津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

水のともだちカッパーマン  1995年

水のともだちカッパーマン 全3巻 徳弘正也 1995年  

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生き別れの母を探す河童と人間のハーフ河太郎は、霊感少女金剛寺舞と出会い仲を深めつつ、妖怪のトラブル解決を行う。
徳弘先生の下ネタは健在で、人情物からゴミ問題やいじめ問題などの社会問題、西洋妖怪との戦いを経てバトル物に路線変更、最終的には宇宙人と戦います。

 

自分を捨てた母親を10年探し続ける河太郎。

とにかく純朴でお人好しなのに作中では報われるどころか悲しい展開が多く、ひたむきさが泣けてきます。舞ちゃんのことも母親の事も好きなのに報われない。

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妖怪退治を引き受けたばかりに河童化していく河太郎。

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河童化が進み舞との別れを決める河太郎
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やっと見つけた母親は、河太郎に会いたいわけでなく、自分たちの工事の影響で子供にかかった呪いを解かせるために探していただけだった
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河童化した河太郎をみて気絶する母親

悲しすぎる…

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いじめ問題の話や

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ゴミ問題の話も

ターちゃんのペドロとアナベベもサービス出演

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妖怪と人間の恋、良い事をすると良い事が返ってくる河童の特性、母や舞と居るために人間で在りたいのに人助けのため妖力を使うと河童に近づいていく体、仏の姿で戦い妖怪とどちらが正義に見えるか問いかける宇宙人、地球汚す人間たち、その人間たちのために戦う妖怪と、狂四郎2030に通じる重めのテーマをギャグで軽くしながらもしっかり描いていてます。

 

人間を味方にするために仏の姿となる宇宙人
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化け物である宇宙人にさえ疑問を持たれる人間

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かって宇宙人と戦った妖怪たちは、人間の自然破壊によりその姿を消していた


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舞とも結ばれず、母とは再開できたものの家族になれず、地球を救って宇宙に消えていく河太郎が切ないです。

 

自爆で道連れにしようとする宇宙人

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仲間を守るために、宇宙船を自分ごと宇宙に打ち上げる河太郎。最後に猫又だけがついてきてくれるラスト。

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今見ても面白いんですが、ちょっと大人向けすぎた感はあります。この辺りの大人向けテーマ、しんみりしつつも明るい人情物は狂四郎2030もっこり半兵衛に受け継がれていきます。徳弘先生はシェイプアップ乱、ターちゃん、狂四郎とスマッシュヒットを出して、天才と言われることも多いんですけど現在掲載誌がなく、グランドジャンププレミアムで「もっこり半兵衛」が不定期連載のみになっています。徳弘先生レベルでも、と少し悲しくなってしまいますが、もっこり半兵衛はアシスタントなし、奥さんのお手伝いだけで掲載しながらもアンケート1位をとり、評価もめちゃをくちゃ高いです。


途中からコミックも電子のみのようですが、是非Twitterで検索して興味が出たら読んでみてください。 

 

この方のもっこり半兵衛評がとても好き

https://yamakamu.net/hanbei

 

 

 

レベルE 1995年

レベルE 全3巻 冨樫義博 1995年 

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厳密には打ち切り漫画ではないが、3巻完結のため紹介。作者がアシスタントなしで連載したいという希望で月一で連載していたオムニバスSF漫画。皮肉の効いた描写で冨樫エッセンスが抽出されているため人気も高く、アニメ化された。

 

メインで出てくる王子

人気は高い

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典型的な王子の性格のわかる回

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シリアスな宇宙人SFネタ
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もう一つの軸となるエピソード

カラーレンジャー編

理屈っぽい口喧嘩が冨樫イズム
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コメディテイストもあり
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交配した種族を滅亡させるマクバク族の話
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この辺の皮肉は冨樫先生らしいですね
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元々幽遊白書のツーショットとか、蔵馬対鴉など、時々アシなしで描いていた冨樫先生ですが、ことに画力に関してはこだわりがあるため、1人で描きたかったようです。萩原一至先生の生原稿を見て絶対叶わないと思ったが、漫画家として自分1人の絵でどこまで表現できるかチャレンジしたい旨をどこかで書いていました。

 

内容的にも作者自身がわりと好きに描けたとコメントしており、SF、サスペンス、コメディ、野球など毎度趣向を変えて描いています。

 

コメディミステリ

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チンピラなキャラ造形なども珍しい。

好きにできて楽しそうです。

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ホラー展開時は楳図かずおテイストの作画と効果音など遊びもあり

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クラフトの画像はネタ画像としても頻用されており、読んでない人でもみたことはあるかも。

