津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

極東ネクロマンス 那波歩才 2024年

極東ネクロマンス 全2巻 那波歩才 2024年

f:id:jiholeopardon:20260712175158j:image

 

 エイリアンズエリアから2年ぶりに復帰の那波先生。両親がいない祖母と二人暮らしの青年・宇埜薫は、元父の仕事仲間・天涅耀司と出会い死霊術士の世界に関わることになる。

 

 死霊術士でないと見えない死霊、死霊ごとに異なる様々な能力、死霊は原則一人一体。

 まあ、幽波紋バトルです。

f:id:jiholeopardon:20260712175621j:image

 

 一般人主人公の好感を1ページであげるエピソード、バディものにして序盤の登場人物を絞って作品世界の説明。

 あたりは良かったんですけど、那波先生年上ミステリアスしごでき兄貴分と未熟だけど素質のあるまっすぐな後輩のバディが好きすぎませんかね? 構造がエリエリと同じなんですが……。

 

f:id:jiholeopardon:20260712182708j:image

開幕からクセのある兄貴分

 

 エリエリと同じで序盤の話、バトルの主体が兄貴分になっちゃうんで主人公の影が薄いです。兄貴分もストレートにカッコいいというよりは味のあるタイプなのでこの辺りが初速に厳しかった感じがします。一部の人に人気を博すが万人受けしないキャラメイク。耀司の死霊・ロリ系妖精風キャラのチタリちゃんとか、歳下の先輩女子キャラの翠ちゃんとか刺さる人には凄い刺さりそうなんですけど。

 

 あと技のネーミングが、ちょっと、その

f:id:jiholeopardon:20260712185515j:image

f:id:jiholeopardon:20260712185530j:image

ダs…、オシャレさに欠けるというか、真似したくなるキャッチーさがなかったというか

 

 展開自体は早めに味方組織の幹部集団の登場、年下の先輩女子の特訓とサクサク進んでいきますが相当早めに打ち切りが決まったのか、特訓も終わらない間にラストバトルに突入しました。

 

 打ち切り漫画の終盤の展開としては、

①現在の戦いを終わらせて俺たちの戦いはこれからだ!

にするか、

②数年時間をすっ飛ばしてラスボスと戦うか、

の二つに分かれる事が多いですが、稀に読者に爪痕を残す為にとんでも展開をぶち込んできて終わるケースもあります。

プリンセスハオとか、チンピラに刺されて死ぬマサトメとか、結婚式を始めたボンコレとか。

 

 ネクロマンスはラスボスバトルにはケリがつき、耀司の感傷的な台詞で締めるんですけどその後日、全ての元凶である死霊の大元締めが、主人公に求婚して終わるという衝撃の結末。

 一応タイトル回収だったみたいなので構想自体はあったんでしょうが

 

f:id:jiholeopardon:20260712185757j:image

これで終われば、まあ、一貫性のあるストーリーだったんですけど

 

f:id:jiholeopardon:20260712185708j:image

f:id:jiholeopardon:20260712185723j:image

最後にぶち込んできやがった!

 

いや、これで突然タイトル回収!と言われても。なんですけど、なんとなく爪痕は残ったので作者の勝ちなのかなあ……。

Dear Anemone 松井 琳 2024年

Dear Anemone  全2巻 松井 琳 2024年

 

f:id:jiholeopardon:20260608204052j:image

 

 連載開始当初から、作者アカウントがXのジャンプ感想勢をブロックしていたという事と、作者が最終的にアカウントを消した事で少し界隈で話題になっていた作品です。こんなブログ書いといて何ですが、エゴサして病んでる作家結構見るから先行ブロックは処世術として仕方ないのでは……?

 まあ、一味みたいな扱いでブロックされてた特に悪くない人は可哀想でしたけど……。

 

 

 さて本編はジャンプでは珍しいホラーアクション。

 ガラパゴス諸島で10年前に原因不明の爆発が起こり、島は有害物質に覆われ外界と遮断された。有毒物質の影響が無くなり派遣された調査隊は全員行方不明。

 第二次調査隊として選ばれたのは、主人公鉢植萼をはじめとして訳ありの一般人だった。

 外界から隔離された島で、15人の調査隊は未知の化け物たちと出会い、生き延びる為に戦う事になる。そんな中、鉢植はアネモネと名乗る植物生命体を身体に宿す。

 

 とにかく書き込みと画面の密度が高く、新人とは思えない画力。これで連載続けられるのか?と心配されていましたがクオリティを落とさずに最後まで走り切ったのは凄いと思います。

 

f:id:jiholeopardon:20260608214435j:image

f:id:jiholeopardon:20260608214440j:image

 

