津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

テンマクキネマ 2023年 原作 附田祐斗 作画 佐伯俊 

テンマクキネマ 全3巻 原作 附田祐斗 作画 佐伯俊 2023年

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 食戟のソーマコンビが送る青春映画漫画。

 体が弱く外で遊べない幼少期に映画に救われた映画少年・新市元は、映画館で脚本家の幽霊・天幕瀧飛虎に取り憑かれたことから、彼を成仏させる為に同級生の売れっ子女優・倉井姫希と映画部の友人とともに映画を撮る事になる。

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 所謂取り憑かれものとか背後霊ものの映画版。ヒカルの碁、overtime、キックスメガミックス、クロガネ、Bの稜線の系譜です。基本的には題材となる分野の達人・名人が主人公しか見えない霊となって取り憑き、素人主人公を導くことで成長していくバディ物です。

 

 素人主人公の努力と成長、達人幽霊の最強チートの二面を1人で描写できる上に、主人公の成長にその道の達人が師匠についてるという理由づけがあり、更に2人の会話により現状の説明や上級者による解説が自然に入れられるという超便利手法なのですが、ヒカ碁以外の成功例がほとんど存在しません。

 

 遊戯王は三つ目がとおる、バスタードなんかの二重人格物、デスノートはバディが説明役を担う点では構造は似てるのですが、リュークの立ち位置がほぼ傍観者な部分と主人公が自分だけで完結してる能力なのが決定的に異なります。成功例何かあるかしら? 忘却バッテリーは自分自身がバディという珍しいパターンで一応成功例かしらね。

 

 やる気があるなら既にその競技を始めているはずなので、やる気(興味)がない主人公にその競技をやらせる課程でどうしても出てくる幽霊側の強引さがヘイトを買ったり、納得いかない理由で競技を始める違和感、展開上必ず必要となる修行パート、その後の急速な成長の理由が必要などスムーズに読ませるハードルが高いのと、物語の構造上展開がどうしても先行作品に似てしまうため既視感が出てしまう事などが理由でしょうか。

 

 成功作のヒカルの碁ですら、最序盤はヒカルの言動が失礼だったり傲慢だったりと、小学生だからまあ……と、ちょっと入り込みにくかったのを、平安人のサイの可愛さと神秘性で読ませていたので、この辺りの匙加減が難しいところです。

 

 テンマクキネマは、バディを脚本と監督に分けた事、主人公が映画に救われた超映画マニアで、ある程度素養があることでこの辺りの印象を緩和しつつ映画という題材を活かしてヒロインを即投入して話にも絡めています。

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 最近の作品らしく優秀で真面目で、映画バカ以外には欠点のない主人公に、気持ちいい友人の協力者、才能も理解もある美少女ヒロイン、結構上手くやってると思うんですよね。

 僕これ好き。

 

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 友人がいい奴なんですけど無味無臭&便利すぎ感はありました……

 

 先行作品で感じた物語構成における違和感やヘイトがほとんど感じられず、スムーズに主人公の才能を感じさせながら、映画の撮影、それを通したヒロインのトラウマの克服を自主制作映画の作成を通して描きます。区切りもよく、完成して賞を取って完結。

 

 悪いところはあんまりないんですが、こじんまり纏まってしまったところ、登場人物が基本的に皆いい奴なので読み口はいいのですが、あまりにも波風が少ないところ、そのため問題の解決が予定調和感が出てしまっているところなど、強いフックがなかったのが苦しかったです。サンデーで時間かけて連載してたら上手く行ってたかなあ……。

 

 読んでみたら悪くないんですけど連載中のヒキはあんまりなかったろうなという感覚。

 

 もう一つ、前作の最大の武器であった女子の可愛さと脱衣をほぼ封印、ラッキースケベもコンプライアンス的になし、皆が真面目に映画作りに勤しんでるので恋愛要素もなし。

 

 これ、己の長所を捨ててないですか? 

 僕の中の範馬勇次郎が、「持ち味を! 持ち味を活かせ!」と叫びます。

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 一応水着シーンはあって、流石のエッチさなのですけど。

 これ以降は完全にサービスシーンすらありません。

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メイドくらい。

 今撮影の映画の役がこんな衣装で…、みたいな流れでいくらでもエッチな格好出せるのに!

 

 一応、単行本には本編後、姫希にハリウッドから声がかかり、女優としてステップアップするヒロインを応援して見送り、主人公はヒロインに見合う監督になろうと努力していくという後日談が収録されています。数年後、本編で示唆されていた、世界を席巻する天幕渾身の脚本の主演としてオファー出すシーンでエンディング。

 

 天幕の姿が見えるようになったのかも知れないヒロイン、など本来予定されていたエピソードを匂わせてるのが嬉しいです。

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 ヒキの弱さ、カタルシスの弱さであんまり話題にもならなかったんですけど、悪くはなかったんじゃないかなあ。

 中途半端にリアルな実力にしすぎて、主人公、ヒロイン共に鳥肌がが立つような才能の発露をみせられなかったのが惜しまれます。

イチゴーキ!操縦中 林聖ニ 2022年

イチゴーキ!操縦中 林聖ニ 2022年 全2巻

 

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久しぶりの! 全2巻! 

