津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

レッドフード  2021年

レッドフード  川口勇貴 全3巻 2021年

 

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食人衝動に目覚め人肉を食らう怪物となった元人間・人狼が現れた村で、小さな狩人ベローは、伝説の狩人が設立した怪物退治専門の組織「狩人組合」からきた凄腕狩人グリムと出会う。

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高田ちゃん、スターアンドストライプ、一心、ヤマトとでかい女が流行りのジャンプに、デカイ女とショタの活劇が始まりました。

 

人狼に襲われる小さな村、村に受けた恩を返すために人狼を倒したいベローは凄腕狩人グリムとの出会い、素質を認められ戦いに臨む。

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 村の危機に才能ある少年が、師匠となる対魔物戦闘のプロと出会って弟子入りし、才能を見出されて戦いながら成長していくという筋立ては比較的わかりやすい王道少年漫画です。

 

3話までで人狼という人類の敵があり、それに対する狩人組合という組織がある事、人狼の強さ、銃はあるが近代兵器はないという世界観の説明とベローのキャラと立ち位置の説明と地味めながらスムースに話が展開します。幼女→巨女に変身するグリムのフックもあって悪くない立ち上がり。

 

5話までで最初の戦いを終え、挫折を覚えて狩人組合の試験をうけるパートに移るのですが、赤ずきん(レッドフード)に対して意味ありげな灰の魔女(シンデレラ)の登場、なぜ人狼が生まれるのか?小さな村が焼かれたのは何故か?血の目録とは?直参とは?グリムにかかった魔法とは?人狼を滅ぼす計画とは?と、怒涛の謎が振りまかれて1章が終わります。

王道どころか90年代末のエヴァンゲリオンの後追い作品みたいな読み口になってるけど大丈夫かコレ!?

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6話からは人狼を倒すために狩人組合に入るための試験編。外の世界や試験官、仲間になるキャラ描きつつ、試験が始まるまでに3話。オイオイ、死んだわアイツ。

 

正直序盤の展開が遅いのは死亡フラグなので、謎の回収もせずに主人公の成長するでもない幕間回を3話続けただけで死んだと思いましたが、なんとこの3話の間に起こった出来事は、いかにも仲間になるチルチルミチルモチーフのチルチ、ミルチ兄妹が凄腕だけど前回の試験に落ちたほど試験が難しいことが判明。タッパとケツのでかい女試験官デネボア登場。試験仲間ボンカース登場。同じく童話モチーフの爺さんブレーメンが意味ありげに登場して5ページで退場します。このくだり必要だったかしら……。

 

 

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名入りで登場して

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5ページで退場……

 

9話からは試験が手錠ケイドロということがわかり、ルールの説明とこの3話で登場したキャラと力を合わせて試験をクリアするんですが、前振りが長かった割に試験自体が盛り上がりません。

6話かけてそんなにキャラが立ってない仲間たちと死ぬわけでもないぬるめな試験を見せられてもなあ……。正直なところここで打ち切りは決まってしまったと思います。

 

15話からは3章に突入。 

この世界は、上位存在に与えられた「真実の本に書かれた物語」が現実になったものであり、組合は本にシナリオを書き込み世界を動かしていたこと、つまり、この世界の悲劇は全て組合の演出した自作自演だったこと、村長はそれに反乱してシナリオを無効化する魔術生命体・ベローを作ったこと、上位存在はシナリオが面白くなければ世界を終わらせることが怒濤の設定開示で明かされます。

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唯一シナリオの影響を受けないベローの選んだ選択肢は……?というところで18話完結。

 

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久しぶりに打ち切りらしい打ち切りというか、未消化の謎、怒濤の設定開示、たくさん出た割に掘り下げられてないキャラクター、俺たちの戦いはこれからだ。となかなかやってくれた作品でした。読切版は見た目通りの王道少年漫画だったので、本誌連載に際して「世界は上位存在を満足させるために、描かれたシナリオ通りに動かされている」という厨二臭い設定を追加したということなんですけど。どこか手垢のついた設定をねじ込んでわかりにくくするんだったらその分をキャラの掘り下げやバトルに使った方がよかったわよね……。シンデレラやポルッツェンは可愛くて動きも良く、ボンカースやメリオピリスも味のあるキャラだったので、グリムも含めて活かしようはあったと思うのですが、どうにもバトルも試験も展開も突き抜けきらない中途半端な出来になってしまった印象でした。

 

ちょっと仕方なかった感のある打ち切りでした。