津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

ジガ  2018年

ジガ 全2巻 作画 肥田野健太郎 原作 佐野ロクロウ 2018年 

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毎日巨大な怪物が街を破壊する夢をみる蜂鐘コウ。クラスメイトで想い人天城星羅とのデートの日、怪物は実際に現れ、星羅も母も家も消し去った。復讐だけが残ったコウは、仇を取るため異常災害対策連合「異災連」に入隊する。

 

毎夜見る夢

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憎からず想うクラスメート 星羅

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デートのその日 夢は現実となった

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「閃煌波」という脳波をもつもののみが扱える武器リーチを使えるように特訓するコウ。自衛隊も米軍も歯が立たない怪物と戦えるのはリーチをもつ異災連のみ。

だが、怪物は異災連の基地を急襲する。怪物に貫かれたコウは、自分が街を壊した怪物・ジガだったことを思い出す。

 

コウを貫く怪物 その時悲劇の幕は開いた

ジガはコウ自身だった

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仲間を殺さないためにジガを抑えようとするコウ。しかし、異災連の武器がこごとく効かず、コウは逃げ出して自分が死ぬ方法を探す。コウが処刑を受け入れようとしたとき、白いワンピースの少女「命令者」が現れコウの正体は人間を滅ぼす為に人の記憶を与えられた異界の兵器・獣騎だと告げるのだった。

 

死を受け入れるコウ

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現れた「命令者」
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ジャンプ初の怪獣ものにして、ダークヒーロー物。ギザ歯人外娘命令者ちゃんが異例の人気を博し、マフィア梶田が初めてアンケートを出したという逸話がありますが、そのせいで第二のキルコという呼ばれ方もされていました。命令者コラはめちゃくちゃ多いです。

 

オタクの幻想する夏の少女みたいな登場から

悪のヒロインとして活躍、一躍人気者に

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展開がおそく、コウが自分をジガと認識するのが6話。更に、アイアンナイトの心身の喪失、歪のアマルガムの当分の別れと違い、1話でヒロインが腕だけを残して死ぬという衝撃の展開。恋人も母も街も全て自分が殺し壊したという重すぎる内容で、主人公自身にそれを跳ね除ける明朗さや狂気的な意志の強さがなく、復讐心に押しつぶされそうな悲劇がほぼ1巻続いたのは流石にアンケが取れなかったと思います。

 

腰をすえて描きたかったとは想うのですが、なんとか展開を早くして怪獣バトルと仲間作りを見せたかったところでした。とりわけ仲間になるランダがいいキャラだったのに人型で絡むのが連載終了が決まるあたりの10話というのが致命的でした。月刊で1話を思いっきり重くして2話から怪獣バトルとかなら生き残れたかも…。個人的には好きなんですよ。怪獣物って言う一部に愛されるが基本不人気なジャンルにチャレンジしたことも含め、応援していました。

 

美形の人型形態で、基本優しいランダ

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なし崩しに巻き込まれて仲間になっていく

おいしい立ち位置。

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怪獣ものは作画コストが高く、怪獣デザインも大変な為、巨大ロボ物より更に描き手が選ばれるのですが、それをある程度形にしながら、怪獣バトルをメインにするまでが遅かったのが残念です。仕方ないとしながらも惜しむ声は多く。怪獣8号連載時はジガでこれをやれば…という声が散見されました。

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単行本は描き下ろしがついており、なんだかんだで相棒となったランダとのやりとりや、人間側の秘密兵器メカジガの登場。白の部隊以外の命令者達や、ジガとランダの戦いが描写されます。
この展開を本編の7話くらいまでにぶち込めればー!!
もったいない作品でした。

 

お人好し相棒ランダ 好き

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怪獣バトル モチーフとなった怪獣達がある程度わかります。怪獣好きはニヤッとするかも。f:id:jiholeopardon:20210827020421j:image

人間の切り札メカジガ 活躍の機会はなかった

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キャラネームがマジンガーZモチーフとの考察があったのは素直に感心しました。

 

蜂鐘→鉢金→兜や金属付き鉢巻→兜!? 
つまり 

蜂鐘コウ→兜甲児 
ランダ→ジェットスクランダー 
ダオン→パイルダーオン 
ジガ→マジンガーZ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NOAH'S NOTES 2018年

NOAH'S NOTES 全3巻 池沢春人 2018年 

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女子高生・寿未来はたまたま見かけた金属片をSNSにアップしたことから、地球が2022年を境に滅亡し、ループしていることを知る。2週目の人類の滅亡まであと4年。天才考古学者ノアと未来は人類の滅亡の謎を解き、止めることができるのか?

