U19 全3巻 木村勇治 2017年
近未来、大人党に支配され、子供たちの自由が奪われた世界。子供たちはランク付けされ、ランクに合わせた職業、住居、生活を行う事を余儀なくされた。そんな中、紅童衛児は幼馴染の月野朱梨と引き離されたことから大人に反逆する事になる。
大人党の支配する世界、子供たちは完全に管理されることを正しいと教わり、自ら、自分達はダメな存在なので大人に管理されないとダメな人間になってしまうと発言をする状態になっている。
人間はランクわけされている
職業もランクによって制約
互いにDランクの両親のもと恋心を育てていた衛児と朱梨だが、遺伝子検査の結果SSSを出した朱梨がAランクの学校に転校することに。政財界の御曹司が通うAランクの学校に行くとDランクとは会うことすらできなくなってしまう。両親を思い別れを決断する朱梨と、追いかける衛児。大人に阻まれた時衛児は覚醒する。
両思いの幼馴染・朱梨
遺伝子検査で最高の結果を出したため、Aランクになってしまう朱梨。AランクになればDランクでは会う事はできない。朱梨を止めようとするが、大人に銃で打たれ阻まれる衛児。
覚醒する能力。
子供だけに発現する能力・リビドーに目覚めた衛児は大人たちに対抗する子供の組織ガレージキッドの一員となり、朱梨を救い出す事、大人社会をひっくり返すことを誓う。一方転校した朱梨はそこで政府に選ばれた遺伝子的に最適な結婚相手と対面する事になる。どうしても衛児のことが忘れられず、相手を受け入れられない朱梨。
子供の組織ガレージキッドは実在した
一方朱梨は理想的な恋人をきめられ、子供を作ることまで推奨される
擦られることも多い作品ですが、梗概だけ読めばそんなに悪くない、ある意味王道の「引き裂かれた恋人」「管理社会との戦い」「異能バトル」の三題噺。大人党やガレージキッドという名称はクソダサかったですが、恋人との描写は尺も割かれており丁寧です。異能バトルは主人公の能力が糸という時点で「ストーンフリー」という前例が強くののしかかってきますが、独自の描写をしようとはしていました。
糸に徹してないところが能力のガバさではあるんですが、違いは出そうとしていた様子。糸で鍵をつくったり、拳を作って飛ばしたり、ガードする防壁を作ったり、
問題なのが、ディストピア描写。単に体罰のある理不尽な昭和の教師だったので、ここは出荷されたり、番号で呼ばれて化け物と戦わされたり、クイズに失敗すると強制労働させられたり、カレーをおかわりしたら毒ガスで死んでしまったり、本の所持が禁止されてたり、憎悪週間があったり、反逆せざるをえない強力なディストピア描写が欲しかったです。正直国民階級と自由恋愛不可以外、作中でも主人公ヒロイン以外はそれほど理不尽を感じていない様子であり、平和の裏側に隠された陰惨な支配や隠された不幸っていう感じでもないんですよね。
ヤンキー漫画にでてきそうな嫌な教師
絶望を感じるほどの社会描写でなく、単に不快なだけという所が…。もう少し掘り下げが欲しかったです
漫画内では低ランクでも満足している描写があり、社会自体の改変をする程の理由がうすいのにも関わらず、Aランク入りを喜んでいた朱梨の両親が何故かあっさりガレキに味方したり、反政府組織の喧伝をあっさり大人が信じたりと、社会を描くには詰めが甘い描写が多かったです。
選挙の支持率83%で低ランク民にも支持される政党を敵組織として、自由恋愛ができないという理由で総理を拉致して国会を選挙するという単なるテロリストをヒーローにする理由付けが何もなく、力があれば子供のわがままで武力行使しても構わないという思想にしか見えないため感情移入しづらいです。
総理大臣を拉致することで政権打倒する目的が青春を取り戻すこと。倫理観も作戦もガバガバ。ちょっとこれでヒーロー面するのは……。
流石にまずいと思ったのか後半急速に方向転換。
能力バトル面で見たとしても能力の発現が3話、使いこなし始めるのが7話、本格的にバトルに入るのが10話といかにも進行が遅く、能力の設定もガバ目です。ヒロインとの恋愛関係は悪くなかったので、其方を主題にディストピアを掘り下げて政府の目を潜るロミオとジュリエット方向の方が向いていたかもしれません。
恋愛関連は丁寧
能力バトルはあまり新鮮味を感じませんでした。
「鉄骨隆隆」─硬質化
「紅い糸」─糸で色々なものをつくり、あやつる
「電信操縦」─コントローラーをつけたものをあやつる
「健康勇良児」─肉体的に強い
とか、音つかいとか、空間に穴をあける転移能力者とか。
朱梨を救い出す為に東京に乗り込んだ衛児は政府軍、更に遺伝子操作しれた人造人間、リビドーを持つ子供とも戦い朱梨を救い出すが、大人達もリビドーを解析し、子供のリビドーを引き出す人体実験を始める。
子供達を救い出しに行く事を決める衛児達。戦いはこれからだ!と言うところで打ち切り。
ワンピ、鬼滅、ハイキューなど人気漫画をよく取りあげているダヴィンチニュースに掲載されていたので、ひそかな人気だったのかも…。
大好評…喪失感が凄い…。どこの世界線なんだ…。