津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

神奈川磯南風天組 2003年

神奈川磯南風天組 全2巻 かずはじめ
2003年 

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風天組と呼ばれるコンビに憧れる健人は、磯南中に転校して風天組の舎弟になる。3人はバカをやりながらも、トラブルを解決して絆を深めていく。
不良2人のバディ物バツ&テリー、今日から俺は、BOY、湘南純愛組、ウダウダやってるヒマはねェ!、番長連合などヤンキー漫画の長い歴史でも結構古くからある王道パターンです。この手のヤンキー物には珍しく中学生コンビ。

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盗撮、のぞき、無免許運転、ノーヘル、2ケツ、無茶振り、セクハラとダメな面は存分にクローズアップされてるんですが、「普段はダメ人間だけどやるときはやる」展開にするにはやる時が弱く、梅澤先生程敵が邪悪なわけで無く、今日から俺は程仲間のために怒るわけでなく、番長連合程男気を見せるわけでなく、湘南純愛組ほどヤンキーのかっこよさを見せるわけでなく、マイナス面の割にプラス面がクローズアップされないという中途半端な点が痛かったです。

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一応、真面目な面も少し描かれているんですが全然マイナス面がリカバリーできてないんですよね…。

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これは、中学生なので、まずヤンキー漫画の華であるバイクの話ができないこと、高校生ほど大人ではない為絡まれ方や喧嘩もマイルドになり迫力が不足したことなども原因ですが、喧嘩の原因や規模がどうしても矮小化されてしまい、緊張感に欠けました。そのため、普段のダメさとトラブル解決の時のかっこよさの落差でみせるはずが、トラブル自体がしょぼい為に落差がつかずにダメな部分を打ち消す事ができなかったのが原因です。

 

結果、感情移入できない主人公コンビの無茶苦茶を、舎弟の健人が無理矢理持ち上げるような描写が続きます。また、女にモテようと努力する→不良に絡まれて喧嘩→「やっぱり風天組は最高っす!」のパターンが多い割に、似たエピソード内で風天組のキャラを掘り下げる事をしない為、体育会系一家で短絡な天堂寺とバンド好きでどちらかというと知性派の風間のふたりのキャラがあまり立ちませんでした。喧嘩の強さの違いとか、頭脳派の描写を入れるとか、バディのキャラをどこかではっきり分けておきたかったです。歴代バディ物であげた漫画全部明確にバディの性格違うからな!こいつら逆のポジションに置いても話の進行にほぼ差し支えねえんだよ!

 

ちょっとこれで共感が得られると考えていたのか疑問なんですが、中学生のこの辺のダメさは可愛いというような感覚なのか、エロくて喧嘩してんのがみんなが憧れるチュー坊像なんだろって考えたのか作者の考えが読めません。

まあ当然の如く失敗しました。

 

闇神コウ、キックスメガミックスに続き、読み手に不快感を与えるという意味で防御力の低い失敗作が続きます。

 

ちなみに津尾さんが好きなヤンキー漫画はバディ物で敵役のキャラが立ってるウダウダやってるひまはねえ!です。

中学生が総番の命令で全国の要注意高校にスパイとして潜り込む草番システムが採用されているlet'sダチ公も心に残っていますが、地方のヤンキー高校に入学して特に問題がなければそのまま一般生徒として卒業するという人生を決定する地獄のような選択を中学生におしつける番長の権力基盤とカリスマ性が記憶にのこる作品です。同じチャンピオンのドッ硬連も、学校の下にデスゲーム用遊園地のようなものを作った番長が登場して、反抗勢力をジェットコースターに乗せて落としたり、通路から針のついた鉄球が押し寄せて圧殺したりとやりたい放題でしたが昔のヤンキー漫画の番長は荒唐無稽な権力を持っていて無茶苦茶やっていましたね…。ドッ硬連、let'sダチ公共に今ならスキマで全話無料です。興味のある方はどうぞ。