しゅごまる以来1年ぶりの全2巻打ち切りです。作者は「ジモトがジャパン」の林聖ニ、今回もギャグです。

 

 ジモト同様低学年向けドタバタギャグで作者の持ち味ではあるんですが、ジモトが最強ジャンプに移ったんだから最強ジャンプ向けなんじゃないの?感。

 

 ひょんなことからマッドサイエンティストの幼馴染に改造された上に体内から操縦されることになるイチゴーキが、キラキラした青春を名指す。

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 低年齢向けなんでそこまで気にしないのかもしれないですが、コンプライアンスが高い昨今だと、この手の自分の意思に反して改造されたり操縦されたりするの、ギャグとはいえ読者ウケどうなんでしょう。大人に津尾さんはちょっと序盤引っ掛かっちゃいました。

 

 勘違いされやすい万能ヤンキーの相棒とか、いやな体育教師とか学園の秩序を守るカリスマ生徒会長とかブラジル大好きなサッカー部のキャプテンとか一話完結で、学園で起こるトラブルを改造人間の力で解決するお話がメイン。

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 個人的にはメチャクチャ爽やかな改造人間作りが趣味のマッドサイエンティストの弟子が好きでした。

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 特筆すべきは1話完結の学園トラブル編を14話かけてある程度セミレギュラーを作ってからの15話。

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そ、卒業式⁉︎

 

正直終わったと思いました。

しかし、この後元に戻るための材料集めの旅に出てアメリカの刑務所に服役(16話)、出所したら未来から来た自分と邂逅(17話)、魔界で魔王とバトル(18話)、を経て結婚式(19話)で最終回となります。

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 別に学園もので終わらせても良かったんでしょうが、最後の4話はなんとか爪痕を残してやろうという意気込みを感じました。

 

 とはいえジャンプの低年齢向けギャグ枠はモリキング、しゅごまる、イチゴーキ、村上と苦戦が続きます。まあロボコが強すぎる。

ALIENS AREA 2022年  那波歩才

ALIENS AREA     那波歩才 全3巻 2022年

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 宇宙人が密かに地球に来襲している世界で、主人公は宇宙人に改造されたことで特殊な能力を持っており、宇宙人犯罪に関わった事をきっかけに、秘密の公的機関に所属することになり宇宙人犯罪を暴いたり、バトルしたり、役所仕事したり、少し助けてあげたりする事となる。上司は地球人ながら卓越した戦闘技術をもち、曲者揃いの部下を纏めている。

 

といえば、小学館漫画賞を受賞した 田村隆平先生のCOSMOSですが、ほぼほぼ同じ概要で一年前にスタートしていたのが今作、エイリアンズエリアです。

惜しぃーっ!

 

 いや、素材をどう扱うかが作家性で、コンセプト自体は珍しい話ではないので惜しいも惜しくないもないんですが、比較すると明暗が別れた理由が少しは垣間見れるかなとおもいます。

 

 まず父母を失い兄弟3人で暮らす家計をバイトして支える苦労人主人公が、宇宙人に襲われたことから警視庁公安部の異星人担当課通称「外5」にスカウトされるところから始まります。

 導入からめちゃくちゃセピア色の事情です。弟妹を養うために公務員になるなら願ってもないと勧誘を受ける主人公。

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上司となる写楽一に仕事を教わりながら、バトルしたり、異星人と戦う「兵装」の説明を受けたり、職場の同僚が出たりと複数の説明パートが展開されていくのですが、この辺りがあまりにも地に足がつきすぎてましたかね……。

 

 巨大な敵もヒロインも、ケレン味のあるバトルも主人公の見せ場もないまま、チンピラっぽい先輩と違法駐車UFOの取り締まりにいって大人の納め方を学んだり、宇宙生物の輸入の書類出し忘れの免許減点の現場に立ち会ったり、新人研修受けたり……。

 

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素直にいうこと聞かねえと拘留めちゃ長くなるけどそれでもいいの? 強圧的でも脅迫的でも遜るわけでもない大人の交渉

 

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妻の好きな水性生物繁殖してたら許可取るの忘れてた回

 

あまりにも! 地味!

 

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事件解決後に夕日を見ながらコーヒーで乾杯とか。

 

 なんかこう、雰囲気がビッグコミックなんですよ。ジャンプで警察ものならヒロインとギャグを活かしたATレディとかキルコさんとか、異能で戦う系のハイファイクラスタとかイリーガルレアとかじゃないですか。

 やってることがどっちかというとハコヅメなんですよ。

 

 なんで一番クローズアップされた女性キャラが、逃亡中の彼氏を待つスナックのママなんですか⁉︎

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 流石にこのままでは不味いと思ったのか12話からは評判の良かった「赤羽編」、過激な宇宙人排斥集団とのバトル展開に入ります。しかし、ここでも組織内の賛同を得るために根回ししたり、異星人に親を殺させて、子供を洗脳して末端の構成員にする組織という展開。リアリティはあるけどカタルシスがないんすよ。勇午とかでやりそうな話。

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 満を持して出てきた写楽と同格の10人の班長。まあ護廷十三隊隊長の顔見せが、コレ。

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 更にこのメンツで会議室で話しながら根回しと説得の回。

 

 写楽のバトルがあっても、主人公がひたすら無力なのもちょっと辛いです。無重力を防御に使うとかバトルの発想も面白いんですけど。

 これ写楽が主人公でよくない?

