津尾尋華のジャンプ打ち切り漫画紹介

週刊少年ジャンプの三巻完結以内の打ち切り漫画の紹介。時々他誌や奇漫画の紹介も。

バディストライク  2015年

バディストライク 全1巻 KAITO 2015年

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2021年8月現在でジャンプ最後の1巻打ち切り漫画。中学生にして140kmの剛球を投げるがノーコンの荒狼亮は、投手の命をすう死神と呼ばれる捕手安導要と出会い最強のバッテリーを目指す。最終回1話前まで試合をしない野球漫画。

 

内要はタイトルの通り、野球物の皮かぶったバディ物。バッテリーが夫婦と比喩される特性上似たような傾向は他の野球漫画にもあるのですが、1話から通して試合なしにバディの仲についてをメインに掘り進むのは珍しく守備関連はともかくバッターに関してさえほぼ言及がないという、野球漫画を期待する読者のストライクゾーンを華麗にかわす暴投なってしまいました。

 

開幕から素質あるが難点の多いピッチャーとそれを支えるキャッチャーの構図はいいんですけど、まさか、ずっとこれをやるとは…。

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ドカベンを皮切りにダイヤのAおお振りなど野球漫画のみならず、オフサイドの薬丸慎吾のストライカーとパッサー、ダンドーや明日天気になあれのゴルファーとキャディーなどスポーツ漫画の1側面としてクローズアップするならキャラの掘り下げができて良作になるのですが、野球なしにバディの掘り下げは悪手としか。

 

殺す気で投げる投手を求める狂気のキャッチャー。結ばれる絆をやりたかったのはわかります。

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入部するまでに5話、入部テスト代わりの先輩との勝負に2話、キャッチャーのバディへの思い入れの根元に3話。そして最終回と。野球を全くやりません。この手のスポーツを主題とせず人間ドラマをメインに扱うのは少女漫画に多くみられる構成ですが、ジャンプでは受けにくかったです。そりゃね…。

 

魂を求める死神キャッチャーという設定からまず入り込めないんですけど。

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一応この部分に関しては、死神の噂の元、狂気的なバディにこだわる要の根源が、過去話として明かされますが、そんな噂が広がるものか?という疑問と、トラウマがあるのは分かったとして、こう人格形成されるかという納得できなさがありました。

 

仲の良かったピッチャーが自分のために死んでしまったという過去のトラウマ

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生きる糧となった出会い。憂太にいちゃんは、亮のなげる球の中にいた……。だから、亮に認められるキャッチャーになるのが目標になった。

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ドラマ面でも死者に取り憑かれた要に、主将からのに「捕手とは何だ」という物語の根幹に関わる質問が放たれ、試合を通して要の解放という物語の核心に迫る話をするのですが、朧げに解放される要というシーンで終わり、10話かけて紡いできた物語のカタルシスとしては物足りない結末でした。

 

最終話では成長して甲子園に出場した面々と、神奈川四獣が紹介されますが、突然能力スポーツ漫画テイストを出し始めます。何かしら爪痕を残したかっんだろうと推測されていますが、これやるなら最初からやっとけば…。いやでも明らかに作風に合ってないです。ミスフルではなくクロスマネジだから。

 

最終回で風向きの変わる作風。ダイジェスト敵キャラ。

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巻末8ページかけて書き下ろして四獣とのダイジェストを載せているんで、作者もちょっとやってみたかった分野だったのかも。

 

サービスで描いたおまけなんですけど、こっちの方が本編より面白そうなのがなんとも…。

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しかし持ち味は繊細な心情をドラマにする方向で、次作は『少年ジャンプ+』での「青のフラッグ」で第3回次にくるマンガ大賞Webマンガ部門に3位に入るという健闘を見せます。