津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

NERU ー武芸道行ー 2021年

NERU  ー武芸道行ー  比良賀みん也 全3巻 2021年

 

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祖父に憧れ、なにもない村で幼い頃から武芸の鍛錬を続けてきたネルは、一目見たものを己の体で再現する才能を持つ武芸家。祖父と縁のある武芸家の女子高生•拝庭朱琵と出会ったことから現代に生きる武芸家が通う高校、天門武芸十八般高校へと進学する。

 

ちょっと不思議な雰囲気の古流武芸漫画。通常この手の漫画は最強を目指すか、父や復讐相手を倒すことを目的にするんですけど、主人公のモチベーション的にも話の色合い的にも少年漫画らしい最強論よりは、どう生きたいかという生き方の選択をメインに描いています。飄々としているところは陸奥九十九や早坂暁などこの手の漫画には珍しくはないんですけど、最強を証明するとか誰かを倒したいとかではなくて、己が何者なのか知りたいという、修道的なキャラクター造形。

 

1話でネルの生い立ちと才能を掲示して、拝庭朱琵との運命の出会い。芽生える目標。2、3話で高校の紹介とライバル登場。4話から試験編。ネルの性格、才能、規格外な部分などは描けてるんですけど1巻7話かけて入学までの部分で、核となるキャラクターが配置されません。拝庭姉弟は魅力的なんですけど、お互いの関係性が強すぎて、物語の中心には入ってこない。というわけで、飄々とした主人公だけが配置され、話が膨らましにくいまま進行するため求心力に欠ける出来になっています。

アメノフルもそうだったんですが、ここ最近の打ち切り作品て丁寧に作ってあって及第点なんですけど70点をとる秀才っ感じの仕上がりでちょっと熱量に欠けるお行儀のいい序盤が多いです。大体一巻を超えるあたりから本領を発揮して作者の業が見えてくると面白くなってくるんですけど、そこまでついてきてる読者が少なくなってしまっているという…。

その点タイパラ、血盟は良い意味でも悪い意味でも異色作でした。

 

殺陣は結構かっこいい

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仮面のミニスカ女子高生剣術使いお姉さん拝庭姉は魅力的だったんですけど、1話の密着からラブい展開に移行しなかったのはお姉さん好きの津尾さんとしては残念でした。憧れの女師匠ポジションの方が話は転がりやすかったと思いますが、姉弟で立ち位置が固まってたんでそうもいかず、連載用に三強に据えた丈九郎が電子短期連載版より強い位置にいる分すぐ話に絡めにくいという、連載用に話を再構築した歪みが出てしまいました。

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7話から登場のヒロイン・要と絡み出してからは結構楽しめましたが、1巻かけて主人公以外のレギュラーが定着してないのはちょっときつかったです。朱琵は遠い目標、丈九郎はその手前の目標なので、手近な目標となるライバルがおらず、一緒に話を進めてくれるのがキャラが立っていないクラスメイトの脇キャラな2人しかいないんですよね。

この辺りは電子短期連載版の方がスッキリバトルして、丈九郎が当座の届かなくもないが少し格上のライバルポジションにいるので収まりが良かったです。

 

要ちゃんはツンデレ可愛い

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入学試験に合格後、入寮試験で要と仲良くなり合格。授業が始まってからは、同室の先輩と組んで一年主席とナイフナメナーメパイセンとタッグマッチとサクサク進行するんですが、敵がポッと出で感情移入しにくいです。「戦いたいです」で戦う為、悲壮感や危機感に欠ける。そこまで悪いやつでもないのでモチベーションも低い。と、盛り上がりに欠ける展開になってしまいました。試験編で主席と因縁を作っておくとか、類型位的にはなりますが要ちゃんがらみでナイフナメナーメパイセンに絡まれるとか、試合編を盛り上がるブックがほしかったです。月間の少女漫画誌で、色々なキャラを出して複数掘り下げていくのを待てるなら情緒的でいい面が活かせた気もしますが、週間の速度でこれはきつかったです。とはいえ、後書きによるとかなり序盤で打ち切りが決まったため、モチベーション保つのが難しかったとのことで、タッグマッチ編は話を作り込む状態ではなかったようです。

 

最近あんまり見ないナイフナメナーメパイセン

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結局チーム戦後、まとめのお話と5年後にみんなの将来を描いて2話で終了。全18話なので実質2巻分くらい。後書きによると、3〜5話くらい前に告げられると思っていた打ち切りがかなり序盤で決定したということ、18話で5話前なら13話よりかなり前となると、おそらく入寮試験編で打ち切りが決まったということだと思います。

 序盤、7話までがやはりきつかったか…。電子版の方は4話でバトルまでこなして丈九郎がライバルポジションを張ってくれているので、正直こちらの方がジャンプ向きではあったとおもいます。

 

単行本は2巻に4コマ、3巻に電子版4話収録、書き下ろし拝庭姉弟の短編が収録されており、カバー下にボツネームも配置されています。この辺りは作者の愛とサービス精神を感じます。

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興味がある方は是非購入してみてください。