 環境も意思も才能も示されてはいるんですけどいかんせん成長と活躍の描写が少ないため、最後まで半人前の正義漢というエコーズのない康一くんみたいなポジションで終わってしまいました。

 

 写楽を上司に置くなら、せめてコスモスみたいに美少女キャラなら……。でもそれだと青年誌風味社会派刑事ドラマをやりにくいんですよね。

 

 ラストは、両親を宇宙人排斥組織の手回しで殺され、その尖兵として宇宙人とその協力者を殺害していたが、真実を知って組織に復習を誓った男の復讐と自殺を止めてほろ苦い勝利を得ます。この復讐者の独白や、生きたくないという迂遠な自殺に向かうスッキリした表情、ラストの描写などがこの作品を味わい深いものにしているんですが、まあ、ちょっと「少年向け」ではなかったですよね……。

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この後 極東ネクロマンスでもう一度ジャンプで打ち切りをくらった後、現在はビッグコミックオリジナルで、ちょっと陰のあるアクション時代劇「座頭市物語ノワール」を連載中。

 

持ち味、活かしたなあ

すごいスマホ 2022年

すごいスマホ 原作冨澤浩気 作画 肥田野健太郎 全3巻 2022年

 

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 みなさん、こんにちは、男坂から2年ぶり、地球の子から3年ぶりの打ち切り漫画ブログです。

 

 休んでるあいだにドリトライというド級の打ち切り漫画が出現したり、グリーングリーングリーンとかツーオンアイスとかアスミカケルとかギリギリ行けそうで行けなかった漫画がでたり、宇佐崎先生が復帰したり、ルリドラゴンが再開したりと、なんだかトピックが色々あったのをほとんど横目でみながらだらだらXやっておりました。

 

 未だにコメント書いてくれる方とか引用してくれる方がいたので、体調も戻ってきたしぼちぼち続きを書いていくかという事で、リハビリがてらブログを再開したいと思います。

 

 さて、今回は「すごいスマホ」、作画は「ジガ」の肥田野先生、原作は「戦禍のカノジョ」の冨澤先生。冨澤先生は原作付きで作画をやってた側なんですけど今回は原作に転身です。

 

 タイトルがどうにかならなかったんだろうかとは思うんですが、文字通り世界の全ての情報にアクセスできる「すごいスマホ」(以下すマホ』を手に入れた主人公探来田究(さくらだきゅう、通称Q)が「すマホ」ホルダー同士の争いに巻き込まれていくというサスペンス劇。もし「◯◯」というものが存在したら、という出発点から話を膨らませていくSF的思考実験作品でもあり、デスノート的知力バトルでもあります。

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 主人公・Qは小さい頃に行方不明になった弟を探すこともできない現代の科学に絶望して無気力な日々を送っている元天才少年。

 序盤は、すマホを手に入れて検証を行う説明パートで、徐々に開示されていく情報から、主人公の頭の良さとすマホの能力、明らかに現行人類を超える技術によるものであることが示唆されます。

 

 主人公のキャラクター、善性、ヒロインとの関係性、過去の弟の事件を解決するべくやる気を取り戻す過程まで描いてくれているんですが、順を追って書きすぎてテンポが少々悪くなってしまいました。シンプルなデスノートと違ってやれることが多いスマホである分、汎用性が高すぎて、できることの説明と検証に時間がかかったのがやや辛めです。

 

 原作付きだけあって割と段階踏んで説明してくれてるんですけど、ライバル関函全一郎登場が4話、互いの正体あばきを経由して、バトルの本筋である仲間集めの第二フェーズに入り、敵か味方かの曲者揃いのすマホホルダーが登場したのが15話だったのはちょっと遅かったです。

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最大のライバル関函全一郎

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すマホホルダーたち

 

 熱血系相棒、内気人気歌い手、単純系プロレスラー、承認欲求暴露系ユーチューバー、臆病な童貞正義漢、お水経営者、サイコパス復讐者、現実路線の調整者。色々エピソードを考えていたはずですが、ほとんどは顔見せだけで終わってしまいました。

 

 その分、最大のライバルであり、頭脳とルックス、弁舌と財力とカリスマ性を持つ全一郎様に尺を割いていたのですが、一人でワイングラスを天井にぶつけてキラキラと舞い散る破片の中で格好つけたり、フリスクを自分に出すことだけに喜びを見出すよう部下を調教したりという面白い描写があったため一部で評価されていましたが、ガッチリと読者を惹きつける魅力までには達しなかったかな……。全てを持ち合わせた最強のライバルの割に小物感が強かったんですよね……。

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 あと頭脳戦に巻き来ないように一人で戦ってるので、ヒロインが空気なんですよね。可愛いのに。

 

 後半登場のレイも扱い的には軽く、女性キャラでは瀬尾水刑事が一番掘り下げられたキャラでした。

 

 ヒロインを、ヒロインを活かせ!

 

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こんなぶち抜きで描いてくれてるのに……。

 

 

 結局話自体が前哨戦で終わってしまい。本題である仲間集めパートを匂わせて終わります。単行本では後日談が掲載されていますが肝心の決着パートは描かれていません。

 

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 ドクストなんかもそうなんですが、こういう、明らかに「人類のレベルを超えた技術」は、ドキドキ感はあるんですけど、根幹がわからないから魅力的な部分があるので早めにネタバレされちゃうと冷めるのはあるなー、と思いました。最後まで引っ張ったドクストはえらいです。

 

 逸脱した天才の作った技術、未来世界からなんらかの理由があってもたらされた技術、異星人の技術、異世界技術、スキルとか異能力的なもの、オカルト的なもの、神もしくは上位次元からの介入なんかが候補になるんですけど、後半に行くにつれて、なんらかの制約が論理的に示されない限り話がなんでもありゲームになってしまって緊張感を削いでしまうんですよね。その辺りの扱いはちょっと微妙な感じではありました。

