津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

BUILD KING 2020年

BUILD KING  全3巻 島袋光年 2020年

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ゆらぎ、約ネバ、鬼滅がおわり、ぼく勉、チェーンソーが終盤、次期看板候補だったアクタージュが予想外の連載中止。久保帯人先生はBTW不定期連載。鳴り物入りの岸影渾身の次回作サム8は大こけ。薄くなった紙面を救うべく、連続二発ヒットを出した大物・島袋先生が帰ってきた!こんどのテーマは「住」!

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 かつて犯罪逮捕でジャンプに迷惑をかけたしまぶーが、犯罪逮捕でアクタージュが消えた誌面を救いにもどってくるという漫画家漫画なら大ヒット間違いなしのシチュエーション。ヒット作を出した連載作家も松井優征古味直志麻生周一藤巻忠俊、川田、空知英秋らがまだ残っているとはいえ、最も欲しいのは王道少年漫画らしい作品、それに相応しい大駒をきってきた感はありました。

 

ハンマー島に住むとんかちとレンガの義兄弟は、最もビルドマスターに近いと言われた伝説の棟梁シャベルに助けられて弟子入りをする。

 シャベルに鍛えられたとんかちとレンガは、太古から生物が絶滅する程の天変地異を耐え抜き、多くの生物を救ってきた奇跡の建造物・ビルドキングを目指して旅立つ。

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最大の問題は、「食」は美味そう!これ食いたい!になるんですけど、「住」は、ここ住みたい!にならないんですよね。得られる快楽が違う。まあ、だから、危険な世界の中で唯一の安心して住める場所という捉え方なんですけどそうすると今度はほとんど日本人には訴求しないということになってしまいます。読者の共感が得られにくい。

 

島で実力を伸ばしたとんかちとレンガが旅に出るところから物語は始まります。

順調に建築の才能を伸ばしたレンガに対し、戦闘力を高めたとんかちは平和を築くことが目的。

もうすでに開幕から建…築…?となりますが、バトルは必須なので目を瞑りましょう。

 

ただ、せっかくの決め台詞なんですけど、台詞回しが「お前に勝てる」なんですよね。

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島から飛び出したとんかちとレンガは、屋獣に懐かれたり、屋賊と戦ったり、活気ある大工の世界を目撃します。

 

ここちょっとワクワク感

この辺りの表現は上手いんですけど、バトルメインになりすぎて、活かせてないんですよね。

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外の世界で実力を発揮するとんかちとレンガ。

逆さ城のリフォーム。

島で実力を蓄えてきた2人の最初の見せ場なんですが、発注主であるコルクの思い入れや、コモーリ王の掘り下げが少なく、どうにも小さな事件となってしまっています。5話から8話までかけた序盤の見せ場のはずが、為さねばならない理由がなく、命懸けというわけでも、負けられないライバルがいるわけでも、これに成功しないとビルダーになれないわけでもなく、外の世界でみせるとんかちとレンガの圧倒的な実力という回でも、実力が足りずに唇を噛む成長回というわけでままなく、長さのわりにカタルシスに乏しいです。ここの盛り上がりのちいささが、運命を決定づけてしまいました。

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そのまま、ビルドユニオンに所属するための試験に突入します。一時期猛威を振るった試験展開きちゃったか…。

島袋先生も試験をずっとやるつもりはなく、乱入展開になるんですが、本当に試験してるだけでキャラの掘り下げとか、新キャラがでたワクワク感とかがなく、乱入での中断を含めてどこかで見た展開になっています。

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試験に乱入する「全てを力で支配する世界を建築する組織、サタンヒルズ」

建…築…?

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急に終盤になって、ハンタの念能力みたいなのが出てきますが、これは打ち切り漫画名物消化しきれなかった設定の開示!?ちょっと今回は、試験といい属性といい、ハンタ臭がきついんですよね。

 

いいビルダーは家に好かれちまうんだ

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ビガーの属性、反対色で相殺

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絶対これ、特別枠の金色とかあるだろと思ったら、即作中で例外の色が登場します。

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オリジナリティを出すんであれば、ロボバトルに振った方が目新しさはあったと思います。ロボはロボで鬼門の分野ではありますが。

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結局本誌連載で尺が足りずに全くケリを付けずに終了。そのあとジャンプラに書き下ろし130ページ越えで完結編を掲載しますが、これすら、設定・隠された因子の開示、仲間たちの集結、未来の強豪のチラ見せ、よーし行くぞ!、10年後という由緒正しい打ち切り漫画のフルコースで終わりました。実質2回打ち切りをくらったようなもんだよ。俺たちは何を見せられてるんだ!

ジャンプ掲載時の最終回

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書き下ろしの終わり エンドレス打ち切りムーブ

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3巻の作者コメントでは、夢オチにしようかと思ったことや、家(ロボ)メインで進めると主人公が埋もれてしまうので序盤は家キャラを封印したこと、スランプで何が面白いかわからなくなり作者的にも納得いってなかった連載ネームを意見を聞くために連載会議に出したところ通ってしまったことが語られています。球不足の余波を被ってしまったということで、ちょっとかわいそうですが、全体的に練り込み不足だったようです。

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さて、次回作は「衣」やるんですかねえ…。