グリーングリーングリーンズ 全三巻 寺坂研人 2023年

ビーストチルドレンの寺坂研人がゴルフで帰還。
僕これめちゃくちゃ好きなんですよ!勿論打ち切り喰らってるんで、相応のマイナスポイントはあるんですが、連載中でも割と好評の声を複数耳にしたのでかなり惜しかった作品だと思います。個人的にはこれまで打ち切り漫画ブログで取り上げてきた中でも1、2を争うおすすめ漫画、ここ5年だとダントツで好きです。
前作ビーストチルドレンの時からそうなんですが、超常能力などのないリアル路線のスポーツを、初心者にもわかりやすいように丁寧に描きつつ、スポーツを楽しいと思うポイントをクローズアップしするという愛のある(けれど地味な)作風です。
好きなものも熱くなれることもない、やりたいことがなくて周囲との温度差を感じる主人公・八枝崎はゴルフのプロを目指すクラスメイトの王賀と出会いゴルフに惹かれていく。

この漫画の凄いところは、何もない状態の主人公が、ゴルフに惹かれて、ハマって、うまくいかなくて、試行錯誤して、努力して、それが楽しくて、という部分を物凄く丹念に描いているところ。
勝負とかバトルとか因縁とかじゃなくて、誰もが、何かに熱中した時に感じたやる気とかもどかしさとかを共感できる形でエピソードを積み上げてくれます。

ハマるまでの心情描写とか、すごく丁寧


1巻まるまるゴルフのラウンドをせずに、打ちっぱなしで練習してるだけなのに、熱いし、面白いし、主人公を好きになる。
よく考えたら凄い。
だって部活のレギュラー争いとか、全国大会とか地区大会出るとか、そんなの何もないんですよ?
ゴルフ始めて、難しくて、だんだん楽しくなって、初めてラウンドすることになって、めちゃくちゃ叩くんだけどダブルボギーだして名前のついたスコアが取れたと大喜び。
これだけだと、昨今流行りのゆるい趣味系のようですけど、そういう現実的な描写をしつつ、才能がないなりにのめり込んでいく主人公が成長して、戦う人間になっていく姿も描いていきます。

サンデーかマガジンでじっくりやらせてくれたらホンマ名作になった可能性あると思うんですけど……。
人気が取れなかったのは上記の通り、流石に展開が遅い、ゴルフというとっつき悪いスポーツが題材、バトル要素や主人公の飛び抜けた活躍がない。あたりでしょうか。リアル路線のハイキューでも変人速攻という飛び道具がありましたし、主人公コンビに他者にない武器があったので、流石にクラスにいそうな普通の少年が主人公なのはパンチが弱かったろうと思います。そこがウリではあるんですけど、ジャンプですからね……。
一応ビスチルの反省からか、1話からスク水ヒロインを出して華やかさを出しつつ、競技への向き合い方、解説、プロの戦い、二人の関係性の変化を、素人一般人八枝崎サイドと、プロ志望の王賀サイドで描くことで、話の幅と厚みを出しています。

ちょっと評判になってたスク水ヒロイン。話の展開上体育のプールをやる必然性はないので、ヒロインの水着姿を出すためだけに1話の冒頭がプールから始まります。あざとくていいぞ。
この漫画、スポーツへのハマり方、努力と成長の描き方が丁寧なのは前述の通りですが、もう一つの売りが主人公とヒロインの関係性です。ボーイミーツガール物としてもとてもよくできており、文字通り八枝崎の人生が王賀ちゃんと出会ってから変わっていき、王賀も八枝崎に影響を受けていくのが見てて気持ちいいです。
互いにものすごく影響されているのに! ラブとか恋とか付き合うとか全然出ないんですよ! でも、もうそこまで

柄にもなくラウンドで無茶した後の打ち上げの王賀ちゃん。「(いつもしないような無茶なチャレンジをしたのは)なんでだろうね」ってわざわざ絡みに行ったり。

王賀ちゃんのキャディーとして大会で怪我を押して勝ちに行く王賀の姿を見た八枝崎の感想。
もう付き合っちゃえよ。
そんで、クール美女王賀が八枝崎なだけ冗談を言って、「王賀でも冗談とかいうんだな」と言われた返しで「あなたにだけはね」
と言った後の表情。

あー、もうキュンキュンするんじゃあー!
という事で、ゴルフ漫画としてもボーイミーツガールものとしてもオススメのグリーングリーングリーンズでした。読もう!
単行本おまけページはビスチルの時と同じく初心者向けルール解説と、本編の少し後のおまけ漫画が収録されています。ビスチルの時と違って多分読まれ易さを重視してヒロイン起用してるんですよね。寺坂先生この辺りのサービス精神もめちゃくちゃ旺盛なんですよ。
明らかにビスチルの時より筆力は上がっているので、次回こそはブレイクしてほしい作家です。