ちょっと前には2人で旅行とセックスはイコールでは無いという話が話題になっていました。

 

Twitterでよく見るクラフト

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ちょっと前に話題になった。2人旅行は性交とイコールではないというエピソード
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ジャンプでホームランを1本打てる事自体レアですが、2本ホームランを打てたら天才と言われており、3ホームランはいなかったのですが、レベルEの人気とアニメ化を考えれば、冨樫義博先生が数少ない3ホーマーと言ってもいいと思います。幽遊白書ハンターハンターレベルEと、いずれも違うジャンルで高い評価を得ているのは凄いです。

他の3ホーマーはラッキーマンデスノートバクマン大場つぐみ先生と、ヒカルの碁デスノートバクマン小畑健先生くらい。

惜しいところで桂正和先生が、ウイングマン電影少女、I'sでアニメ化、映画化、ドラマ化で3ホーマーとしてもいいかもしれない業績。

車田正美先生が、リングにかけろ聖闘士星矢風魔の小次郎で大ヒット2作と一応ドラマ化の中ヒット。平松伸二先生が、ドーベルマン刑事ブラックエンジェルズ、リッキー台風と大ヒット、スリーベース、ツーベースくらいのヒット。

 

鳥山明先生が、ドラゴンボール後に本気で連載していたら文句なしの3ホーマーを達成していたかもしれませんが、現在この記録を達成できそうなのは、原作の稲垣理一郎先生がアイシールド、Dr.ストーン。ネウロ、暗殺の松井優征先生。トリコ、たけしの島袋光年先生。ブラックキャット、TOLOVEる矢吹健太朗先生。奇しくも4人とも連載中で稲垣先生以外は3作目のヒットにトライ中。ビルドキングが今週で終わり、島袋先生は残念ながら一旦お休みですが、矢吹先生と松井先生はまだチャンスがあるので今後も期待してみていきたいと思います。

 

少し話がそれましたが、冨樫先生は文句なしに天才だと思います!

惑星をつぐ者  1995年

惑星をつぐ者 全1巻 戸田尚伸 1995年

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J・P・ホーガン 星を継ぐものを存分に意識したタイトルの本格SF漫画。派手さはないが、評価は高かった。虚弱な人類は殆どが宇宙人の奴隷として生きるしかない世界、バラダットナイブスは人類種が生き残る希望を探す。

 

スペースオペラ好きな作者が、衰退したスペースオペラに90年のテイストを盛り込み再生を試みた人類種の進化についての物語。

 

ナイブスの自身がタフガイで、メインウェポン、スパイラル・ナイフのビジュアルもかっこよく、宇宙規模の賞金首として宇宙を旅しながら、人類の進化の可能性を探るというSFの王道を裏のテーマに、自分に愛するものと惑星全員の人類種を殺させたJに対する復讐譚を、人類より強靭な他の惑星人との関わりを交えて描いていきます。

少し絵面の地味さはあったにせよ、もう少し長い目でみたかった作品。

 

スパイラルナイフ カッコいい!

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人類種以外の強種族はスペオペの華の一つ

サイボーグも定番

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ナイブスを陥れたマッドサイエンティストJ

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全てはSF普遍のテーマの一つ人類の進化の可能性へとつながる

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スペオペは、ジャンプだとコブラが代表的ですが、その他は酒呑ドージくらいであまり思いつくものがありません。また、スペオペと聞いて思い当たるスターウォーズスタートレックあたりのブームが落ち着いて、日本でもヤマトやハーロッククラッシャージョウや銀英伝が80年代に終わり90年代には少しジャンルが寂しくなってきた頃です。

この後星界の紋章無責任艦長タイラーカウボーイビバップなどが公開されてスペオペは廃れそうで廃れないジャンルとして生き延びるんですが…。最近スペオペあったかなあ…。

モートゥルコマンドーGUY 1995年

モートゥルコマンドーGUY 全2巻 坂本眞一 1995年 

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謎の麻薬組織に囚われた恩人の女性ルシアを救う為米国特殊部隊に入隊したガイは、戦闘マシンとして己を鍛え上げ、必殺の戦闘術、モートゥルコマンドーを身につけた。愛する人との約束を守るためガイは戦う。

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愛する人を麻薬組織に置いてきてしまい。

取り戻すために己を戦闘マシンとして鍛え上げた!のはいいんだけどなんで裸にベストなんだろう…。

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開始から特殊部隊最強の男として描かれており、因縁は過去の回想で語られます。展開もスピーディだったのですが、モートゥルコマンドーの見せ方が弱く、味方キャラの解説ではちょっと最強戦闘術の説得力に欠けること、特殊部隊の上役のキャラ、敵側の魅力が薄かったです。