 一枚絵のインパクトも高く。画面の暗さも相まって他の作品とは違う異質なホラーの雰囲気はガッツリ。ホラー系の画面作りだけどキャラ自体はちゃんと可愛いのも◯。

 

 ただ高い画力ながらデフォルメ感が少ないのでパッと見で誰なのかわからなかったりするのはちょっと課題だったと思います。リアルよりに描いてる分極端な身長とか髪型でなく、表情の変化とか海とか風とかの環境変化もちゃんと反映するので尚更コマ単位でのキャラの把握が難しいところがありました。

 

 異能バトル+異種族バディ+サスペンスという欲張りセット。

 動物バトルでアクションしつつ、バディとの仲を深めて協力してわかり合っていき、変異した自分の存在に悩み、人類の存亡に関わる壮大な謎を解き明かす。そんな構想は随所に感じられます。

 

f:id:jiholeopardon:20260608215319j:image

身体に巣食う、明らかに人類と感覚の違う異種族アネモネ

 

f:id:jiholeopardon:20260608214923j:image

主人公自体がアネモネとの適合で人類の範疇から逸脱していく

 

 期待感はあったんですけど、序盤のレギュラーキャラっぽいあんちゃんが即死展開とかクリーチャーの異形性でせっかく作り上げたダークな雰囲気が、主人公が不死身すぎて危機感が薄くなってしまったのは痛かったです。

 行方不明の友人を探しに来たという同期の弱さ、脇キャラのキャラ立ての弱さあたりもちょっと話に引き込まれてにくかったです。主人公以外の序盤のメイン3人、何しに来てるのかわからないですからね……。

 敵か味方かわからない強者ポジションのウエアウルフ少女灰狼ちゃんとか美味しいポジなのに全然最後までいきてないですし……。

 

 アネモネ、狼、カメレオン、クラゲという、仲間の中で主人公が最も特徴を出しにくい植物だったのも弱かったです。多分敢えて植物にしたら理由はあったと思うんですが、そこまで辿り着けませんでした。

 

 序盤の目標、「研究所に行き生存者を探す」ミッションで敵側の存在、アネモネの因縁あたりは明かされるのですが、次の展開でスーツ着てパーティーという唐突な方向転換。全体的にガラパゴス諸島が生きてないんですけど、これは打ち切りが決まった作者がせっかくだからスーツ着た主人公パーティとかウサギ獣人のお茶会とか描いてやろうと思ったのか……。前エピソードでいったん退場したロベリアがすぐ出てくるあたり、本来の予定ではなさそうなんですよね……。

f:id:jiholeopardon:20260608221011j:image

 

 そんなわけで結末に向けて爆速で鉢植とアネモネのコンビが親密度をあげてしまうので、アネモネはちょっと悪態ついてたけど一瞬でデレたチョロインになってしまうのでした。

f:id:jiholeopardon:20260608221002j:image

 

 ラストは存在しない記憶で、今までになかったエピソードを振り返ってエンド。一応目的だった親友と再開して、心の強さも手に入れて、成長したよ。ってまとめて入るんですけど、取ってつけた感は否めませんでした。

 

f:id:jiholeopardon:20260608221225j:image

 

 

 

 最後にちょっと読んだ人が誰もが考えた事んじゃないかということを書いておくと、

 

 「なんらかの因子により遺伝情報を取り込んだ動植物の能力を使えるようになった訳あり調査隊の面々が、閉鎖環境で独自進化を遂げたクリーチャーとバトルを繰り広げながら、政府の目的、事故の原因を探っていく」

 

 この設定ですね……、テラフォーマーズと丸かぶりですやん……。いや、地獄楽みたいとかも言われてましたけど、僕初見の感想、寄生獣+テラフォーマーズやったですもの……。

 

「なんかなあ、おかんが言うには動物の能力を宿した人間が戦うらしいねん」

 

「テラフォーマーズやないか。それはテラフォーマーズや。テラフォーマーズはスズメバチの毒針とかシャコのパンチ力とかプラナリアの再生力とかで戦うもんな」

 

「でもオカンが言うには、身体に宿った生き物と相棒になるらしいねん」

 

「ほなテラフォーマーズとちゃうかあ」

 

「オカンが言うには閉鎖環境で独自進化した地球の生物とは一線を画した戦闘力を持つ生物と戦うらしいんよ」

 

「それはテラフォーマーズや。テラフォーマーズは火星で独自進化した異常に強い上に人型のゴキブリと戦うからね」

 

「でもオカンが言うには主人公が気弱ないじめられっ子らしいねん」

 