 

滅亡とループを繰り返す人類

その謎を解くという壮大なオープニングf:id:jiholeopardon:20210825195227j:image
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ループの謎を解明するために遺物「NOTES」を探す未来たちはループの手がかりを消していくという人類最古の秘密結社聖堂騎士団と衝突する。「NOTES」操り、なにかを知る聖堂騎士団

そんな時ノアの師匠から弟子たちに招集がかかる。アークラボの天才たちが集う中現れた教授は未来を銃殺する。目的は何なのか。未来の役割とは?

 

ループのてがかりを消していく聖堂騎士団はなにをしるのか?

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未来は何故撃たれてしまうのか?

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ジャンプには珍しい「(ループ)世界の謎を解き明かすSF物」「ギャル女子高生主人公」「考古学者と助手のバディ物」で、新しい事をやってやろうという作者の意欲はものすごく感じ取れます。炎上云々もありましたが、個人的には好きな作品。

お馬鹿な女子高生が学問を真面目に考えて成長する描写などよく描けているとおもいます。少年誌らしく勉強に、向き合っているのも⚪︎。暗殺教室以来の正面から勉強を肯定する物語。ドクストにもアンデラにもなれる可能性を秘めていたと思います。

 

何故勉強するのかとか。


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ループを起こす原因が、人為なのか、現象なのかわからず、手がかりもすくなく、目的までの進路が壮大すぎて把握できなかったので、短期的目標が欲しかったところです。

その役割だった聖堂騎士団がまた手の届かない強さで目的不明という…。手の届く目標が最終的な目標につながっている感がなかったので縦軸が分かりにくいという難点がありました。f:id:jiholeopardon:20210825203709j:image

この辺りは、地道に話を進めながら壮大なストーリーにつなぐドクストや、派手に話を展開して短期的で魅力的な敵を次々に繰り出してくるアンデラなんかと比較すると流石に練り込みが甘かった印象ですが、ここまで壮大な話をエンタメとして見せるなら、原作欲しいところです。一人でこれを回すのは大変だったでしょう。

 

出会い→ミッション→仲間とのミッション→全員集合のミッションの目的が全て異なり、ちょっと着地点がわかりにくかったです。ミッションごとのエピソード自体は嫌いじゃないんですが、やや年齢層高め向けな印象。謎をちらばめすぎて答えが与えられないのでヤキモキする展開が続いてしまいました。

 

クセのある仲間たちは良かったんですよf:id:jiholeopardon:20210826125208j:image

アークラボ集結も熱いんですけど終盤すぎました。

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強力な個性を持つアークラボのメンバーを早めに出して、聖堂騎士団とのバトルを入れたらという気もしますが(アンデラメソッド)、根本的にバトルに向き合う漫画じゃない感じなんですよね。人間関係のエモさと謎の解明を主軸にしたい印象。雑誌の方向と作者のやりたい事に乖離があったかなあ。

 

いつか、人類滅亡&ループ説が証明された時、人々にそれを信じさせるために「全人類から信用される学者」を演じる。

それは、自分を見出してくれたノアの恩に報いるため。己に課した使命。

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死ぬくらいなら研究辞めようよという未来の問いかけ。こういうキャラの立て方は上手いんですよね。

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次第に本気になっていく未来

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21人妻がいる地質学者の砂漠の国の王子様アリー、無茶苦茶やる俺様系天才量子物理学者のギル、怪しい薬をつくる目隠れ薬学者のニナ、直情馬鹿の海洋学者カイ、ニコニコ腹黒友情ライバル古生物学者ルーロンと美味しいキャラ立てはしてあり、仮説を話し合うシーンとか良かったんですよ…。

 

それぞれキャラはたっているアークラボメンバー。やっぱり登場が遅かったのがいけなかったか。

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結局ループの原因、聖堂騎士団の目的、教授の目的、誰がなんのためにループを作っているのか、自然現象なのか、何もわからないまま撃たれた未来が気がつくと1話冒頭に戻り、今回は記憶が継承されたという、前回から一歩進んだことを示して終了。
何もわからなーい!

