ドリトライ 全2巻 雲母坂盾 2023年

ボーンコレクションの雲母坂先生の二作目。全2巻ながら、「心の強さが違えんだよ!」と「ただの◯◯じゃねえぞ、ド級の◯◯、ド◯◯だ!」というミームを作りここ最近の打ち切り漫画の中では随一の爪痕を残した打ち切り漫画です。
こういうのが読みたくて、打ち切り漫画を読んでるーっ!
戦後の混乱期。戦災孤児の大神青空は結核の妹の入院費を稼ぐ為、裏社会の拳闘大会に出場することになり、出征して帰ってこない元拳闘王者の父の「心が強いから強い」という言葉と生来のタフネスを武器に戦っていく。

作者自身がシンプルに熱くて燃える漫画を描いてみたいということでチャレンジした作品とコメントしていますが、意外にもこの発想をスタートにかなりロジカルに組み上げています。
タイトル回収回でわかるように、ド級のリトライでドリトライ。テーマは「諦めずに挑戦し続ける心の強さ」。
シンプルに熱く、諦めずにリトライしていく主人公。ドクストの千空みたいな地道な努力ではなく、昭和の熱血主人公のテイスト。
そうなると現代以降では、もうちょっと空気感的に厳しいので必然的に過去の話になります。過酷な状況でも諦めずに、となるとまず出てくるのは戦後の混乱期。やられても何度でも立ち上がる主人公だと戦争なんかの命懸けの戦いには向かないので題材は喧嘩かスポーツ。
こういった流れで 戦後昭和の拳闘漫画という珍しい題材に、洗練よりも泥臭さと根性というちょっと懐かしいテイストの本作ができあがります。このままだとあまりにも地味なので少年誌らしく必殺技、修行、血統を味付けに。

病気の妹を治療するため拳闘をするしかなくなるのに2話、3話で雑魚と戦い出場権を得て4話でライバルが登場、右腕だけ太いなんか既視感のあるライバルと戦うのに5〜8話。


なんか既視感。
ちょっと状況説明と、最序盤の敵との戦いが長かった感じです。2話が殆ど進展がなく、1話のラスト「あんた拳闘に向いてるよ」で、2話のラストが「拳闘やってやるよ!」なので、金を稼ぐために拳闘をやるしかないですっ飛ばしてもよかったんじゃないかな。
殴られ慣れてるから打たれ強いタフネスがうりの主人公というのも使い古されたパターンなので面白みにかけた為、盛り上げる為なのか、8話からは拳闘会のトップに君臨する5人のボクサー「五光」の存在が示唆され、そのうちの1人、内部に衝撃を与える浸透勁みたいな技を使う兄貴分の実力が明かされます。まあ、全て捨て設定になってしまいましたけど……。
さらに、謎の使い手が現れ、技術の必要性を痛感する主人公は修行をすることに。展開が‥‥、テンプレすぎる‥‥ぜ…。

二番目の敵、ヒロポン中毒の元父の部下
ジャンプでこの絵面はゆるされるのか?
ちなみにこいつ、父の技術の正統後継者と嘯いて登場しますが、軍隊で主人公の父に教えを受けたその他大勢の1人で、正統でも後継者でもなくない? いや、技を継いでるから後継者と言えなくもないけど、正統とは……?
最終的に父と対決するのですが、打ち切りが決まったからか、それなりに地に足のついた戦闘をしていたはずがいきなり異世界能力バトルみたいな領域に。

海を割る父

万物の構造の芯を捉えて瓦解させる力
おい、いきなり車田正美の漫画みたいになるな。
最終的に、心が折れそうになる青空を、周囲の人間が立ち上がって応援し、立ち直ってタイトル回収。
ド級のリトライ、ドリトライだ!

余談ですが津尾さん、同時期に公開されていたゲゲゲの謎を見に行ったところ、劇中で「ただの狂骨ではないぞ!」というセリフがあった為、脳内で「ド級の狂骨、ド狂骨だ!」とアテレコされてしまい映画に集中できませんでした。
同様の犠牲者多数。
最終回はは令和まで時代が進み、受け継がれる心の強さで話は終わります。
打ち切りながら描きたいものは描いたわねという終わり方でした。
ちなみにこの、「何度でも(心の強さで)立ち上がる主人公」、自然と鍛えられて天然の頑健さと膝のクッションをもつ幕の内一歩や、鍛錬の末選ばれた北斗神拳伝承者とか聖闘士とかを除いても、ドラえもん帰還前のジャイアン戦ののび太を代表に昔はよく見た存在だったんですけど最近ではめっきり見なくなっちゃいました。
東リべ終盤のタケミチが久しぶりのコレ系キャラでしたね。