「ほなテラフォーマーズちゃうか、テラフォーマーズの主人公は一部も二部もめちゃくちゃ武闘派やからなあ」

 

「でな、オカンが言うには戦う動物のやモデルは狼、カマキリ、ヒトデ、ラーテルとからしいねん」

 

「そらテラフォーマーズや。狼とかカマキリは他の漫画でも出てくるけどラーテルやヒトデをモデルにした動物を出すんはテラフォーマーズやろ」

 

「でもオカンが言うには主人公の能力は植物らしいねん」

 

「ほなテラフォーマーズちゃうかあ」

 

 

 いや、動物の能力を使ったバトル自体はライダーや戦隊は言うに及ばず、ジャンプでもグリーンアイズとかヨアケモノみたいな前例は存在するんですけど、動物解説パートとか見せ方とかがどうしても連想してしまったんですよね。

 

 

累々戦記 2024年 雨宮ケント

累々戦記 全3巻 2024年 雨宮ケント

 

f:id:jiholeopardon:20260523192731j:image

 

 警察官の祖父の影響から不条理や理不尽を嫌い「正しく生きる」朝風弥宵は、それ故に偽善者と嫌われていたが、転校生・涅森蒼葉と出会ったことから人の心の影と結びつく怪異「累」の起こす事件と関わるようになる。

 

 真面目すぎるが故に孤独だった弥宵と、重い過去故に奔放な蒼葉の異能バトルバディ物。正直作画もキャラ立ちも悪くないんですけど……。

 

 4巻以上続いた為このブログでは取り上げていませんが、この頃の新連載は、人造人間100、アスミカケル、ツーオンアイス、魔々勇々などが打ち切られ、同期のグリーングリーングリーンズも打ち切り。クオリティの高さの割に打ち切られた作品が多く、読者ながらジャンプ連載レースの厳しさを感じずにはいられませんでした。2022年頭のあかね噺以降累累戦記までで生き残ったのは一ノ瀬、いろは、キルアオのちょい延命組、長期連載は鵺とカグラバチのみです。

 

 そんなわけで僕は割と好きなんですけど厳しい戦いを強いられました。

 

 序盤は1話完結で「累」と闘いながらキャラの掘り下げ、能力の説明、新キャラの配置をしようとしており同級生ヒロインとか、シスコン同業者とか配置しつつ一般人主人公弥宵の戦力化を行うという堅実な展開。定石みたいな方法なんでこれでダッシュできなかったのは痛かったです。モブ美形先輩の2話がややこの話二話でする必要あったか?というところ。後述する要素モリモリヒロインを早めに出していればだったかな……。

 

 一巻段階で厳しかったのか、二巻からは対人バトル展開に突入。シスコン銃使いとか腹話術ノーパンスリットえちえち天然体術使いとか票の取れそうなキャラを出しつつ、失った妻との日常を取り戻す為「累」で周囲の人間に自分の日常を演じさせる癖を感じる敵キャラとか、セーラー服淫紋ヘソだしミニスカ黒ギャルとか敵組織を出してきます。

 判断が早い。

f:id:jiholeopardon:20260523200348j:image

f:id:jiholeopardon:20260523200640j:image

腹話術スリットノーパンえちえち体術使い

f:id:jiholeopardon:20260523200444j:image

下乳セーラー服淫紋ヘソだしミニスカ黒ギャル

票取れそうだったヒロインズ

 

 多分BLEACH影響が大なんですけど、キャラシート作ってしっかりキャラ立ててから投入してるっぽい作り。味方グループも敵陣営も顔見せして異能バトルになるんですけど、ちょっとジェネリックBLEACH臭がしちゃいましたね……。

 

 味方陣営のライダースーツ巨乳不良メガネ姐さん(タバコ吸ってそう)とか生意気ちびとか、性格悪そうな関西弁とか活かせそうで活かしきれませんでした。

f:id:jiholeopardon:20260523201051j:image

敵を重くする異能とかね。

 

 最強格ロリババア保護者とか味方側最大戦力っぽい中華系ロンゲ三つ編み冷血師匠とかポテンシャルは高いんすけど!

やりたいことは痛いほど伝わってくるんすけど!

f:id:jiholeopardon:20260523201655j:image

 

 あと、敵が本気出すとキーワードと共に形態を変えるんですよ。

 なん……、だと……。

 

f:id:jiholeopardon:20260523201935j:image

 これは……、「卍解」……?