 

何度繰り返しても死ぬ未来

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ループを明確に体験している教授
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記憶を継承する未来
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クロガネ、ものの歩、ノアズノーツと3連続失敗した作者は、この後ペンネームを変更し、ジャンプ+でスポ根コスプレ漫画、2.5次元の誘惑描いて成功します。単なるエロコメでなく、サブカルへの思い入れと文化系スポ根がうまく絡み合った、作者の長所がいかされた良作です。

 

 

 

 

BOZE BEATS 2018年

BOZE BEATS 全2巻 平野稜二 2018年 

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常人離れした魂の大きさと他人の魂を吸い取る能力をもつ少年環は、記憶を喪失して狼に育てられ、退魔部隊ボウズの一員にして東京タワーに黄竜を封印した凄腕・龍大寺に出会う。その力を危惧され、また、自らの失われた記憶を取り戻すために、環は退魔部隊の一員となる。

 

狼に育てられた少年環

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魑魅と戦ってきた坊主
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己に合わせた仏装により戦闘を行う
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何故坊主なのか…。

かっこよさ重視なら陰陽HEATSとか、退魔STORMとか、拝み屋BLOODLINESでも良かったと思いますが、あえての坊主。

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帯にも書いて有りますが、これ、集客力あるかなあ…。スタイリッシュ退魔アクションと画力押した方が良かったのでは。

 

竜大事に拾われ、東京に来て退魔部隊に入隊する環。渋谷支部の先輩葉隠、アイドルの退魔師美墨子とチームを組み、固有の能力を持った人型の魑魅を倒す3人。

強くなるために努力する3人だが、渋谷支部に人型の魑魅たちが攻め込んでくる。その目的は環だった。

 

東京タワーに封印される黄竜

薄氷の平和

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アイドル退魔師美墨子

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固有能力をもった人型の魑魅、通常より強い

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因縁の相手と出会い記憶の一部を取り戻した環は、魑魅に育てられていた事、同じく魑魅にさらわれて育てられた円鹿が黄竜になっている事、自分も制御できなければ竜になることを思い出す。

 

育ての母の思いを胸に円鹿を助けに行く環。というところで終了。ヒロイン円鹿と敵のボスは姿すら見せずかなり中途半端です。

 

多分これが描きたかったんであろう回想編

子供の世話を押し付けられる生前の記憶をもった女性魑魅

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最初は興味がなかった。

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2人と暮らすうちに情が芽生えていく

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脱走させようとして失敗

円鹿は黄龍になってしまう

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魑魅の母と決着をつけ、円鹿を助けにいくぞ!で終わり。しりきれとんぼ感がすごいです。

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新人ですが画力が高く、連載終了後は鬼滅の刃の外伝の作画担当をしています。ボウズビーツも作画はスタイリッシュなのですが、黄竜とは何か、匣児とは?ボスは何がしたかったのか、魑魅達はボスを出し抜いてどうしたかったのかあたりが全く言及されておらず、ヒロインもボスも登場しないまま終わります。

 

画力はここのところの新人では随一です。

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話の展開がおそかったのと、描きたいことを描いて、間をつなぐエピソードを描いていないため、断片的な話の展開になってしまいわかりにくかったのが敗因でしょうか。「狼に育てらた少年」「魔物に育てられた少年少女」「子供達を育てるうちに愛情を持つ魔物」「東京タワーに封印された竜」「アイドル退魔師」「内部分裂する悪の組織」「固有能力」「重火器を武器とする坊主」あたりの好きな要素をつなげて話を作ろうとした様なツギハギ感があります。また、ドラマを重視するばかりに、バトルの方がなおざりになってしまいました。

 

魑魅同盟、もがり、百鬼夜行。この辺りがほぼしに設定になってしまいました。バトルよりならはじめから、ネームド敵幹部メンバーを出しつつ背景を掘り下げていくべきでした。初めて出るネームド敵幹部キャラが育てのお母さんでしたからね…。

