津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

MUDDY 2008年

MUDDY 全2巻 藍本松 2008年

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 土のキメラ人間マディを偶然作ってしまった元天才博士クレイは、マディ知識と見聞を広める為に旅に出る。天才と言われたけど、不器用なクレイと天真爛漫なマディのちょっと変わったコンビのお話。ジャンプ向けではない設定で、ジブリとかで映画化しそうな読み口のお話。

 

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産まれたてのキメラ「マディ」を育てるうちに成長していくクレイとマディを描いた子育てものであり、ある日突然産まれた「マディ」の特殊能力を探りながら成長を見守ろうというジャンプにしては優しい話ですが、その分受けは悪かったかなと。ゆっくり周囲の人との交流を描いていければ、人間ドラマとしてはそれなりの出来になったと思いますが、悪のキメラ科学者を出して、キメラ同士のバトルになってしまったので、完全に作者のいい点と作品の方向性が逆を向いてしまいました。

 

導入からバトルものにする気が全然ない話したからなのにテコ入れでバトルをしたのでしょうか?と疑ってしまいますが、少なくとも1話から3話は、マディの育成ものの方向で4話から7話もトラブルに首を突っ込みながらそれを解決していくという方向でバトルではないです。バトル物なら戦闘用のスキル、マディなら巨大化、腕の伸展、呼吸器や目を土で塞ぐ(腕を捩じ込む)ような使い方を出して訓練することもできたはずですが、一切そういう描写はなく、生まれたばかりで幼稚園児並みの知能のマディの知識を満たすこととクレイとの生活をメインに描かれていました。

8話から軍用キメラをつくろうとするキメラ学者コランダムが、マディを捉えようとするんですが、ここでもバトル展開ではなく、コランダムの妹ルビィが、子供に手を出すのを嫌がってマディの護衛をするといい出します。この為展開も遅くなりましたし、その上でバトルというのはあまりにも悪手でした。

 

迷走というか、本来の持ち味で子育て物をやろうとしたら、展開が遅すぎて人気が出ずテコ入れをすることになって適正のないバトル物をやった結果打ち切られたという感じがします。

 

あと、やってることが生物の創造という神の領域の話なんでちょこちょこ倫理観どない?みたいな描写がありました。

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ちょっとバトル方向に振れるなど今作は少し迷走したが、次作の「保健室の死神」で持ち味を遺憾なく発揮しました。