 

 成長や脅威の目安となり、使えるものはワンランク上の存在とわかり、「本気を出した」事が説明なしに伝わり、決めゴマやヒキに使える「卍解」って漫画的には反則的に使い勝手がいいのでまあ「領域展開」とかもそうなんですけど、うーんこれは。ちょっと先達の影響から抜けきれなかった感。まあ、師匠は天才なので。

 

 とはいえ三巻できちんと決着はつけて終わっているので、個人的にはとても好印象でした。

 

 その癖を活かせば。

 もっと癖を出して走るんだっ!

 

と思ってたんですど、現在連載中のキナトはどちらかというと薄味目になってて個人的には残念、

グリーングリーングリーンズ 2023年 寺坂研人

グリーングリーングリーンズ 全三巻 寺坂研人 2023年

 

f:id:jiholeopardon:20260601202436j:image

 

 ビーストチルドレンの寺坂研人がゴルフで帰還。

 僕これめちゃくちゃ好きなんですよ!勿論打ち切り喰らってるんで、相応のマイナスポイントはあるんですが、連載中でも割と好評の声を複数耳にしたのでかなり惜しかった作品だと思います。個人的にはこれまで打ち切り漫画ブログで取り上げてきた中でも1、2を争うおすすめ漫画、ここ5年だとダントツで好きです。

 

 前作ビーストチルドレンの時からそうなんですが、超常能力などのないリアル路線のスポーツを、初心者にもわかりやすいように丁寧に描きつつ、スポーツを楽しいと思うポイントをクローズアップしするという愛のある(けれど地味な)作風です。

 

 好きなものも熱くなれることもない、やりたいことがなくて周囲との温度差を感じる主人公・八枝崎はゴルフのプロを目指すクラスメイトの王賀と出会いゴルフに惹かれていく。

f:id:jiholeopardon:20260601204844j:image

 

 この漫画の凄いところは、何もない状態の主人公が、ゴルフに惹かれて、ハマって、うまくいかなくて、試行錯誤して、努力して、それが楽しくて、という部分を物凄く丹念に描いているところ。

 勝負とかバトルとか因縁とかじゃなくて、誰もが、何かに熱中した時に感じたやる気とかもどかしさとかを共感できる形でエピソードを積み上げてくれます。 

f:id:jiholeopardon:20260601204525j:image

ハマるまでの心情描写とか、すごく丁寧

f:id:jiholeopardon:20260601204533j:image

f:id:jiholeopardon:20260601204904j:image

 

 1巻まるまるゴルフのラウンドをせずに、打ちっぱなしで練習してるだけなのに、熱いし、面白いし、主人公を好きになる。

 よく考えたら凄い。

 

 だって部活のレギュラー争いとか、全国大会とか地区大会出るとか、そんなの何もないんですよ?

 ゴルフ始めて、難しくて、だんだん楽しくなって、初めてラウンドすることになって、めちゃくちゃ叩くんだけどダブルボギーだして名前のついたスコアが取れたと大喜び。

 

 これだけだと、昨今流行りのゆるい趣味系のようですけど、そういう現実的な描写をしつつ、才能がないなりにのめり込んでいく主人公が成長して、戦う人間になっていく姿も描いていきます。

f:id:jiholeopardon:20260601205355j:image

 

 サンデーかマガジンでじっくりやらせてくれたらホンマ名作になった可能性あると思うんですけど……。

 

 人気が取れなかったのは上記の通り、流石に展開が遅い、ゴルフというとっつき悪いスポーツが題材、バトル要素や主人公の飛び抜けた活躍がない。あたりでしょうか。リアル路線のハイキューでも変人速攻という飛び道具がありましたし、主人公コンビに他者にない武器があったので、流石にクラスにいそうな普通の少年が主人公なのはパンチが弱かったろうと思います。そこがウリではあるんですけど、ジャンプですからね……。

 

 一応ビスチルの反省からか、1話からスク水ヒロインを出して華やかさを出しつつ、競技への向き合い方、解説、プロの戦い、二人の関係性の変化を、素人一般人八枝崎サイドと、プロ志望の王賀サイドで描くことで、話の幅と厚みを出しています。

f:id:jiholeopardon:20260601210017j:image

 ちょっと評判になってたスク水ヒロイン。話の展開上体育のプールをやる必然性はないので、ヒロインの水着姿を出すためだけに1話の冒頭がプールから始まります。あざとくていいぞ。

 

 この漫画、スポーツへのハマり方、努力と成長の描き方が丁寧なのは前述の通りですが、もう一つの売りが主人公とヒロインの関係性です。ボーイミーツガール物としてもとてもよくできており、文字通り八枝崎の人生が王賀ちゃんと出会ってから変わっていき、王賀も八枝崎に影響を受けていくのが見てて気持ちいいです。

