ヨアケモノ 全2巻 芝田優作 2014年
2人の罪人の少年は、侍狩りをして腕を磨き、名をあげようとしていた。兄貴分の銀は、新撰組に入ることで成り上がろうとするが、長州の手にかかり死亡。残された刃朗は、銀の意思を継いで新撰組に入隊する。
底辺から成り上がる唯一の方法 新撰組
銀は夢半ばして命を落とす
バディの兄貴分が開幕で亡くなり意思を継ぐと言う形態は、SANTAやガンブレイズウエストでも行われたある意味王道のスタートであり、短くても二人の絆を描く事で意思をつぐモチベーションを表すことができます。ここに、物語の軸となる新撰組と獣の刃、主人公の資質を描くことで、主人公の性格、資質、モチベーション、これからの目的、目標となる場所の高さを示した完成度の高い1話となっております。
内容としても獣の能力×新撰組という刺さりそうなジャンルだったんですが、刃郎の新撰組への入隊試験での沖田との対決、最初の実践での吉田稔麿との対決、生涯の友市村鉄之助との出会い。人斬り以蔵との対決。ラスボス坂本龍馬との決戦で連載は終了します。
獣の能力を持つ新撰組
主人公の境遇とか、相方への思い入れとかの描き方はエモかったんですが、新撰組をメインにするなら幹部メンバーを早めに出すべきだったかなと思います。市村鉄之助はちょっと弱いかな…。
40年前は新撰組といえば近藤、土方、沖田だったんですけど、現代では斎藤、原田、永倉、藤堂、山崎、島田、時代によっては芹沢、山南、伊東あたりまで求められる上に人気も相応に高いため、新撰組が題材の時点で初期に幹部メンバーの顔見せは必要だったと思います。
勢揃いするんですけどちょっと登場が遅めでした。
ちなみに各隊士の能力は、近藤の金獅子、土方が狼、沖田が猫、永倉が虎、斎藤が鷹、藤堂が兎、原田が猩猩、山崎が面梟、島田が馬、市村が雪豹となっておりましたが、土方、沖田、市村以外の能力はほぼ明かされませんでした。
また、初期から登場する沖田の強さが隊で1、2を争うはずのなのに圧倒的でなかったのもインパクトに欠けました。
鉄之助とのタッグで以蔵に挑み、昔のバディを思い出して、「どっちかが死ぬのは、もう無しだ!!」とか、獣として扱われた自分の過去と以蔵の過去を対比させるとか構成はうまいと思うんですけど、話が実直すぎて外連味にかけるところなんかがZIPMANにも通じる作者の弱点かなと。
色違いの獣刃は化け物じみた力を持ち、かつて芹沢鴨が使用していたことが匂わされます。赤の獣刃を探せというところから、終盤は打ち切りが決まったのか、幹部勢揃いして池田屋突入。からの五重塔。
赤穂浪士の子孫対沖田総司&藤堂平助、三大人斬り中村半次郎対斎藤一、三大人斬り河上彦斎対永倉新八、脱出した吉田稔麿対原田左之助、桂小五郎対鉄之助、坂本龍馬対決土方歳三&刃朗と夢のカードを示しつつ対決シーンはカット。
俺たちの戦いはこれからだエンド。
どちらかと言うとこの味方幹部対幕末レジェンドバトルを見たかった気がします。序盤にこれをやって幹部のキャラをある程度たてていたら…。
もう一つ、バトル物としては割と致命的だったと思うんですが、戦闘スタイルの幅が少ないです。獣の力で気配を消す、無尽蔵の体力、ピット機関で死角がないなどはいいんですが、戦闘したキャラの半分がスピード特化型なんですよね…。スピードも、身体能力でのスピード、動作の最適化、気配を読む、未来予知などバリエーションを変えてくれればよかったんですが…。
神速の突き技!
最上級の速さ!狼の能力
強靭な脚力の踏み込みのうむ速さ!
腕のしなりを活かした切先の速さは音速を超える!
で、どれが速いんでしょうか?
折角の獣の能力が活かしきれてない感が凄いです。