男坂 遂に完結! なんですけど……

 本編を読んだことはなくてもラストの未完のページを見たことはある。そんな伝説の打ち切り漫画•男坂が39年の時を経てついに完結しました。

したんだよ。しちゃったんだよ……。

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 まあ、だいぶモヤモヤした終わり方というか、強引なエンドマークの付け方をしたので言いたいことはいっぱいあるんですが、曲がりなりにも完結までこぎつけたことは、尻切れとんぼで続きが読めない作品の事をかんがえると、ファンにとっては幸福だったと思いたいです。バスタードとかガイバーとかガラスの仮面とかNANAとか皇国の守護者とかバチバチとか……ね。

 

 車田先生も69歳なので、40年前の宿題を片付けられてホッとしたんではないでしょうか。69ですものね、漫画描いてるだけで立派ですわよ。

 

 車田先生については今更知らない人も少ないと思いますが、歴代4人しかいないジャンプでの巻頭カラー最終回を成し遂げた天才作家であり。(車田正美リングにかけろ」、鳥山明ドラゴンボール」、井上雄彦スラムダンク」、秋本治こちら葛飾区亀有公園前派出所」)


 二作ヒットを出せれば天才という業界で、一世を風靡してパワーリスト、パワーアンクルに少年たちを夢中にさせた「リングにかけろ」、星座カーストという言葉を作り、瞬間最大風速では黄金期随一であり、今なおスピンオフが出版される「聖闘士星矢」を描き、ジャンプ卒業後もB't Xのアニメ化、リングにかけろ2のヒットなど多くのヒット漫画を排出した天才です。


 「車田飛び」「車田吹き出し」「英字効果」「手を掲げながら必殺技名を叫ぶと敵が吹っ飛んでいくフォーマット」など独自の手法を確立しており、津尾さんのフォロワーには車田正美が好きすぎて、車田跳びを実行した結果頭を割って死にかけたやつがいるほどです。

 一般化はしませんでしたが、テリオスのコピー表現なんか津尾さん結構好きですね。

 

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車田メソッドが詰まった一コマ

「車田飛び」「車田吹き出し」「車田必殺技」


 デビュー作「スケバンあらし」全2巻でこけた後、「リングにかけろ」でメガヒットを排出。続く「風魔の小次郎」は不完全燃焼ながらも少年漫画版山風忍術決戦を描き好評を得ます。そして実績を積んだ車田先生が、満を辞して世に送り出したのが本宮ひろ志先生「男一匹ガキ大将」の車田版リメイク「男坂」。

 

 作者自身がこれを書くために漫画屋になったと宣言する熱量で1984年に連載開始するもあえなく3巻で打ち切り、その未練から最終回に大きく「未完」の文字が打たれたことと、これぞ打ち切りというラストシーンで話題となった漫画です。

 

詳しくは下記リンクの男坂の項目で

https://utikirimanga.hatenadiary.com/entry/2021/03/12/012501

 

多分この漫画で一番有名なラストシーン

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 3巻で終わったため、男坂は多くの消化不良要素があり、29年ぶりとなる2014年の連載再開で全ての構想が明らかになることが期待されていました。

 

男坂の消化不良要素

 

①武島将との決着

②喧嘩鬼の正体

③天魁星とか地闘星とかの星読み設定

④ジュニアワールドコネクションの世界のボス達

フレイザーより恐ろしいシカゴのラトーヤ

⑥20世紀最後の天才アインとキボウの決着

⑦世界を掌握する力をもつジャーメィンの実力

⑧突然傘下に入りに来た赤城のウルフの背景

⑨北の神威とは

⑩武島軍団二番隊隊長水無月征、三番隊隊長神代直人の実力、他の軍団長の存在

 

 結局国内で話が終わってしまったので、⑤⑥⑦の海外勢の補完はされなかったのですが、ラトーヤは再登場しましたし、③は消化しなくてもいいと言えばいい設定なので、連載再開後の男坂はほぼ全ての未消化要素を回収してくれたと言ってもいいと思います。すげえぜ、車田御大。

 

 じゃあ、何がモヤモヤするのか説明しようとすると背景を語らないと伝わらないと思いますので、そこから。

 

以下メチャクチャネタバレがありますので気になる方は本編を読んでからお読みください。まあこんなブログ読んでる時点で本編読んでるとは思うんですけど。

 

 まず大前提として男坂本宮ひろ志先生の「男一匹ガキ大将」抜きには語れないくらい強い影響を受けています。

 

 「男一匹ガキ大将」のアウトラインを説明すると、男気のあるガキ大将・戸川万吉が各地の不良と戦いながら子分を増やしていき、富士の裾野で東と西の日本中の不良が大決戦をやった結果、全国の不良を束ねる総番に登り詰め、更には日本を救う為、子分を率いて外国勢力と戦うまでになるお話。この頃から80年代までは不良ものといえば全国制覇ということで、不良はやたら抗争したり、学校を支配したり、みかじめ料をとったり、全国制覇を目指したりします。ドッ硬連、letsダチ公など実際に全国制覇をしている漫画多数。
 普通に警察沙汰では? 偏差値40なさそうなのに誰がその会計管理を?