 互いにものすごく影響されているのに! ラブとか恋とか付き合うとか全然出ないんですよ! でも、もうそこまで

 

f:id:jiholeopardon:20260601211105j:image

 柄にもなくラウンドで無茶した後の打ち上げの王賀ちゃん。「(いつもしないような無茶なチャレンジをしたのは)なんでだろうね」ってわざわざ絡みに行ったり。

f:id:jiholeopardon:20260601211108j:image

 王賀ちゃんのキャディーとして大会で怪我を押して勝ちに行く王賀の姿を見た八枝崎の感想。

 もう付き合っちゃえよ。

 

 そんで、クール美女王賀が八枝崎なだけ冗談を言って、「王賀でも冗談とかいうんだな」と言われた返しで「あなたにだけはね」

と言った後の表情。

f:id:jiholeopardon:20260601211650j:image

 

あー、もうキュンキュンするんじゃあー!

 

 という事で、ゴルフ漫画としてもボーイミーツガールものとしてもオススメのグリーングリーングリーンズでした。読もう!

 

 単行本おまけページはビスチルの時と同じく初心者向けルール解説と、本編の少し後のおまけ漫画が収録されています。ビスチルの時と違って多分読まれ易さを重視してヒロイン起用してるんですよね。寺坂先生この辺りのサービス精神もめちゃくちゃ旺盛なんですよ。

 

 明らかにビスチルの時より筆力は上がっているので、次回こそはブレイクしてほしい作家です。

 

アイスヘッドギル  蜂矢育生 2023年

アイスヘッドギル  蜂矢育生 全2巻 2023年

f:id:jiholeopardon:20260503224134j:image

 

 父は王都を守るニーズヘッグ戦士団のヘッドだったが王子を殺害して消息不明。息子のギルは王都を追われ、王都から離れたウニ島に漂着していた。

 誇り高い父に何が起こったかを知る為に、父の手記をある手がかりを追ってギルは冒険の旅に出発する。

 

 ド正統なファンタジー冒険物。

 故郷を追われた少年、汚名を着せられた父、家族も味方もいない孤独な旅路、それでもまっすぐな少年の成長、甦る地獄のリッチ、聖遺物、父の手記に残る謎の言葉、伝承。謎のブローチ。雪と氷の国を舞台に地獄のリッチと戦う斧使い。

 正統派過ぎて、ジャンプでこれウケるの?と心配されていた北欧神話系ファンタジー。

 

 まず斧使いの主人公というところで、バクマンのサイシューコンビが頭に浮かびます。

 

『刀』。 

 

 緋村剣心、黒崎一護、竈門炭治郎達のスタイリッシュ剣技に対して、

斧……、だと……。

 

 どうしても、ドワーフ、パワーファイター、タンクのイメージ。

 ジャンプの斧使いなんてクロコダインさんを筆頭にワンピの戦桃丸、BLEACHの兕丹坊ですよ?

 後は、これ斧か? みたいな悲鳴嶼行冥さんとか斑目一角の龍紋鬼灯丸とか 影慶の犇斧ヌンチャクとか武装錬金のヴィクターのフェイタルアトラクションとか。

 

 他誌も含めれば、今でこそシュタルクとセンシがいますけど、大体ザクにゲッター、せいぜい徐晃とジョージワシントンくらいしか浮かんできませんよ?

 

 というわけで、当たれば新規軸の主人公ですが、武器選択の時点でなかなかのギャンブル。

 バトルものだと本来マイナー武器のトンファー(伏黒恵、雲雀恭弥、アルバトロナル・エイジ・アスカ)や、トランプ使い(ヒソカ、トバルカイン、ガンビット)らの方がメジャーなくらいで糸使い(秋せつら、マカパイン、マチ、ドフラミンゴ)などはバトルものではレギュラーメンバーの武器。

 割と不遇気味の鞭使いでも、REBORNのディーノ、封神演義の聞仲、幽遊白書の蔵馬というメジャーキャラクターがいるため、斧使いの不遇さが目立ちます。

 

 本編では強さの目安として、1回転毎に威力と共に狩れる対象の獲物の名称に技名が変わっていくシステムを採用しており、

1回転カリブー狩り、

2回転ムース狩り、

3回転グリズリー狩り、

4回転シャチ狩り、

5回転クジラ狩り、

6回転タイガ狩り、

7回転でどんなものでも切断できるドラゴン狩り、

更にそれを上回る8回転とステップアップがわかりやすい形で示されます。この辺りは悪くないかも。

f:id:jiholeopardon:20260504222206j:image

 