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ソーマやドクストみたいに他誌から引っ張ってきたのかと思うくらい作画で連載開始時は期待もされていたのですが残念でした。

 

なおこの⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎ーツというタイトルは、ボウズビーツ、ノアズノーツ、ダブルアーツ、ゴーレムハーツと全て失敗しているので、呪われてるのかもしれません。

 

今後の登場に期待です。

 

 

 

 

ゴーレムハーツ  2017年

ゴーレムハーツ 全2巻 大須賀玄 2017年

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生活の全てがゴーレムに支えられる時代。心を持つゴーレム・ノアは自分をつくったレメクを認めさせるために人の役に立とうとするが失敗してばかり。軍に目をつけられたことをきっかけにノアは世界一の魔導学師を目指す。

 

ゴーレムが生活必需品となった時代

心をもったゴーレム・ノアは、自分を作ってくれたレメクの為に世界で二番目の魔導学師を目指す。
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ノアを息子のように思い、庇うレメク。
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レメクの頼みにより、世界で10人しかいない2つ星魔導学師エイルに弟子入りしたノアは、修行して力をつけ、世界魔導師連盟入門のテストを受ける。世界一の魔導学師の孫エレボスや人のいいカルルスと知り合ったノアはゴーレムの魔導学師として次第に認められていく。

 

ノアのために必死のレメク

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そして四年後、成長したノアは、世界魔導師連盟入門のテストを受けにいく。

いや、試験はもうやめとこうよ。
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ピノキオ物というか、人が作り出した人に近いものあるいは人を超える人造物を扱った作品はファイブスター、攻殻機動隊キカイダー01、OZ、ロボサピエンス、A Iの遺伝子、22xxなど枚挙にいとまなく、ジャンプでも「すもも」や「マディ」が該当します。概ね人間を超える人造物、その可能性、人造物に人の心は宿るのか?能力で人を超える人造物が心も持つならばそれは人間の上位種ではないのか?辺りがテーマになります。今作でも、その辺りを深く掘りげれば面白かったと思うのですが、どちらかというと親子物になってしまいました。

 

ラストに出てくる力と邪悪な心を持つゴーレム。

ノアと対比する存在なのですが、あまりこの辺りは掘り下げられませんでした。
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テーマの掘り下げもそうなのですが、構成の甘さが随所に出ているためこれぞ打ち切り漫画という出来になってしいました。生まれたてで素直なゴーレム・ノアはマスターを認めてもらうために手伝いをするんですけど役に立たない。失敗に対し、反省やフォローがなく日常愛されている描写もないためサイコさんみたいになってます。1話から主人公も主人公の身内も不愉快な話というのはちょっと…。

 

頑張って役に立とうと奮闘するノア。

普通こういうのは、厳しく指導するお目付役をセットにするか、迷惑をかけられている側が、愛を持って見守るか許すか、で主人公のミスをカバーするところなんですけど、普通に迷惑がっている上に全くそれが伝わらずに迷惑行為を続けていくので、主人公への好感度が1話からガンガン下がります。

 

 

迷惑行為を咎められても全く聞いていない主人公

このエピソードが連続して、特に叱られもせず、罰も受けず、愛のあるフォローもなし。辛い。

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そのまま致命的なミスをおかし、尚且つ気がつかずに自慢するノア

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役立たずからいざという時に役に立つギャップを出したかったのはわかるのですが、マスターの発言と合わせて主人公側に視点が寄りすぎてつらいです。

 

ノアの創作者・レメクからの謝罪。

なんですけど全然謝ってない。不快な上に不快。

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更に、自分の管理不行き届きなのに逆ギレして煽る言動。2人合わせて最悪の親子。
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まず、補償をしろ!お互い勉強になったじゃねーよ!これをギャグじゃなくて真面目にやってるのもきつい。

 

案の定、ジャンプコミックス初月売上の発行部数はワースト3にはいる散々たる売上でした。

 

また、旅立ちまで3話、試験開始が7話という進行の遅さがネックで、試験編からサブキャラを出したため、サブキャラが立たないまま話が進みました。ここで尺割いて合格しないリリベルなんなの。

