戦星のバルジ 全2巻 堀越耕平 2012年
孤児のアストロは、自分とそっくりの王子バルジから王家に伝わる武器・王具を渡され王子の仕事をおしつけられる。直後に暗殺されたバルジに変わって王具を発動させたアストロは、無秩序な世界を救うため、世直しの旅に出る。
孤児なのに孤児を集めて生活している貧乏少年アストロ
王家の責任と重さから逃げ出したい王子バルジ
王家の秘宝王具をアストロに渡して逃げようとするバルジ。SF版王子と乞食なんですが、
バルジは直後に死亡。
アストロは王具を発動させ、王子として乱世を生きることになる。
孤児だから家族を大事にして、家族のために怒る、テーマは家族。だからこそ恩人や搦手には弱い。真っ直ぐででもそれゆえにあやうい主人公はヒロアカに繋がる堀越イズムが息づいています。
行動原理が「家族が大事」と言う主人公のキャラメイクは一貫しているんですが、魅力的かと言われるともう一捻り欲しかった。
保身のために嘘をついてもいいのに、家族の絆に嘘で混ざりたくなくて正直に本当のことを言ってしまうアストロ
バトルでも自分の安全より人の家族を優先してしまう。
正直、直情、人がいい、家族を大事。いい人なんですけどキャラクターのフックが弱く、もう少しいかれててもよかったです。読者側に孤児だから家族に対する(異常な)執着があるところを伝えるシーンがないので、普通のいい人っぽい印象になってしまってるのかなと。家族が対象だったのが、王子という立場になって、惑星民全員を守るとおもってるところなんて、普通に考えて対象が拡大されすぎてておかしいんですけど、クローズアップされずに、少年漫画的主人公の思考で流されている感じもします。
この辺り凄く堀越節。これくらいのキャラとしての狂気を序盤から出せればよかったんですが。
世直し旅の途中で、アストロの元恩人にして暗黒エネルギーを操る元星王の臣下。世直しをしようとして闇落ちしたブラックの支配する街を解放することになります。
この辺りの負の側面も、今思えば「らしい」作品です。
一般人を守れずに心が折れかけるアストロ
ブラックの闇落ちした理由なんかが打ち切りのせいか納得いかない部分があったり、明かされた真実の必要性に悩むところはあるんですが、スラムの善人が、王子という立場と力を得て、家族を守るから目にうつる人々を守る事を目標として戦い、当然のように守れない、そこから生じる苦悩という展開は非常に惜しかったと思います。まあ、爽快感の割に話が重いんですよね。
感情移入しやすく、盛り上がるところもあるんですけど、王具が地味だったかなというのと主人公の感情の振り幅を明確に出してほしかったところです。
この辺りの課題を全て克服しながら、開幕からヒーローと学園と仲間という明るい要素で読者を惹きつけたヒロアカは、堀越先生の構成力が段違いに上がっていて見ていて楽しいです。