アイスヘッドギル 蜂矢育生 全2巻 2023年

父は王都を守るニーズヘッグ戦士団のヘッドだったが王子を殺害して消息不明。息子のギルは王都を追われ、王都から離れたウニ島に漂着していた。
誇り高い父に何が起こったかを知る為に、父の手記をある手がかりを追ってギルは冒険の旅に出発する。
ド正統なファンタジー冒険物。
故郷を追われた少年、汚名を着せられた父、家族も味方もいない孤独な旅路、それでもまっすぐな少年の成長、甦る地獄のリッチ、聖遺物、父の手記に残る謎の言葉、伝承。謎のブローチ。雪と氷の国を舞台に地獄のリッチと戦う斧使い。
正統派過ぎて、ジャンプでこれウケるの?と心配されていた北欧神話系ファンタジー。
まず斧使いの主人公というところで、バクマンのサイシューコンビが頭に浮かびます。
『刀』。
緋村剣心、黒崎一護、竈門炭治郎達のスタイリッシュ剣技に対して、
斧……、だと……。
どうしても、ドワーフ、パワーファイター、タンクのイメージ。
ジャンプの斧使いなんてクロコダインさんを筆頭にワンピの戦桃丸、BLEACHの兕丹坊ですよ?
後は、これ斧か? みたいな悲鳴嶼行冥さんとか斑目一角の龍紋鬼灯丸とか 影慶の犇斧ヌンチャクとか武装錬金のヴィクターのフェイタルアトラクションとか。
他誌も含めれば、今でこそシュタルクとセンシがいますけど、大体ザクにゲッター、せいぜい徐晃とジョージワシントンくらいしか浮かんできませんよ?
というわけで、当たれば新規軸の主人公ですが、武器選択の時点でなかなかのギャンブル。
バトルものだと本来マイナー武器のトンファー(伏黒恵、雲雀恭弥、アルバトロナル・エイジ・アスカ)や、トランプ使い(ヒソカ、トバルカイン、ガンビット)らの方がメジャーなくらいで糸使い(秋せつら、マカパイン、マチ、ドフラミンゴ)などはバトルものではレギュラーメンバーの武器。
割と不遇気味の鞭使いでも、REBORNのディーノ、封神演義の聞仲、幽遊白書の蔵馬というメジャーキャラクターがいるため、斧使いの不遇さが目立ちます。
本編では強さの目安として、1回転毎に威力と共に狩れる対象の獲物の名称に技名が変わっていくシステムを採用しており、
1回転カリブー狩り、
2回転ムース狩り、
3回転グリズリー狩り、
4回転シャチ狩り、
5回転クジラ狩り、
6回転タイガ狩り、
7回転でどんなものでも切断できるドラゴン狩り、
更にそれを上回る8回転とステップアップがわかりやすい形で示されます。この辺りは悪くないかも。

決めゼリフは、「斧で俺は誰にも負けない」

ことある毎に展開される決めゼリフ

単行本の帯折り返しまで
しかし武器周りのお話は上手く活かしきれたとは言い難かったです……。
ストーリーの方といえば、まっすぐで素直で、素直すぎてうっすら狂気を感じる善性の主人公と、死者を操る地獄のリッチ(まあ鬼です)が倒された後に会話したりというテイストに鬼滅の影響が濃厚でした。

性格のいい主人公
息抜きコマとか絵面の方でも影響を感じたのでアシさんだったりしたのかしら。


死者の体を使い生前と全く違う行動をとるリッチによる悲劇性、わかりやすく回転数毎に攻撃力(と隙)が上がっていく必殺技。聖遺物による特殊能力。性格が良くヘイトを買いにくい主人公。
今時のジャンプらしくマイナス点は少なく、ヒキのポイントも作っていたんですが、どうにも地味な印象と、敵がはっきりしないのが痛かったです。
旅立ちの1話、変わってしまった人に振り回される人達と生前の記憶読み取り利用するリッチ、僅かに残された死体に宿る意識というリッチの悲劇性を示す2話、仲間の登場する3話、強さレベルを示す4、5話と、かなりしっかりと目的を持った話作りなのですが、6、7話で登場する父の行方を知る「真王の血族」の目的、キャラクター、組織の規模と能力あたりが明かされないまま、人間側の父を追放した灰氷国の王との対面へ話が進んだため、焦点がどこなのかわかりにくくなってしまいました。敵は人間の王なのか、リッチの王なのか。上手く運べば三すくみの戦いという面白い展開になったとは思うのですが……。

愛する人を操る敵と戦うという悲劇的要素
王の思惑がわかりにくく、更に王の側近の道化が何やら黒幕っぽいのが、謎が謎を呼ぶ展開というよりは、敵が誰で何のために戦っているのかわからない状態になってしまいました。

思わせぶりなことを言うだけ言って終盤即死する道化
一応1巻のヒキポイントとして、父と並ぶ戦士団ヘッドとしてグレイティストが登場して話を引っ張るのですが、戦士団ヘッド集結と敵の真王の王子終結が連載終了間際だったちめ、この辺りのカッコよくて強い敵が早めに欲しかったところではあります。

ド派手な登場、強さと愛嬌で人気が出そうだったグレイティスト。


終盤で勢揃いする敵味方陣営。なお活躍する尺の余裕は……。