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ハンタ・ナルトから試験展開は定番となりツギハギやメタリカでもやってましたけど練り込まれてない展開が多いです。

 

連盟の魔導学師が突き止めた犯罪者集団のアジトから商品を奪還せよ!→先輩魔導学師はやられてました。ルーキーだけで解決せよ。

 

今回は下っ端の集まりだ。大騒ぎするほどじゃない。
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連盟の魔導学師はやられてました
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新人の力量を見るために上位魔導学師をサポートして逆賊ゴーレムを討伐せよ→先輩上位魔導学師はやられてました。ルーキーだけで解決せよ。

 

上位魔導学師をサポートしてリドルゴーレムを倒せ

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着いたら上位魔導学師は死んでました。またかよ。

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実力も、情報網も、作戦も連盟ガバガバじゃねーか!

 

リドルゴーレム事件を解決してさらに隣国から攻め入ってきたゴーレム軍をとめ、ランキング1位になって夢を叶えてお話は終わります。

 

まあ、ちょっと構成も、キャラクター造形も厳しかったとかなと…。主人公組の好感度が下がる演出が1話からというのは辛いです。このブログ書き始めてから5度目くらいになりますが、編集仕事しろ案件。こういうのは本人が気が付きにくいので、客観的に指摘してあげて欲しいです。

 

 

 

 

フルドライブ  2017年

フルドライブ 全3巻 小野元暉 2017年

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世界を4度制したドイツの天才卓球選手ウルフの孫、玉城弾は日本に帰り、女子のトップ白石真凛にであったことをきっかけに、群雄割拠する「黄金の世代」に殴り込みをかける。ボーイミーツガール卓球漫画。

 

女子卓球のトップ真凛

外連味たっぷりの登場

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そして少年は少女とであった
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玉城弾は、黄金世代に殴り込みをかける

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ドイツ帰りの強豪選手が日本の黄金世代に殴り込みをかけるという梗概だけなら「卓上のアゲハ」なんですが、ボーイミーツガールの甘酸っぱさと主人公の性格を嫌味なく丁寧に描くことで、読み口を良くして好感が持てるお話にしてあります。主人公とヒロインの関係性が、ライバル心もまじえて熱いながらもどこか甘く、成長を手助けしたり、相手に追いつけていない自分への不甲斐なさに唇を噛んだり、短いながらグッとくる描写が挟まれており、好感の持てるカップル未満感がたまりません。

 

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ヒロインに自分に対する自負を述べる弾

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ヒロインに、知らずしてハッパをかけられる弾

この辺りのエピソードいいよね

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真凛に卓球エリートの育成塾を紹介された弾は、全国トップレベルの所属選手と渡り合い、スクールに通うことになる。黄金世代の先輩に磨かれ、実力を伸ばした弾は、全日本優勝の天才選手幸也との試合で己れを証明する。

 

エリート育成塾で実力を見せつけてスクールに入る弾は黄金世代の先輩と切磋琢磨していく

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中学全日本王者と対決

才能はあるがやる気のない南條雪也に苛立つ弾

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決勝で対決

お前は夢をみているロマンチスト。勝負が苦しいことを教えやるという雪也。

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世界王者に育てられたけど対人戦をこなしてない主人公が、エリートの中で磨かれて行くというスタートは、競技を始める動機、ルール説明、上達の過程を大幅に省けるため、スポーツ漫画の導入としては100点だと思います。最近のスポーツ漫画はこの路線が多くなってますね。

正直今のスポーツ漫画で、素人を育てる演出や、他競技のエリートをコンバートする演出を楽しみにする読者はいないと思うので、余程素人の地道な努力を上手くエンタメに消化させる自信がなければ、経験者が更に上に行くスタイルの方がとっつきやすいです。

 

地道に描いたからこその「左手は添えるだけ」とか、コンバートを上手く描きながら、素人の採用という部分でルールの説明をわかりやすく行った灼熱カバディなど例外もありますが、よほど筆力がないと現代では成功しにくいと思います。テコンダーがサッカーする事自体にワクワクする読者はもういないよ。

 