決めゼリフは、「斧で俺は誰にも負けない」

f:id:jiholeopardon:20260504223336j:image

ことある毎に展開される決めゼリフ

f:id:jiholeopardon:20260504223308j:image

単行本の帯折り返しまで

 

 しかし武器周りのお話は上手く活かしきれたとは言い難かったです……。

 

 ストーリーの方といえば、まっすぐで素直で、素直すぎてうっすら狂気を感じる善性の主人公と、死者を操る地獄のリッチ(まあ鬼です)が倒された後に会話したりというテイストに鬼滅の影響が濃厚でした。

f:id:jiholeopardon:20260504130054j:image

性格のいい主人公

 

 息抜きコマとか絵面の方でも影響を感じたのでアシさんだったりしたのかしら。

 f:id:jiholeopardon:20260504062617j:image

f:id:jiholeopardon:20260504062632j:image

 

 死者の体を使い生前と全く違う行動をとるリッチによる悲劇性、わかりやすく回転数毎に攻撃力(と隙)が上がっていく必殺技。聖遺物による特殊能力。性格が良くヘイトを買いにくい主人公。

 今時のジャンプらしくマイナス点は少なく、ヒキのポイントも作っていたんですが、どうにも地味な印象と、敵がはっきりしないのが痛かったです。

 

 旅立ちの1話、変わってしまった人に振り回される人達と生前の記憶読み取り利用するリッチ、僅かに残された死体に宿る意識というリッチの悲劇性を示す2話、仲間の登場する3話、強さレベルを示す4、5話と、かなりしっかりと目的を持った話作りなのですが、6、7話で登場する父の行方を知る「真王の血族」の目的、キャラクター、組織の規模と能力あたりが明かされないまま、人間側の父を追放した灰氷国の王との対面へ話が進んだため、焦点がどこなのかわかりにくくなってしまいました。敵は人間の王なのか、リッチの王なのか。上手く運べば三すくみの戦いという面白い展開になったとは思うのですが……。

f:id:jiholeopardon:20260504130243j:image

愛する人を操る敵と戦うという悲劇的要素

 

 王の思惑がわかりにくく、更に王の側近の道化が何やら黒幕っぽいのが、謎が謎を呼ぶ展開というよりは、敵が誰で何のために戦っているのかわからない状態になってしまいました。

f:id:jiholeopardon:20260504120525j:image

思わせぶりなことを言うだけ言って終盤即死する道化

 

 一応1巻のヒキポイントとして、父と並ぶ戦士団ヘッドとしてグレイティストが登場して話を引っ張るのですが、戦士団ヘッド集結と敵の真王の王子終結が連載終了間際だったちめ、この辺りのカッコよくて強い敵が早めに欲しかったところではあります。

 

f:id:jiholeopardon:20260504065452j:image

ド派手な登場、強さと愛嬌で人気が出そうだったグレイティスト。

 

f:id:jiholeopardon:20260504125344j:image

f:id:jiholeopardon:20260504125350j:image

 

 終盤で勢揃いする敵味方陣営。なお活躍する尺の余裕は……。

 

ドリトライ 雲母坂盾 2023年

ドリトライ 全2巻 雲母坂盾 2023年

 

f:id:jiholeopardon:20260401194350j:image

 

 ボーンコレクションの雲母坂先生の二作目。全2巻ながら、「心の強さが違えんだよ!」と「ただの◯◯じゃねえぞ、ド級の◯◯、ド◯◯だ!」というミームを作りここ最近の打ち切り漫画の中では随一の爪痕を残した打ち切り漫画です。

 

 こういうのが読みたくて、打ち切り漫画を読んでるーっ!

 

 戦後の混乱期。戦災孤児の大神青空は結核の妹の入院費を稼ぐ為、裏社会の拳闘大会に出場することになり、出征して帰ってこない元拳闘王者の父の「心が強いから強い」という言葉と生来のタフネスを武器に戦っていく。

f:id:jiholeopardon:20260402173013j:image

 

 作者自身がシンプルに熱くて燃える漫画を描いてみたいということでチャレンジした作品とコメントしていますが、意外にもこの発想をスタートにかなりロジカルに組み上げています。

 タイトル回収回でわかるように、ド級のリトライでドリトライ。テーマは「諦めずに挑戦し続ける心の強さ」。

 

 シンプルに熱く、諦めずにリトライしていく主人公。ドクストの千空みたいな地道な努力ではなく、昭和の熱血主人公のテイスト。

 そうなると現代以降では、もうちょっと空気感的に厳しいので必然的に過去の話になります。過酷な状況でも諦めずに、となるとまず出てくるのは戦後の混乱期。やられても何度でも立ち上がる主人公だと戦争なんかの命懸けの戦いには向かないので題材は喧嘩かスポーツ。