 細えことはいいんだよ。

 

 流石に、全国統一は現実的ではないということで、不良漫画もその後、徐々に県内での勢力争いや、出てきても隣県の組織と戦うくらいになっていきますが、それはまた別のお話。

 

 ジャンプでは原哲夫先生も「猛き流星」でリメイクにいどんでいますし、あの横山光輝先生ですらバビル二世後に「あばれ天童」で同ジャンルに挑んでいます。言ってみれば男の生き様、成長ものであり、最高にかっこいい男を描くわけなので、書き手にとっても魅力的な題材です。

 馬鹿だが腕っぷしは強くて一本芯が通った人間で、男気があり、不思議と慕われる人間的魅力のある人物に戦った相手が惚れ込んで一家を形成。やがて日本を代表する勢力となる。って刃牙で描かれる「地上最強の男」と双璧をなす男の子の夢なんですよね。個のトップに対する集団のトップへの憧れ。

 

男一匹ガキ大将」の上手いところは、喧嘩の強さは勿論描かれるんですが、要所要所は「男の器勝負」で相手をねじ伏せるところ。暴走列車を事故らせないように学生を纏めたり、ちっぽけな不良にできることを示した上で虐げられた学生を集めて数でも圧倒したり、なんだかこの男についていけばでけえことができる感をだすのが上手い。

この辺りは流石の本宮先生。

 

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事故を防ぐために学生をまとめる万吉


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俺たちにもできることがあるんや!

 

 最終的に日本の不良を統一した万吉は、話のスケールを上げる為に、エリートとの戦いや国家の浮沈をかけ外国船団と戦うなど、話が一介の不良の関与するレベルでない政治的な話まで発展していきます。
まあこの辺りは引き伸ばしで作者は嫌々描いてたということですが。

 

 男坂は、「男一匹ガキ大将」の様な硬派な男達を描きつつ、「ガキ大将」を超えるべく車田御大が設定を練りに練ったことが伺えます。


 まず、ガキ大将にはいない、「帝王教育を受けた天才にして最強のライバル」武島将の配置。リンかけの剣崎で手応えもあったでしょう、この手のキャラは読者ウケもいい。ガキ大将の敵ボス堀田がどうしてもキャラとして弱いところを大幅に改善しています。

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 次に話の展開を早くするための舞台装置としての「喧嘩鬼」。このキャラだけどこから生えてきたっていうくらい世界観が全然違うんですけど、1話で敗北、2話で特訓、3話以降敗北した時とは一味違う大人物の片鱗を窺わせる理由づけとなります。

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 謎が多すぎるんですけど、お陰で挫折、師匠探し、弟子入り、特訓、人間的成長なパートを一話で終わらせています。

 

 ライバルと謎の師匠を配置をした車田先生は、さらに、政治の部分まで踏み込むこと、外国勢力と戦うことまで想定してWJCを登場させます。

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将来的に闘うであろう世界のJr.代表達、更にそれを彩る天才軍師。

 ここまで描くことができれば、確かに結局国内の権力争いに終始したガキ大将をスケールで上回り、天才武島将と競う事で男の生き様をより鮮烈にカッコよく描くことができたはずです。更に車田先生はリンかけで培ったバトル描写と美形による女性人気獲得という手札もあります。

 そもそもこの辺りの男の生き様論はリンかけ時代に何度もやっている内容です。車田先生にとってもお家芸のはず。

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 でも、そうはならなかった、ならなかったんだよロック。

 

 

 多分、続編で一番割を食ったのが見せ場がほとんどなくなった13歳でケンブリッジを卒業したキボウとそのライバルアイン。

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 あとおそらく、ジャーメインの参謀となって真の恐ろしさを発揮するはずだったラトーヤです。

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 キボウとアインの軍師対決、みたかったですね…。

 

 本編の話に戻り、大人物な風格と格闘術を備えた仁義のもとに仲間が集結していくのが男坂のメインストーリー。

 仲間集めパートの初めは、右腕となる闘吉との出会い。「ガキ大将」を踏襲して、喧嘩の強さではなく度量の大きさで屈服させます。こういうのがやりたかったんだよな感ビシバシ。

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闘吉自身もガキ大将の1の子分銀次を想起させる単純熱血子分。

 

 この後本編では、シカゴ勢との戦いで外国勢力の脅威を感じさせた後全国の硬派集めを行い、なぜか突然傘下に入った赤城のウルフ、今は仁義より大きいが仁義の将来性を見込んで傘下となった梓鸞丸を仲間にして東北を制圧。北海道の王、北のカムイと出会うというところで打ち切りとなりました。

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 さて、再開された男坂がこの予定されていたと思われる展開を消化できたかというと……。

 

 再開版男坂、まあ前の連載から時間が経ちすぎたのはあるんですが、拭いきれない違和感があります。

 

 まず、キャラクター設定。主人公菊川仁義は前作から太陽のような男と称されているのですが、基本的には硬派で、漢気があり、外国の侵略から日本を守る為に仲間を集めています。ここ重要。

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 多少コメディっぽい描写はありますが、カッコいい「男」として描写されていたんですよね。

再開版では、何故かこれが「無垢」な男としてクローズアップされています。そしてコメディ描写が多くなります。再開直後の北の大地編で既に無垢で動物に好かれるキャラとなり、打ち切り版の風をきってつっぱるとか硬派というイメージが全然なくなってしまいました。

 最後の硬派だったはずなんですけど、なんかこう竜の紋章を持った勇者みたいというか、車田先生キャラ変えすぎじゃないですか? そして何故か付与された動物と心が通じるという能力。硬派関係ねえ!

