サラブレッドと呼ばないで 2003年
サラブレッドと呼ばないで 全2巻 原作 長谷川尚代 作画 藤野耕平 2003年
父が柔道の銀メダリスト、母が銅メダリストというサラブレッドの大成は両親から柔道をやる事を望まれていたが、幼い頃に金を取れなかった両親に向けられた心ない言葉がトラウマで柔道に関わるのを避けていたが、中学の柔道部顧問と試合をしたことをきっかけに柔道部に入部する。
やらない動機もやる動機も際立ったものがなく、部活をはじめてからも、特に実績もないくせに何故だか調子に乗っている主人公が鼻につきます。チームメイトや経験者の部内ライバルからも当然の批判を浴びて、真面目に部活に取り組むことになりますが、主人公のヘイトを煽る展開で読み口が悪く、更にほとんど素人なのに数日練習しただけで部内トーナメントでレギュラーを決めるというリアリティのない強引すぎる展開が、部活物としても作品の評価を下げます。
結局たまたまあったお兄さんの柔道教室で受け身を習い、内股透かしを覚えて部内トーナメントに臨むことになりますが、中学の道場で中学生が教える柔道教室って何?そんな平日の昼間から社会人が習いに来れる?そもそも、社会人になってから柔道教室通う?それも中学生が教える教室に。と、即座にツッコミが浮かんできます。
展開的に部内以外で柔道を教わる場所が欲しかったのはわかるんですが、ちょっと都合が良すぎる舞台装置だったとおもいます。素直に両親に教わればいいやん…。
技も教わらずに受け身の経験を積んだとはいえ、数日の稽古で臨んだ部内トーナメントで偶然の勝ちを収めた大成は、部内ライバル・小原と対決します。
ど正論のライバル
この勝利も、たとえば両親の試合をずっとみてたから技に入る動きがわかる(父さんの背負いもっと速かった!)とか、子供の頃から練習させられていたとか、口では嫌と言いつつもいつか柔道をやる日に備えて握力を鍛えていたとかの伏線があればまだ納得しやすいのですが、特に理由はないが握力が強い以外の勝利につながる描写がありません。全体的に原作が付いている割に描写が甘いと思います。
最終的に、尊敬する兄が死んだ時のトラウマで「仲間」というものを信じられない小原と闘い一矢報いるものの勝負には負け、お互いに少しまたまたあったところで完結します。
なんというか、柔道という題材も活かせず、キャラも興味をひくものではなかったので当然の結末でした。原作者はストキン準キングだったらしいんですけど、もう少しなんとかならなかったのか、編集からの提言はなかったのか、ちょっと疑問な作品でした。