 

 こういった流れで 戦後昭和の拳闘漫画という珍しい題材に、洗練よりも泥臭さと根性というちょっと懐かしいテイストの本作ができあがります。このままだとあまりにも地味なので少年誌らしく必殺技、修行、血統を味付けに。

f:id:jiholeopardon:20260402173032j:image

 

 病気の妹を治療するため拳闘をするしかなくなるのに2話、3話で雑魚と戦い出場権を得て4話でライバルが登場、右腕だけ太いなんか既視感のあるライバルと戦うのに5〜8話。

 

f:id:jiholeopardon:20260402172005j:image

f:id:jiholeopardon:20260402172008j:image

なんか既視感。

 

 ちょっと状況説明と、最序盤の敵との戦いが長かった感じです。2話が殆ど進展がなく、1話のラスト「あんた拳闘に向いてるよ」で、2話のラストが「拳闘やってやるよ!」なので、金を稼ぐために拳闘をやるしかないですっ飛ばしてもよかったんじゃないかな。

 

 殴られ慣れてるから打たれ強いタフネスがうりの主人公というのも使い古されたパターンなので面白みにかけた為、盛り上げる為なのか、8話からは拳闘会のトップに君臨する5人のボクサー「五光」の存在が示唆され、そのうちの1人、内部に衝撃を与える浸透勁みたいな技を使う兄貴分の実力が明かされます。まあ、全て捨て設定になってしまいましたけど……。

 さらに、謎の使い手が現れ、技術の必要性を痛感する主人公は修行をすることに。展開が‥‥、テンプレすぎる‥‥ぜ…。

 

f:id:jiholeopardon:20260402173141j:image

二番目の敵、ヒロポン中毒の元父の部下

ジャンプでこの絵面はゆるされるのか?

 

 ちなみにこいつ、父の技術の正統後継者と嘯いて登場しますが、軍隊で主人公の父に教えを受けたその他大勢の1人で、正統でも後継者でもなくない? いや、技を継いでるから後継者と言えなくもないけど、正統とは……?

 

 最終的に父と対決するのですが、打ち切りが決まったからか、それなりに地に足のついた戦闘をしていたはずがいきなり異世界能力バトルみたいな領域に。

f:id:jiholeopardon:20260402173823j:image

海を割る父

f:id:jiholeopardon:20260402174032j:image

万物の構造の芯を捉えて瓦解させる力

 

 おい、いきなり車田正美の漫画みたいになるな。

 

 最終的に、心が折れそうになる青空を、周囲の人間が立ち上がって応援し、立ち直ってタイトル回収。

 ド級のリトライ、ドリトライだ!

f:id:jiholeopardon:20260402174505j:image

 

 余談ですが津尾さん、同時期に公開されていたゲゲゲの謎を見に行ったところ、劇中で「ただの狂骨ではないぞ!」というセリフがあった為、脳内で「ド級の狂骨、ド狂骨だ!」とアテレコされてしまい映画に集中できませんでした。

 同様の犠牲者多数。

 

 最終回はは令和まで時代が進み、受け継がれる心の強さで話は終わります。

 

 打ち切りながら描きたいものは描いたわねという終わり方でした。

 

 ちなみにこの、「何度でも(心の強さで)立ち上がる主人公」、自然と鍛えられて天然の頑健さと膝のクッションをもつ幕の内一歩や、鍛錬の末選ばれた北斗神拳伝承者とか聖闘士とかを除いても、ドラえもん帰還前のジャイアン戦ののび太を代表に昔はよく見た存在だったんですけど最近ではめっきり見なくなっちゃいました。

 東リべ終盤のタケミチが久しぶりのコレ系キャラでしたね。

テンマクキネマ 2023年 原作 附田祐斗 作画 佐伯俊 

テンマクキネマ 全3巻 原作 附田祐斗 作画 佐伯俊 2023年

f:id:jiholeopardon:20260413011611j:image

 

 食戟のソーマコンビが送る青春映画漫画。

 体が弱く外で遊べない幼少期に映画に救われた映画少年・新市元は、映画館で脚本家の幽霊・天幕瀧飛虎に取り憑かれたことから、彼を成仏させる為に同級生の売れっ子女優・倉井姫希と映画部の友人とともに映画を撮る事になる。

f:id:jiholeopardon:20260413011635j:image

 

 所謂取り憑かれものとか背後霊ものの映画版。ヒカルの碁、overtime、キックスメガミックス、クロガネ、Bの稜線の系譜です。基本的には題材となる分野の達人・名人が主人公しか見えない霊となって取り憑き、素人主人公を導くことで成長していくバディ物です。