 

一巻の太陽から出てきたような男描写

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再開版の太陽のような男描写

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これが、これ。

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多分車田先生の中でカッコいいの基準が変わっちゃったんでしょうね。飄々としてるけど襲いくるものには容赦しない打ち切り版から、無垢で生き物に好かれ人と融和する再開版へ。

中学校をしめにきた闘吉連合100人を壊滅させるとか、喧嘩する時は命を賭ける、少年漫画なんでむべなるかななんですけど戦闘的な描写が多かったのが、ひょうげても戦いを回避するような描写が増えます。大人になったというか、年長者視線だと後者の方がカッコいいという気持ちもわかるのですがそれは硬派なんでしょうか……。

 

 誰にも負けない強い男になりてえから始まり、襲いくる外国勢力から日本を守る為に硬派が必要だ、に進み。日本を統一して一致団結する為に硬派たちを纏める。これが男として生まれて、見つけ出した一生に一度のやるべきことだという方向だったはずなんですけど再開版は後半部分の要素が薄いです。

 

 4巻から始まる仲間集めも、5巻のトラウマを持った男の鬱憤を受け止めることで仲間となるジュリー、4、6巻の喧嘩することでわかりあう神威と狂介はともかく、7巻の命の大切さを説く竜子と8巻の本気を出せない男と相撲をとるだけの南郷になると話自体もテンプレ的ですし、テーマが、とんがった若者がやり合いながら仲間になっていく切磋琢磨と成長ではなく、融和になってきます。

 

 この辺りの仲間一人集めるのに各1巻かけたテンポの悪さも再開版の面白さを削いでいます。

 

 ライバル登場、敗北、特訓、仲間集め、外国勢力の侵攻、軍団結成を3巻でまとめてた旧作と余りにスピードが違いすぎました。いや、闘吉、ウルフを掘り下げて男の器勝負してたジュリー編と本陣編はまだいいよ。折角巨大な武島軍団、対抗する仁義軍団、武島軍ではあるが独立独歩の気風を持つ西の三傑という構図なんだから、小競り合いをしながら武島軍団を食い破ろうとする野望を持った三傑とか、武島軍に押される仁義軍を密かに助ける三傑とか、どこにも与しない三傑とかを横軸に、縦軸に武島軍団との戦いを置いて、知略に薄い仁義軍が鸞丸以外配色濃厚となり天才軍師キボウの参戦が待ち望まれる展開であればキボウも西の三傑も生きたと思うんですよ。

 

 西の三傑を1人づつ、武島軍団との戦いを一つづつ、東と西の戦いはその後、と1局面に話を縛り、話が広がらない展開になってしまったため単純な構成になり盛り上がりませんでした。

 

 そして完結。もうこの辺りで体力も限界だし、伏線は大体回収したから風呂敷を畳もうということになったのでしょうか。

 

「富士の裾野で東西の軍団の日本統一をかけた決戦」とか「外国勢1万対仁義1人」とか「外国船団との戦い」とか、これがやりたかった感じはするんですけど全てが尻すぼみになってしまいました。

 

 戦わない東西軍団。どうみても陰腹の前振りで仁義に別れの挨拶までしてるのにフェイクの鸞丸、ウォーゲームの前振りと天才設定が単なるハッカーに落ちぶれたりキボウ。雑魚の集団WJC。本編掲載時は、WJCの面々見ながら、「こいつは味方になる、こいつは敵だろうな」って考えながら読んでた僕のワクワク感を返してほしい

 

 でもまあWJCが大幅に弱体化した結果、素手でライオンの首を引きちぎるシカゴのフォアマンが、やつは「WJCにおいて最強の男」みたいな存在になったのは面白いです。それは恐れられていただろうよ。

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フォアマンとフレイザーでWJC壊滅できたやろ。

 

 最後だけは想定通りに武島将と仁義のタイマンでしめることになりますが、BGMに流れるのはImagine。

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 ええ……、そんな話でしたっけ……?

硬派どこに行ったんだよ。ジャーメィン見た目マイケルジャクソンなんだからHeal the Worldでも歌ってろ!

 

 ラスト二話は作者の思想が露骨に変わってしまったのが伝わってくるのでメチャクチャ辛いです。

 

 最終対決で問答しながら喧嘩してるんですけど、突然大人になったら漁師をやってみんなと平和に暮らすとか言い出す仁義。

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 そりゃ、武島将も「は?」ですよ。

 じゃあなんのために戦ってたんだよ!

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 物凄い真っ当な言い分の武島将と突然お花畑と化した仁義。

 だから平和な世界を守る為に外国勢力と闘うって話だったんだろ! 何のために仲間集めてたんだよ。39年間の連載全否定かよ!

 

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鸞丸の演説は何だったのか。

いやまあこれだってもう10年前なんですけど。

 

 最後のケリがついた仁義は武島将に後事を託し、太陽に帰っていくのでした。

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 これが許されるのは不治の病で闘いを続けられなくなるか、強敵(ジャーメィンあたり)と相打ちになるか、チンピラに刺されて死ぬ時くらいでしょ。なんでいい感じに使命を果たした後みたいになってるんだよ。お前、闘吉に申し訳ないと思わないのかよ!

 

 僕の中の炭治郎が「貴様アアア! 逃げるなアア‼︎ 責任から逃げるなアア」と叫んでるんですけど、まあこれで完結してしまいました。

 

 作者の思想が変化したので、それに沿う内容にしたら連載前の構想と180度変わってしまった。まあそういうことだろうとは思いますが、連載が40年にわたることも珍しいですし、普通は構想に合わせて軟着陸させていくと思うので、エピソード毎に間隔をあけ、尚且つ長期間で連載をしていた中で起こった悲しくも珍しい出来事なのでしょう。

 

 なんだかんだで車田先生が好きな僕はちょっとしょんぼりしてしまいました。

 

番外編 異世界行っても少年マンガの主人公は1mmもブレない‼︎

異世界行っても少年マンガの主人公は1mmもブレない‼︎ 梅澤春人 2021年 ヤングエース掲載 全3巻

 