 

ギャグでやってるのかと思うほどの説明台詞。

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「太陽を背にして地の利を取るとは…」 

「木の根を利用し、足場を!」くらいでいいと思います。

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上官即落ち3コマ いや、特殊部隊の上官がこれはいかんでしょ
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ちなみに、スケットダンスの「ありそうな少年漫画のタイトルしりとり」の回で、リーサルクラッシャーガイという架空の漫画が出ましたが、バンダナにベスト、ガイなどこの漫画が元ネタと思われます。

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他にこの系統の漫画タイトルあったかしら

造語+名前という流れだと

ブラックプロファイター タケル
トータルファイターK
サムライディーパー京
スーパードクターK

一般名詞+名前だと

キックボクサーマモル
フードファイターたべる
サイコメトラーエイジ
ファッションリーダー今井正太郎
マイペース風太
べアーマーダー流介

結構あるな

 

作者は今作の後ヤングジャンプに移籍して、益荒王、孤高の人イノサンと順調にヒットを飛ばします。

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後々の作品とキャラの性格を考えると青年誌向けだった感は否めないです。

SHADOWLADY 1995年

SHADOWLADY 全3巻 桂正和 1995年 

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マジックシャドウによりシャドウレディに変身したアイミは女怪盗として盗みを行いストレスを解消していたが、発明好きの刑事ブライトに一目惚れ。ブライトはシャドウレディが好きで更生させるために捕まえようとしている。本来内気なアイミは自分がシャドウレディである事を言うわけにもいかず、怪盗を引退しようと考えるのだがそこにシャドウレディーと張り合うスパークガールがあらわれ、更に地球を壊す破壊魔人が復活するのを止めることとなりシャドウレディを続けることに。

 

アイミはシャイな女の子だが

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マジックシャドウでシャドウレディーに変身して怪盗をおこなっている

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発明好きな刑事ブライトに助けられて一目惚れ

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しかしブライトはシャドウレディに恋をしていた。両思いだが真実を明かせないアイミ

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前半の職業・怪盗で怪盗仕事はお約束で成功するような軽いノリに刑事と怪盗の恋愛を絡めたのが本来やりたかった路線なのかもしれませんが、怪盗部分がTVスペシャルのルパン3世並みに緊張感がなく、恋愛部分は進行が遅く、どっちつかずな感は否めませんでした。桂先生ビジュアル面が先行して描きたいものを描く傾向があるので、「変身する女怪盗のかっこよさを描きたい」が先行してストーリーを練りきれてなかった可能性はあります。

 

相変わらず凄い説得力のお尻

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スタイリッシュ女怪盗を描きたかっただけという可能性も否定できません。

 

ブライトの妹分はスパークガールとしてシャドウレディーに対抗

桂先生には珍し目の妹キャラデザ。可愛い。

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スパークガールに変身

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テコ入れなのか、2巻半ばから、シャドウレディーに変身するためのアイテムと、マスコットキャラが魔の国の物で、マスコットキャラを助けるために、魔界から盗まれた魔石を盗み出し魔人復活を阻止する方向に話が変わりましたが、殺人犯の汚名をきせられたりと前半とのギャップがすごかったです。

 

突然出てくる魔界警察

変わる方向性

魔人とのバトルに突入

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ボンバーガールの所でも触れましたが、シングル女性主人公の成功は少なく、シャドウレディは、そもそもの怪盗をしている動機がストレス解消という感情移入しにくい理由なので、最初から破壊魔人か一目惚れを軸に話を回してたほうが良かった気がします。

竜童のシグ 1995年

竜童のシグ 全2巻 野口賢 1995年

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伝説の忍、竜童九戦鬼に学んだシグは、兄弟子豪鬼を探すため、月島領を訪れる。そこは百鬼丸という忍により支配された無法の地であった。
抜骨術や戦鬼は良かったと思うんですけど序盤に尺を取りすぎた感あり。

 

シグは少年ながら抜骨術を操る腕利き。

月島領の悪党を倒すロードムービー展開がしばらく続きますが、早めに9戦鬼か百鬼丸を出して、巨大な敵を示しておくべきでした。

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無法の地、月島領で悪を倒したり、因縁の相手と戦ったり、このパートが厳しかっただす。

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百鬼丸豪鬼を殺したと聞いたシグは城に向かう。そこには竜童9戦鬼がいた。

 

 

しかし、9戦鬼でまともに登場したのは音速の慈恩のみ。

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四天王とか八部衆は早めに出せと…。

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登場した次の回で全てをシグに託して死んでいる9戦鬼。ええー。