 

 素人主人公の努力と成長、達人幽霊の最強チートの二面を1人で描写できる上に、主人公の成長にその道の達人が師匠についてるという理由づけがあり、更に2人の会話により現状の説明や上級者による解説が自然に入れられるという超便利手法なのですが、ヒカ碁以外の成功例がほとんど存在しません。

 

 遊戯王は三つ目がとおる、バスタードなんかの二重人格物、デスノートはバディが説明役を担う点では構造は似てるのですが、リュークの立ち位置がほぼ傍観者な部分と主人公が自分だけで完結してる能力なのが決定的に異なります。成功例何かあるかしら? 忘却バッテリーは自分自身がバディという珍しいパターンで一応成功例かしらね。

 

 やる気があるなら既にその競技を始めているはずなので、やる気(興味)がない主人公にその競技をやらせる課程でどうしても出てくる幽霊側の強引さがヘイトを買ったり、納得いかない理由で競技を始める違和感、展開上必ず必要となる修行パート、その後の急速な成長の理由が必要などスムーズに読ませるハードルが高いのと、物語の構造上展開がどうしても先行作品に似てしまうため既視感が出てしまう事などが理由でしょうか。

 

 成功作のヒカルの碁ですら、最序盤はヒカルの言動が失礼だったり傲慢だったりと、小学生だからまあ……と、ちょっと入り込みにくかったのを、平安人のサイの可愛さと神秘性で読ませていたので、この辺りの匙加減が難しいところです。

 

 テンマクキネマは、バディを脚本と監督に分けた事、主人公が映画に救われた超映画マニアで、ある程度素養があることでこの辺りの印象を緩和しつつ映画という題材を活かしてヒロインを即投入して話にも絡めています。

f:id:jiholeopardon:20260413011622j:image

 

 最近の作品らしく優秀で真面目で、映画バカ以外には欠点のない主人公に、気持ちいい友人の協力者、才能も理解もある美少女ヒロイン、結構上手くやってると思うんですよね。

 僕これ好き。

 

f:id:jiholeopardon:20260413012421j:image

 友人がいい奴なんですけど無味無臭&便利すぎ感はありました……

 

 先行作品で感じた物語構成における違和感やヘイトがほとんど感じられず、スムーズに主人公の才能を感じさせながら、映画の撮影、それを通したヒロインのトラウマの克服を自主制作映画の作成を通して描きます。区切りもよく、完成して賞を取って完結。

 

 悪いところはあんまりないんですが、こじんまり纏まってしまったところ、登場人物が基本的に皆いい奴なので読み口はいいのですが、あまりにも波風が少ないところ、そのため問題の解決が予定調和感が出てしまっているところなど、強いフックがなかったのが苦しかったです。サンデーで時間かけて連載してたら上手く行ってたかなあ……。

 

 読んでみたら悪くないんですけど連載中のヒキはあんまりなかったろうなという感覚。

 

 もう一つ、前作の最大の武器であった女子の可愛さと脱衣をほぼ封印、ラッキースケベもコンプライアンス的になし、皆が真面目に映画作りに勤しんでるので恋愛要素もなし。

 

 これ、己の長所を捨ててないですか? 

 僕の中の範馬勇次郎が、「持ち味を! 持ち味を活かせ!」と叫びます。

f:id:jiholeopardon:20260413013723j:image

f:id:jiholeopardon:20260413013750j:image

 一応水着シーンはあって、流石のエッチさなのですけど。

 これ以降は完全にサービスシーンすらありません。

f:id:jiholeopardon:20260413014210j:image

メイドくらい。

 今撮影の映画の役がこんな衣装で…、みたいな流れでいくらでもエッチな格好出せるのに!

 

 一応、単行本には本編後、姫希にハリウッドから声がかかり、女優としてステップアップするヒロインを応援して見送り、主人公はヒロインに見合う監督になろうと努力していくという後日談が収録されています。数年後、本編で示唆されていた、世界を席巻する天幕渾身の脚本の主演としてオファー出すシーンでエンディング。

 

 天幕の姿が見えるようになったのかも知れないヒロイン、など本来予定されていたエピソードを匂わせてるのが嬉しいです。

f:id:jiholeopardon:20260413013736j:image

 

 ヒキの弱さ、カタルシスの弱さであんまり話題にもならなかったんですけど、悪くはなかったんじゃないかなあ。

 中途半端にリアルな実力にしすぎて、主人公、ヒロイン共に鳥肌がが立つような才能の発露をみせられなかったのが惜しまれます。