スポーティングソルト 2014年
スポーティングソルト 全3巻 久保田ゆうと 2014年
スポーツ医学の知識を買われ、86ある部活の全てを日本一にするためにスポーツ名門校にスカウトされた塩谷が校内のスポーツマンの体と心のケアを行うスポーツ医学漫画。通称塩。斬と並ぶ打ち切り漫画四天王の一角。
ジャンプのアンケシステムと準備回が必要な推理と医療漫画は致命的に相性が悪く、成功例がほとんどありません。その分成功すればバスケのスラムダンクやゴルフのライジングインパクトのようなパイオニアにはなれるのですが、少年を主人公とする為スポーツ医学という分野に限定した分内容を狭めてシリアスさを削ぐ一因になってしまいました。
更にスポーツ医学の知識で一瞬にして選手の欠点を見抜き修正、成績アップ!という展開ですごいドクターキャラにしようと思ったニュアンスは伝わるのですが、どう考えても無理がある施術。まあ普通のスポーツ医学で本来やることは弱いところの補強とか効率のいいトレーニングとか怪我したところに負担をかけない方法とかなので、オペの腕が凄いとか早いとかで見せ所をつくれる外科手術物と比べて見せ場を作りにくかったのはわかります。後半はネタぎれたのか半分カウンセラーで、気持ちの問題の解決になってしまったのも漫画の軸がブレる原因でした。
一瞬叩いただけで筋肉をほぐし、実力発揮させる。そうはならんやろ…。
後半はカウンセリングというか人情物に
漫画の特徴として、凄い素質をもった選手の力を見抜いた塩谷がそれを活かして活躍させ、「実は彼はこういう資質をもった、このスポーツに適性のある選手。いわば、〇〇だ!」というパターンを多用するのですが、資質とスポーツへの適性が言及されずに、さらに造語で説明するので何が言いたいのかめちゃくちゃわかりにくいです。
例を出すと、
「彼は俯瞰してフィールド内を見渡せる能力を持ち、それによって未来を予測して選手を動かすことができる選手。いわばファンタジスタだ!」というパターンをやりたいのですが、
作中ではほとんど説明がなく
海の力を宿した強靭な骨の力
「彼はブループレイヤーだ!」
一流のサッカー選手は常に相手の配置を意識して動きやフェイントを読む
「フィードバッカー、全ての未来を読む男」
などと表現されます。わかりやすく一言で表せられる『凄い感』を出したいのはわかるのですが、
その為に造語が出てくるので、造語の意味考えねばならないという矛盾。
わかりやすくないよ…。
素直に言葉で解説すれば良いじゃない…。他はともかくブループレイヤーがなにかは最後までわかりませんでした。求解説!
また、患者から信頼を得なければならない医学漫画の割に主人公も脇キャラもヘイトを集めやすいキャラ造形にしており、変なやつが実は凄い!をやりたいのは分かるんですけど、凄いけどこんなやつに相談したくねえとか、関わりたくねえ感の方が強くなってしまいました。
どんなキャラを目指していたのかわからない
全体になんかこう練り込み不足というか、迷走してる印象がこの漫画の読み口に影響しています。
後半では、立選というわかりやすい学内ランカー制を出したのですが、そもそも地区大会ベスト4の補欠ギリギリの野球部員と地区大会ベスト8のサッカー部のレギュラーとか比べてランキングつけれるの?という疑問を置き去りにして、身体能力でランキングを作ったバトル漫画への布石のようでしたが、サッカーうまくても喧嘩が強いわけじゃないからね?ランキング関係あるかしら?帰宅部入れる意味ある?これ?
剣道部主将が学生を闇討ちしてるあたりの問題には全然触れなかったり、スポーツ名門校の全部活全国出場を目的として開始した割に弱小部活が多い、スポーツ医学なのにやってる事はカウンセラー、部活物なのに学内喧嘩バトルなど、設定や進行の軸がブレブレだったのが四天王と呼ばれる原因です。スポーツ医学か、人情物か、超人部活ものか、バトル物か、いったい何が描きたかったんだよ!
全体的に治安が悪い
スポーツの名門の割にメジャースポーツの扱いが悪い。テニス、ラグビー、サッカーでこの扱い
テニス
サッカー
そんな名門ある?
という事でブレた描写と、謎のスポーツ医学が擦られることになり、不動の打ち切り漫画四天王となったスポーティングソルトでした。