番外編 瑪羅門の家族
瑪羅門の家族 全4巻 宮下あきら 1992年
とある事情で知っている人も多い宮下先生の打ち切り漫画。
念を打ち込む事で人の行動を操る瑪羅門一族が、悪に仕置きする必殺仕事人物。後半はジャンプらしくバトル漫画に転向して世界を陰から操る魔修羅一族と瑪羅門7人の選ばれし戦士が戦います。
根本的には必殺仕事人なんですが、まずジャンプにはブラックエンジェルズという仕事人物の大先輩がおり、次に念で行動を操る能力なんですが、こちらもタイムラグのある死・行動の操作は北斗の拳という前例があります。つまり、なんとなく新鮮味が薄かったんですよね……。
ブラックエンジェルズほど悪人がド外道ではなく、北斗の拳ほどの拳法のインパクトがない。更に念で操ることで自白などもさせられるので、物語が最も都合よくたたんでしまえるという予定調和感。
念を打ち込むことで相手の行動を操るんですが、
「護衛している大統領を盾にテロリストに命乞いをした上で大統領をテロリストに差し出し、死にたくないから逃げると言わした上でトラックの前に飛び出して轢かれる」ところまでコントロール可能です。ちょっと能力が行き届きすぎだったんだ……
結局仕事人編は弾けずに、バトル編に突入します。悪を裁く瑪羅門に対して、歴史の裏から人々を操ってきた魔修羅一族。ヒトラーも信長も奴等の傀儡だったのだ。
でたー!80年代によく見た歴史上の人物が巨大な組織の操り人形やったやつや!だいたいヒトラーが皆勤で次点でナポレオン、ジャンヌダルクとアレキサンダー大王がその後に続くといった感じ。
信長名鑑には登場したのだろうか…?
これに合わせて、瑪羅門の念を打ち込む能力は、7つの能力の一つということに変更、7つの力をもつ7人の戦士を集めて魔修羅と戦う展開になります。
念能力以外は、力持ち、素早いやつ、身の軽いやつ、動物と喋れるやつ、炎を出すやつ、なんでも砕くやつ。
なんかこう、能力といい、設定といい当時でも"懐かしい"感じのテイストでした。
当然ブレイクするはずもなく4巻で終わってしまうんですが、民明書房みたいな慣用句(?)からこじつけた能力の紹介は宮下先生らしかったのでもっと見たかったです。
さて、 打ち切り漫画大好き津尾さんが、瑪羅門の家族を気に入っているのは懐かしいテイストの設定ということもありますが、真骨頂はその終わり方にあります。7人の戦士を揃えて、魔修羅最強の男と対決をするところで作品は終わりを迎えるのですが、
「ラスボスは先にある宮殿で主人公達を待ち構える」
「ラスボスと戦う資格を示すために3人の敵を倒す必要がある」
「最終回で怒りで新たな能力に目覚めて強敵を倒す」
「3人の敵の最後の1人は、仲間達ではなく謎の人物が倒してくれた」
「謎の人物の正体は『いずれわかる』でごまかす」
「最終ページは『行くぜ‼︎』で終わり」
という原色超人ペイントマン(https://utikirimanga.hatenadiary.com/entry/2021/04/02/121935)並みの打ち切り仕草が炸裂します。
新たな能力が突然発動するけど特に説明はないぜ!
最終回なのに「いずれわかる」というあからさまな説明放棄アンド闘う尺がない敵の処分
打ち切り漫画の華、大コマで行くぜ!
サスケ忍伝、ペイントマン、ビルドキングに並ぶ打ち切りムーブだと思います。そういうの、好きだぜ。