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久しぶりの更新はジャンプ打ち切り漫画ではないのですが、事情により「BØY」「ソードブレイカー」「カウンタック」の梅澤春人先生のコレです。

 

 連載開始時より、「梅澤春人先生が異世界転生もの?」「ハレルヤ + ソードブレイカーじゃん」「だいたいいつもの梅澤先生」「梅澤春人異世界、盾、うっ、頭が」などと言われていましたが、だいたいこの感想でお察しの通り、いつもの梅澤ヤンキーが異世界に転生します。

 

 主人公は、見た目は怖くてエロには弱いけど、弱者を見捨てず助けてくれる「最強の不良(キングオブヤンキー)」を目指す酒谷鉄丸、武器は白いギター。 

 相棒は絵が得意ないじめられっ子の気弱な少年天野恵。2人は事故で死亡し、異世界で目を覚ます。

 

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だいたいいつもの梅澤主人公

 

 2人は、勇者の剣とされる鉄丸のギターを抜いた事から、1000年の間恐怖で世界を支配する名前を言ってはいけない死獄王(じごくおう)グレン・アモンと、死獄王に魔剣を与えられた悪狂魔騎士(あくまきし)達と戦うことになる。

という、清々しいまでの異世界テンプレなんですけど、そこらなろう系コミカライズと違い、拭いきれない梅澤テイストが不思議な読み口を読者に与えます。うん、デジャブ。

 

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悪が狂う魔の騎士と書いて あくまきし!

死を極める王と書いて じごくおう!

俺たちの梅澤が帰ってきた!

魔城はゴスラルドかー、これはソドブレの勝ち。

 

 3人目の仲間として、ユニコーン族の女騎士レイヤが加わるあたりは、やはりソードブレイカーを意識してたんでしょうか、近接戦闘タイプの女戦士レイヤが仲間に。

 

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 異世界転生もので現地で最初に仲間になった女戦士がバックドロップで敵を倒す。これが! これが! 梅澤ファンタジーだ!

 

 この後も王道の、自分との戦いとか、回復役のちびキャラが4人目の仲間になったり、使い魔をゲットしたり、悪狂魔騎士の裏切り者が五人目の仲間になったり、勇者の剣に宿る古の力で魔法が使えるようになったりと、お約束に近いイベントをこなすのですがその全てに梅澤バイアスがかかっています。

 

使い魔 →  ヤンキー仕様バイク型モンスター

裏切り者 →  風に乗るチャラ系サーファー

古の力 →   ギターのコード

 

やりたい放題

 

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なんだ、この 面白い絵面は…

ファンタジーの姿か? これが…

 

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とにかく好きなことを詰め込んだぜ!

 

 残念ながら5人目の仲間ができたところで、打ち切りとなってしまい死獄王との決着は着かずに終わるのですが、おそらく打ち切りが決まったであろう頃に重大なエピソードが明かされます。

 

鉄丸の父親は現場仕事をしている酒谷虎一

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ソードブレイカーの虎一、名字は作品中では明かされず

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額のアザ

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ソードブレイカー最終回、虎一の子供。

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我々は、この男を知っている!

いや、この眼差しと額のアザを知っている!

 

あ、ああ〜。

マジの続編だった〜‼︎

 

 確かにモンスター造形は全く同じ系統だったわ。いやだって、ミコトが生まれ変わってそんな性格になる? とか多少の疑問はあるんですが、ウィッチウォッチにスケット団がでてくるサービスなんかとは違い、続編として描きたかったんだろうなというのは、あえてこのタイミングで本筋と関わりのないこのエピソードを挿入することで伝わってきます。コレ、続けば仲間にズールの転生者とか出たんじゃないかなあ。

 

 打ち切りだったソードブレイカーが、ヤングエースに転生して一ミリもブレない姿を見せた結果、前世と同じく打ち切りをくらうという皮肉な結果になってしまいました。

 

ガッデム‼︎

地球の子 2022年

地球の子 神海英雄 全3巻 2022年

 

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ライトウイング(https://utikirimanga.hatenadiary.com/entry/2021/07/07/130650)で爪痕を残し、ソウルキャッチャーズでファンを確保した神海先生の新連載。

 

 第一話のクオリティはメチャクチャ高く、世界の危機を救う強力な超能力者・星降かれりと、普通の高校生・佐和田令助の出会い。惹かれていく2人、通常の幸せが手に入らないというジレンマ、恋愛の成就、結婚、出産、幸せの絶頂からの地球を救うためにかれりさんが犠牲になるしかないという展開をうまくまとめていました。津尾さんも、こいつは来たぜ!と思いました。

 

恋愛パートをじっくり描き

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地球よりも夫と子供とために死地に向かう妻。

どうすることもできない現実。

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令助の悲しみを丁寧に描きました。

 

ソウルキャッチャーズの名場面より「全然、良くなかった。 最高(ファンタスティック)だった」と言うフレーズがTwitterを飛び交い。「俺たちの神海っちゃんが帰ってきた!」とお祭りだったのですが、一話で物語を支えたヒロインが退場してしまったため、この後どうするの?という不安を持つものも散見されました。

 

 津尾さんてっきり二話から、子供が成長して主人公交代するかと思ってました。まあ考えられるパターンとしては、

 

①子供が成長して、次の地球の子として地球の危機と戦う

②主人公はそのままで、かれりさんもしくは新たなキャラとの関係を軸に話作る

③父親主人公の育児もの

 

あたりなんですけど、まさかジャンプで③を選択するとは……。

 

