津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

テンマクキネマ 2023年 原作 附田祐斗 作画 佐伯俊 

テンマクキネマ 全3巻 原作 附田祐斗 作画 佐伯俊 2023年

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 食戟のソーマコンビが送る青春映画漫画。

 体が弱く外で遊べない幼少期に映画に救われた映画少年・新市元は、映画館で脚本家の幽霊・天幕瀧飛虎に取り憑かれたことから、彼を成仏させる為に同級生の売れっ子女優・倉井姫希と映画部の友人とともに映画を撮る事になる。

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 所謂取り憑かれものとか背後霊ものの映画版。ヒカルの碁、overtime、キックスメガミックス、クロガネ、Bの稜線の系譜です。基本的には題材となる分野の達人・名人が主人公しか見えない霊となって取り憑き、素人主人公を導くことで成長していくバディ物です。

 

 素人主人公の努力と成長、達人幽霊の最強チートの二面を1人で描写できる上に、主人公の成長にその道の達人が師匠についてるという理由づけがあり、更に2人の会話により現状の説明や上級者による解説が自然に入れられるという超便利手法なのですが、ヒカ碁以外の成功例がほとんど存在しません。

 

 遊戯王は三つ目がとおる、バスタードなんかの二重人格物、デスノートはバディが説明役を担う点では構造は似てるのですが、リュークの立ち位置がほぼ傍観者な部分と主人公が自分だけで完結してる能力なのが決定的に異なります。成功例何かあるかしら? 忘却バッテリーは自分自身がバディという珍しいパターンで一応成功例かしらね。

 

 やる気があるなら既にその競技を始めているはずなので、やる気(興味)がない主人公にその競技をやらせる課程でどうしても出てくる幽霊側の強引さがヘイトを買ったり、納得いかない理由で競技を始める違和感、展開上必ず必要となる修行パート、その後の急速な成長の理由が必要などスムーズに読ませるハードルが高いのと、物語の構造上展開がどうしても先行作品に似てしまうため既視感が出てしまう事などが理由でしょうか。

 

 成功作のヒカルの碁ですら、最序盤はヒカルの言動が失礼だったり傲慢だったりと、小学生だからまあ……と、ちょっと入り込みにくかったのを、平安人のサイの可愛さと神秘性で読ませていたので、この辺りの匙加減が難しいところです。

 

 テンマクキネマは、バディを脚本と監督に分けた事、主人公が映画に救われた超映画マニアで、ある程度素養があることでこの辺りの印象を緩和しつつ映画という題材を活かしてヒロインを即投入して話にも絡めています。

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 最近の作品らしく優秀で真面目で、映画バカ以外には欠点のない主人公に、気持ちいい友人の協力者、才能も理解もある美少女ヒロイン、結構上手くやってると思うんですよね。

 僕これ好き。

 

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 友人がいい奴なんですけど無味無臭&便利すぎ感はありました……

 

 先行作品で感じた物語構成における違和感やヘイトがほとんど感じられず、スムーズに主人公の才能を感じさせながら、映画の撮影、それを通したヒロインのトラウマの克服を自主制作映画の作成を通して描きます。区切りもよく、完成して賞を取って完結。

 

 悪いところはあんまりないんですが、こじんまり纏まってしまったところ、登場人物が基本的に皆いい奴なので読み口はいいのですが、あまりにも波風が少ないところ、そのため問題の解決が予定調和感が出てしまっているところなど、強いフックがなかったのが苦しかったです。サンデーで時間かけて連載してたら上手く行ってたかなあ……。

 

 読んでみたら悪くないんですけど連載中のヒキはあんまりなかったろうなという感覚。

 

 もう一つ、前作の最大の武器であった女子の可愛さと脱衣をほぼ封印、ラッキースケベもコンプライアンス的になし、皆が真面目に映画作りに勤しんでるので恋愛要素もなし。

 

 これ、己の長所を捨ててないですか? 

 僕の中の範馬勇次郎が、「持ち味を! 持ち味を活かせ!」と叫びます。

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 一応水着シーンはあって、流石のエッチさなのですけど。

 これ以降は完全にサービスシーンすらありません。

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メイドくらい。

 今撮影の映画の役がこんな衣装で…、みたいな流れでいくらでもエッチな格好出せるのに!

 

 一応、単行本には本編後、姫希にハリウッドから声がかかり、女優としてステップアップするヒロインを応援して見送り、主人公はヒロインに見合う監督になろうと努力していくという後日談が収録されています。数年後、本編で示唆されていた、世界を席巻する天幕渾身の脚本の主演としてオファー出すシーンでエンディング。

 

 天幕の姿が見えるようになったのかも知れないヒロイン、など本来予定されていたエピソードを匂わせてるのが嬉しいです。

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 ヒキの弱さ、カタルシスの弱さであんまり話題にもならなかったんですけど、悪くはなかったんじゃないかなあ。

 中途半端にリアルな実力にしすぎて、主人公、ヒロイン共に鳥肌がが立つような才能の発露をみせられなかったのが惜しまれます。