主人公のキャラも、熱血タイプでも単純素直なタイプでも、実力を鼻にかけた俺様タイプでもなく、ヘラヘラしてるけど内に熱を持つ珍しいタイプで、熱の迸る部分では感情移入できるいいキャラです。少年誌スポーツものではやや珍しい、強いていうと初期の陸奥九十九あたりが近いタイプ。

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けっこう、この情熱に関してのやりとりも随所にみられ、AONがやりたかったことをエンタメにうまく組み込んだらこうなったと思うと感慨深いものがあります。独りよがりにならずに、情熱をかたるのって結構ハードル高いと思うんですよね。

 

序盤、スクールとの出会いで

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雪也との戦いで、描かれる勝負と情熱、スポーツに向かう意思とそこでしか「何者」になれない自分たち

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とはいえ、3試合こなしたところで打ち切り。主人公ヒロイン以外のキャラがちょっと弱かったとか、競技的に地味な面はありましたが、惜しい作品でした。締め方も丁寧です。

 

全日本ジュニアで2人優勝し、同じ立ち位置に来てから、弾の決意表明、真凛から「何者」かになったのを認める言葉。ドイツへ帰ってプロになるという旅立ちと告白。

 

気持ちいい終わり方。

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やっと並んだ二人

 

認められる弾
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最後に告げられる告白
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打ち切り漫画のスポーツ漫画でも綺麗にまとまっている良作だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

ポロの留学記 2017年

ポロの留学記 全2巻 権平ひつじ 2017年 

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強さが全ての魔界で最強のポロは人間界、特に日本が大好き。人間界の良いところをノートにまとめ、「留学記」として魔界の役に立てる為に日本にやってきたポロの起こすドタバタほのぼのコメディ。
ジャンプ漫画の中でも単行本の帯の紹介文が酷いことに定評がある漫画。

 

力こそが正義の魔界

闘争に嫌気がさして日本へ

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件の帯はこの画像ですが、いや、もうちょっとなんとかならなかったんでしょうか…。てごころをね…。読まれてないの前提?表紙買いもないの前提!?作者に失礼だろ…。

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確かに魔界の王子が日本にきた日常コメディというあらすじだけだとまんがたいむきららとか電撃あたりみたいですけど…

 

ポロに求愛する火属性魔界人と天使が現れてからはラブコメ要素も強くなります。

 

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媚薬の毒を抜くためにキス
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可愛いキャラと、反応をみてニマニマするような、雑誌に1、2作あってもいい箸休めのようなポジションは狙えたと思うのですが残念ながら2巻終了。

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赤ちゃんがえり回とか夜桜さんでもやってましたね。

 

終盤バトル要素が出てきていたのでもう少し続けばバトル漫画方向にも進んでいたかもしれませんが、魔王たる悪の人格は最後まで覚醒しませんでした。

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おいしいとこ取りができそうな設定だったのですけどね。好きな人は好きという雰囲気で次作の夜桜さんどは、ラブコメ+バトルを上手く活かして成功します。

 

 

U19 2017年

U19 全3巻 木村勇治 2017年 

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近未来、大人党に支配され、子供たちの自由が奪われた世界。子供たちはランク付けされ、ランクに合わせた職業、住居、生活を行う事を余儀なくされた。そんな中、紅童衛児は幼馴染の月野朱梨と引き離されたことから大人に反逆する事になる。

 

大人党の支配する世界、子供たちは完全に管理されることを正しいと教わり、自ら、自分達はダメな存在なので大人に管理されないとダメな人間になってしまうと発言をする状態になっている。

 

人間はランクわけされている

職業もランクによって制約
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互いにDランクの両親のもと恋心を育てていた衛児と朱梨だが、遺伝子検査の結果SSSを出した朱梨がAランクの学校に転校することに。政財界の御曹司が通うAランクの学校に行くとDランクとは会うことすらできなくなってしまう。両親を思い別れを決断する朱梨と、追いかける衛児。大人に阻まれた時衛児は覚醒する。

 

両思いの幼馴染・朱梨

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遺伝子検査で最高の結果を出したため、Aランクになってしまう朱梨。AランクになればDランクでは会う事はできない。朱梨を止めようとするが、大人に銃で打たれ阻まれる衛児。