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9人の戦鬼で想像する通り、竜童九戦鬼は壱番神通術、二番神行術、三番五感術、四番暗器術、五番虎倒術、六番炎の禅鬼、七番円鏡術、八番水雷術、九番抜骨法と九番以外吹き荒ぶ風がよく似合う感じの技を持っているんですが、ほとんど作中で見ることはできませんでした。

 

ラストに怒涛のように明かされる展開。

これぞ打ち切り漫画。

織田信長は竜童9戦鬼の一員だったが野心を抱いたため、師に記憶を消された。

記憶を取り戻した織田信長108式をつかえる魔王となったが、9戦鬼同士の戦いは魔を呼ぶため禁じられていた。

9戦鬼でないが108式を使えるシグに力を託して、戦国の魔王を倒すことが目的だった。

 

なんというか構成を間違えた感。1話完結の世直し旅をやらながらキャラを立てるつもりだったんでしょうけど、主人公1人パートが長くなり話が広がらず、後半に展開される設定を出し切らずに終わってしまいました…。

 

 

猛き流星  1995年

猛き流星 全3巻 原哲夫 1995年

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原哲夫男一匹ガキ大将男坂とほぼ同じ理由ではじまり、男坂と同じ経緯で打ち切られますが、男坂と比較してもバトルより漢の器勝負に重きが置かれているため、絵面がひどく地味です。

 

男一匹ガキ大将のリメイクを作りたかったことは述懐しています。

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冒頭からガキ大将についてのモノローグ

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構造的に失敗してしまったのは、ガキ大将が喧嘩でガキどものリーダーとなりながら男の器をみせる→次第に権力者の無視できない存在になっていくというのを現代劇でやるには流石に時代錯誤。そうなると、裏社会にしろ表社会にしろのし上がるのは経済面の話が不可欠。しかし、経済面でののし上がりをストレートにやると高校生(フリーター)起業物語になってしまう。という点にあると思います。男坂の方は、経済面の話はまるっと無視して男の器と喧嘩勝負に終始していますし(キボウがその役を担うかもしれないですが多分ない)、男一匹ガキ大将は金持ちの婆さんから資産を受け継ぐ形でこれを解消しています。男一匹ガキ大将の手法も、何のバックボーンも業界のことも知らない相手に会社をまかせるのは流石に無理があるので、兄弟分に天才デイトレーダーとか若手起業家をすえるくらいが落とし所な気がします。

他作だと「番長連合」が、資金と組織力のバランスをとる進行をしていましたが、根本的にガキ大将の魅力と経済策というものの両立が難しかったと思います。香港編に入ってからはこれを解消しようとしていましたが、気付くのが少し遅く、香港のライバルとタイマンを張っている途中で終了しました。

 

争いの決着は主に漢の器勝負で決まる

ガソリンをまいて火をつけたジッポをもって殴り合い

銃を突きつけられて撃てといえる器

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しかし、ヤンキーのメンタリティは花の慶次の傾き者と同じである

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自分よりデカい漢を知り、衝撃をうけ、そこを目指す流星

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漢勝負は別として度々タイマンがおこなわれますが、元々北斗の拳、サイバーブルー、花の慶次と超絶バトルを描いていた原先生なので、今更街のチンピラの喧嘩を描かれてしまうと、ティラノサウルスを倒す男や宮本武蔵と戦ってたのに今更関脇と試合!?みたいな違和感が半端ないです。

 

バトル漫画はリアルより総合格闘技系漫画か、能力バトル、気合と根性の意思力バトルなどのジャンルを変えない限り、同工異曲になりやすく、新鮮味がなくなるため、連作はかなり難しい面があります。にわのまこと先生のプロレス→古武術はかなり上手く切り替えた方で、男塾→禡羅門や星矢→翔などはバトル面での描写に飽きが来た面も強いです。

成功面では幽遊白書ハンターハンター、バトルより傾き者を描く方に重点を置いた北斗→花の慶次、同じくメインの目先を変えた修羅の門海皇紀、近未来から時代劇に時代を移した覚悟のススメシグルイなどはバトル漫画後のバトル漫画ですが、違う読み口に仕上げています。 

 

最後のライバル香港の客家のグループ2代目のゴウフェイ。すごいバトル物風の登場。

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戦いの途中で打ち切り

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そういう意味ではバトル描写が前作よりスケールダウンしたようでアピール度は低かったです。

終わり方も、中途半端にまとめるよりは続きがまだあるように終わろうという作者の意向で突然終わります。