 リアル路線の恋愛物でもなく、エスパーが出てきて何者かと戦う話で主人公が無能力者なのは結構な賭けだったと思います。尚且つ、メインターゲットの読者層が共感できなさそうな育児話。この時点でかなり危険な香りがしていました。

 

 強大な力を持った無垢なる赤子、地球の運命を左右する子をどう育てるか?が、主題であるため、2話から5話まで4話かけて、強大な超能力を持つ赤子・衛をそだてる覚悟と苦難、絆を描くんですけど、令助の情熱が先走りすぎて既婚者子持ちの津尾さんでもちょっと感情移入しずらいです。

 

 子育て物って、どんなに全力をつくしても何度同じことを注意しようと、子供の動きは予測できないし、子供の意思を都合よく変える事はできないし、繰り返す無力と徒労とやるせなさと、絶え間ない努力と押し寄せてくる日常と理不尽の中で、それでも報われる時があるよ。報われた次の瞬間にはまた怒涛の日々が始まるけれど。という子育ての難しさと、それでも存在する日常の中の輝きというのが話のキモだと思うんですけど、この話4話かけて、大きな山を一つ変えたら子育てパートが解決してしまうんで、子育て物としては話が薄く、ジャンプ漫画としてはヤマが少ないというどっちつかずな内容になってしまいました。

 

ちょっと抽象的というか…

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6話からは先代地球の子・アルベールが登場して本格的にかれり救出作戦が始まります。

神海っちゃんぽいキャラもでてきたし、本領発揮かぁ〜?と期待する声もあったのですが、ドラマはイマイチ盛り上がりません。具体的な敵とかじゃなくて困難な状況と戦う話で、読者が解決法を模索できるタイプの話でもないため、とにかく受け身になってしまうんですよね。

 

先代地球の子・アルベール

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ISSに向かい、デブリとなったかれりを衛の念動力で静止する計画を立てるのですが、衛とアルベールと訓練を行い、ISSに到着。かれりさんのデブリを止める為には、赤ちゃんの衛にデブリをかれりさんと認識してもらわなければならない。さあ、どうする?って、ISSについてからその話するの? 事前に準備しろぉ! 案の定、このままじゃ無理だから一回地球に戻ってかれりさんの実家に行くことになります。あのー、ISSに行くパート必要でした? 気軽に地球と宇宙を行ったり来たりするんじゃないよ。宇宙兄弟に謝れ。

 

作中で言えば無計画な上に、構成上だと一旦宇宙にいく必要性がわからない

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 実家に帰って衛はデブリを彼らさんと認識して救出作戦が始まるのですが、一連の、「超能力を無差別に使わない分別をつける」、「令助との絆を確認する」、「かれり救出のために空を飛ぶ」、「宇宙空間でデブリを弾く」などおそらく年齢十ヶ月程度の衛ができるようになるまでのハードルな恐ろしく高いはずなのに、あっさりと乗りこえてしまいます。この辺りの聞き分けが良すぎるため、育児物というよりは舞台装置のようになってしまったのもマイナスでした。反面恋愛パートは丁寧に描かれているので、テーマが家族と育児なのに、焦点は夫婦・恋愛になってしまって、ますます衛の存在が空気に。

 

恋愛パートは丁寧で見せ方もうまい

コマの使い方も贅沢

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 結局、愛の力でカレリさんを救うことに成功するのですが。その最中全ての黒幕、「地球の子」を作り能力をあたえ、地球を守る為の仕組みを作った存在が現れます。その正体はメスガキ「地球ちゃん」。地球を平和に保つことだけが目的のため、「地球の子」に異常を起こす令助を取り除こうとする存在。

 いつか来る地球との戦いを予感させつつ、カレリ救出劇は幕を閉じます。そして六年後。

 

メスガキ地球ちゃん

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 ショタ衛、カレリ、令助の3人で地球の子としての任務をこなす日々の中、再び地球が現れます。

 

 この辺りの、ラスボスは地球、力を与えた親たる存在にして神に近しい物。地球を感情に保つことだけが目的で人間を歯牙にもかけない存在。という壮大さにその神たる存在がメスガキ女子高生というギャップはいい見せ方だとは思うんですけど、神と戦うには積み重ねたエピソードが弱かったかしら。ちょっと作者の情念が先走りすぎた感がありました。まあ、ここでまとめるのには仕方ないのかしらね。

 

人をなんとも思っていない地球ちゃん

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 結局地球と和解し、三人は地球を守る為に働く。地球はそれを監視して、力が及ばないならば排除するということで、三人の日常は守られます。

 

 衛の成長と、変わらぬ夫婦の愛を描いてエンド。具体的な敵がいるなら早く出したかったし、連載が長く続いてエピソードの積み重ねがあれば地球ちゃんとの戦いが締まったかなという感じ。綺麗にまとまってはいるんですけどね……。

 

 結局1話のインパクトが超えられない事が痛かったです。三人家族で過ごさせてあげたいし、カレリさんをほっとくのも構成上やりにくかったんでしょうが、2話で七年後→アルベール登場→カレリ救出作戦開始→地球ちゃん登場あたりを一巻で一気にやるくらいのヤマを作らないとジャンプでは厳しいんでしょうね。

 

 

 ところで、1980年から42年の3巻完結以内の打ち切り漫画について、315件の記事を書いてきましたが、津尾さん体調を悪くしてしまったので、ここで一旦このブログの更新は停止致します。地球の子だけは2巻まで書いていたので更新しましたが、エリエリ、すごいスマホあたりは来年に回復したら……に、なります。

 目を通してくれていた方ありがとうございました。