覚醒する能力。

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子供だけに発現する能力・リビドーに目覚めた衛児は大人たちに対抗する子供の組織ガレージキッドの一員となり、朱梨を救い出す事、大人社会をひっくり返すことを誓う。一方転校した朱梨はそこで政府に選ばれた遺伝子的に最適な結婚相手と対面する事になる。どうしても衛児のことが忘れられず、相手を受け入れられない朱梨。

子供の組織ガレージキッドは実在した

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一方朱梨は理想的な恋人をきめられ、子供を作ることまで推奨される

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擦られることも多い作品ですが、梗概だけ読めばそんなに悪くない、ある意味王道の「引き裂かれた恋人」「管理社会との戦い」「異能バトル」の三題噺。大人党やガレージキッドという名称はクソダサかったですが、恋人との描写は尺も割かれており丁寧です。異能バトルは主人公の能力が糸という時点で「ストーンフリー」という前例が強くののしかかってきますが、独自の描写をしようとはしていました。

 

糸に徹してないところが能力のガバさではあるんですが、違いは出そうとしていた様子。糸で鍵をつくったり、拳を作って飛ばしたり、ガードする防壁を作ったり、

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問題なのが、ディストピア描写。単に体罰のある理不尽な昭和の教師だったので、ここは出荷されたり、番号で呼ばれて化け物と戦わされたり、クイズに失敗すると強制労働させられたり、カレーをおかわりしたら毒ガスで死んでしまったり、本の所持が禁止されてたり、憎悪週間があったり、反逆せざるをえない強力なディストピア描写が欲しかったです。正直国民階級と自由恋愛不可以外、作中でも主人公ヒロイン以外はそれほど理不尽を感じていない様子であり、平和の裏側に隠された陰惨な支配や隠された不幸っていう感じでもないんですよね。

 

ヤンキー漫画にでてきそうな嫌な教師

絶望を感じるほどの社会描写でなく、単に不快なだけという所が…。もう少し掘り下げが欲しかったです

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漫画内では低ランクでも満足している描写があり、社会自体の改変をする程の理由がうすいのにも関わらず、Aランク入りを喜んでいた朱梨の両親が何故かあっさりガレキに味方したり、反政府組織の喧伝をあっさり大人が信じたりと、社会を描くには詰めが甘い描写が多かったです。

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選挙の支持率83%で低ランク民にも支持される政党を敵組織として、自由恋愛ができないという理由で総理を拉致して国会を選挙するという単なるテロリストをヒーローにする理由付けが何もなく、力があれば子供のわがままで武力行使しても構わないという思想にしか見えないため感情移入しづらいです。

 

総理大臣を拉致することで政権打倒する目的が青春を取り戻すこと。倫理観も作戦もガバガバ。ちょっとこれでヒーロー面するのは……。

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流石にまずいと思ったのか後半急速に方向転換。

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能力バトル面で見たとしても能力の発現が3話、使いこなし始めるのが7話、本格的にバトルに入るのが10話といかにも進行が遅く、能力の設定もガバ目です。ヒロインとの恋愛関係は悪くなかったので、其方を主題にディストピアを掘り下げて政府の目を潜るロミオとジュリエット方向の方が向いていたかもしれません。

恋愛関連は丁寧

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能力バトルはあまり新鮮味を感じませんでした。

「鉄骨隆隆」─硬質化

「紅い糸」─糸で色々なものをつくり、あやつる

「電信操縦」─コントローラーをつけたものをあやつる

「健康勇良児」─肉体的に強い

とか、音つかいとか、空間に穴をあける転移能力者とか。

 

 

朱梨を救い出す為に東京に乗り込んだ衛児は政府軍、更に遺伝子操作しれた人造人間、リビドーを持つ子供とも戦い朱梨を救い出すが、大人達もリビドーを解析し、子供のリビドーを引き出す人体実験を始める。

 

子供達を救い出しに行く事を決める衛児達。戦いはこれからだ!と言うところで打ち切り。

 

ワンピ、鬼滅、ハイキューなど人気漫画をよく取りあげているダヴィンチニュースに掲載されていたので、ひそかな人気だったのかも…。
大好評…喪失感が凄い…。どこの世界線なんだ…。

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