ユート 2005年
北海道でスピードスケートの選手として期待されていたユートは、東京に引越しをしてリンクの少なさや競技人口、ロングとショートの競技の違い、金銭コストに戸惑いながらもスケートへの情熱を捨てずに試行錯誤しながら競技を続けていく。
作者自身が理想の子供として描いたというひたむきに成長するユート達に対して、父親は極めて現実的な描写をされており、「金がかかる趣味」であるスケートに熱心なユートにいい感情を持っておらず、子供相手だからと適当な対応をしており、最終的には息子を応援するのではなく非難してしまいます。まあ、リアルといえばリアル。
北海道時代から、お互いをライバルと目しながら決着がつかない高月とユートのライバル関係を軸に、東京のリンクでの友とライバルとの切磋琢磨、大人の思惑の外での成長など丁寧に描いててかなり好感が持てます。
反面、子供らしい諍いや自慢、人見知りなどが読み口を下げているのですが、これもほとんどがフォローが入るのでもう少し時間があれば良作になったんではないかと思うんですけど……。
困難を明確化するために大人、特に父親が優しくないというのが読み口を下げてしまいました。(母親は他界)現実的な困難を、子供ながらにユートが独力で、悪気なく乗り越えていく描写をしたかったと思うのですが、そこにたどり着く前に終わってしまったのが残念です。
描き下ろしで垣間見るの事はできるのですが、少年誌で少年視点での親が応援をしてくれないむしろ邪魔をしようとするというのは……。青年誌ならその辺りの事情をリアルに描いても共感が持てたかもしれないですが、少年誌では読後感の悪さにつながりました。地域と競技、ライバル不在というハンデで東京で頑張るなら親の応援まで逆風にしなくても良かったかなという気はします。
書き下ろしの後日談を見ても長期的に丁寧に描こうとしたのはわかるんですが、
とにかく父親がヘイトをかいます