー協会は、ラグビー推進協力賞とかあげてもいいと思う。

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競技の特性上低学年で参加できるコミュニティがない→基礎練だけで競技に飢えているので練習が楽しい、苦しいトレーニングを前向きにこなす好感度高い主人公という設定は良かったと思うんですけど、少年漫画らしいフックが欲しかった作品です。惜しいなあ。

 

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